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10 バリ島

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日本占領下インドネシアにおける慰安婦―オランダ公文書館調査報告―

山本まゆみ、ウィリアム・ブラッドリー・ホートン





10 バリ島


 外務省公文書館には、バリ島での女性周旋に関する資料がいくつかあった66)。1942年及び1946年に複数のバリ人男性がオランダ語で書いた記録によると、日本占領期が始まった頃、日本人兵士の、女性に対する嫌がらせが横行していた。女性を集めて慰安所へ送るというような噂が流布し、連れて行かれることを免れるため、偽装結婚が盛んに行われるようになった。正式に日本当局から命令され、バリ人の官吏が地元の有力者に依頼し、おこなわれた女性の調達は、慰安所用の女性と日本人将校の愛人用も含まれていた。公文書から、この募集の結果は窺い知れない67)。この2点の資料は、同人物によって異なる時期、つまり異なる歴史環境のなか、異なる政治的圧力のなかで書かれたものである。このような、時代背景が異なっている2点の資料だが、大きな違いが見られないため情報としての信頼性は高いと思われる。他の1点の資料は、女性の犠牲者数人も含め異なる生活背景のバリ人の証言を抜粋した記述だった。日本人の猥褻行為のため女性の調達に関わった中心人物として、日本人憲兵隊の指図にしたがっていたバリ人男性と2人の中国人男性を指摘している。これは、慰安所のための徴募ではないようだが、連れ去られた期間は3日から10日であった。女性たちはその後、自宅に戻されている。女性たちは全員がバリ人だった68)。


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