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軍関係者による日本陸海軍解説

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週刊金曜日 1997.12.5
南京大虐殺60周年特集

軍関係者による日本陸海軍解説

江口圭一

私大の法学部で日本政治史を講義する。内容は十五年戦争史。年とともに困難を感ずる。風化といった生やさしいものではない。絶望的といってよい段差、空隙(くうげき)にたじろぐ。兵隊の位、大将・大佐・大尉の違い。師団・旅団・連隊・大隊・中隊・小隊の違い。重巡・軽巡の違い。艦攻・艦爆の違い。北部仏印とはどこか。スマトラはどこが領有していたか。

「日本の大学において、軍事史を専門にとりあげているところはない。高校・中学の歴史教育においても、戦争の悲惨さとその侵略性は教えても、日本陸海軍に関する基礎的知識の教育はほとんどなされていない。したがって、日本の政治家をはじめマスコミ関係者、教育者、研究者なども日本陸海軍に関する基礎的知識に欠けている場合が多いのである」として、原剛・安岡昭男編『日本陸海軍事典』(新人物往来社、一九九七年八月一五日)が刊行された。日本陸海軍に関する「基礎的事項・用語などを取り上げその概要を解説したのが本書である」。二四人の執筆者の多くが自衛隊・旧軍関係者である。「旗艦」「奇襲」「機動」の語義まで教えられる本書は重宝である。

「南京事件」の項を引くと、「中国兵の便衣隊員と一般住民を識別することが困難で、住民が被害者となった数も少なくない。・・・・日本軍が中国軍捕虜を収容できず殺害したと見られる数は約二万以下と推定される。数万の虐殺と概定する研究者も少なくない」とある。「約二万以下」というのは引用ミスではない。

三光作戦・七三一部隊・従軍慰安婦といった項目にどんなことが書いてあるか、苦心のほどがしのばれて、今冬の読みものの絶品の一冊である。
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えぐち けいいち・愛知大学法学部教授。日本近現代史。



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