防衛庁防衛研究所蔵《衛生・医事関係資料》の調査概要
Ⅰ はじめに
本稿は、防衛庁防衛研究所図書館を対象として、1997年度に行った調査の概要である。主な調査対象資料は、故金原節三氏の日誌および関係資料、故大塚文郎氏の日誌である。金原節三氏(軍医大佐)は陸軍省医務局医事課員(1937年8月着任)から、41年11月に医事課長となり、43年9月までその地位にあった。また大塚氏は、金原氏の後任課長として45年まで医務局に勤務していた。陸軍省医務局(衛生課と医事課)は陸軍全般の医事、医療、衛生、病院業務を統括しており、とくにアジア太平洋戦争期において医事課員あるいは医事課長という立場にあった両氏が幸いにも日誌等を遺されていたことは、陸軍の医事・衛生という観点から慰安婦問題の一端を明らかにすることが期待された。
これらの資料のうち大塚氏の日誌(「備忘録」)はなお判読中であり、最終的な調査結果とは言えないが、併せて、第11軍(漢口)第14兵站病院等に勤務された故麻生徹男氏(軍医大佐)の刊行資料も検討し、若干の所見を述べることにしたい。
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