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福島・被ばく調査/県民に背く委員会運営だ 河北新報2012年10月13日土曜日

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福島・被ばく調査/県民に背く委員会運営だ 河北新報2012年10月13日土曜日 社説


 福島第1原発事故による被ばくの調査に関わっている福島県の検討委員会で、極めて不適切な運営が行われていたことが明らかになった。

 委員会の議論を誘導するような「議事進行表」を事前に送付していたほか、議事録も残しておらず、公開請求された後に作成していた。

 単なる事務的なミスとは言えない事態だ。セシウムなどの放射性物質の影響に対し、多くの県民が重大な関心を抱いている。調査の方法や評価を議論する委員会の場でずさんな議事が繰り返されていたのでは、県民の信頼を損ねるだけだ。

 放射線が健康に与える影響を厳密に評価したとしても県民から信用されず、かえって疑念を深めることになりかねない。

 原発事故によって福島県内などに膨大な量の放射性物質がばらまかれ、多くの人が被ばくする結果になった。そのため県は昨年、全県民を対象にした被ばく調査を決め、その助言機関として「県民健康管理調査検討委員会」を発足させた。

 10人の委員と9人のオブザーバーがおり、放射線や医学の専門家の立場からアドバイスすることが期待されている。

 調査の実施と評価機関の設置は前向きな取り組みだが、いいかげんな運営をしたのでは元も子もない。

 昨年7月の第3回委員会の前には、事務局の県の担当者が委員全員に議事進行表を送付していた。その中には「下記の範囲内での議論を」という表現があったという。

 一体、何を意図したのか。あらかじめシナリオを用意し、それに沿った議論をしてほしいと誘導しているのではないか。委員会はこれまで8回開かれ、そのうちの6回で事前に議事進行表が送付されていた。

 こんなありさまでは、被ばく調査も委員会の議論も形骸化していくだろう。真剣に被ばくの問題と向き合う気があるのか、疑われても仕方がない。

 委員会の議事録を作成していなかったことも、信じ難い怠慢だ。県民の健康に関わる大事な委員会なのに、最初の3回は録音もしていないというからあきれ返る。

 福島県は議事進行表について「意見調整を疑われる行為だった」と取りやめる考えを示しているが、この機会に被ばくの影響調査に臨む基本的な姿勢を再確認すべきだ。

 県の果たすべき役割は、可能な限り妥当性のある科学的な調査と評価を行った上で、何も隠さずありのままを公表することだ。

 被ばくの影響の評価に当たっては、委員に限らず広く専門家の意見を求めた方がいい。国内はもちろん、ケースによっては海外から意見を聴取しても構わないだろう。

 それでもなお、県民個々人で受け止め方は異なってくる。その点に被ばくの影響を検証する難しさがあるが、それも十分わきまえて誠実に対応していくしか方法はない。

2012年10月13日土曜日



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