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日本側の調査をもっと

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pipopipo555jp

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週刊金曜日 1997.12.5
南京大虐殺60周年特集

日本側の調査をもっと!

小野賢二

今年の八月、「南京大虐殺史国際学術シンポジウム」が南京で開催された。俺も一報告者として参加した。このシンポジウムの主報告で、南京侵華日軍南京大屠殺史研究会顧問の陳安吉先生は「南京大屠殺史」研究の歴史的経過を分析した後、今後の任務の一つとして「歴史に対して重い責任を負う態度で」基本的にはそれぞれの地域での取り組みを早急に行なうことを強調された。当然、日本人は加害者側からの調査、研究をと、理解した。

日本での南京大虐殺の解明は主に、南京大虐殺否定論者との論争として展開されてきた。そして、南京大虐殺否定論は完全に破産し、事実関係の解明は大幅に進んだ。が、「一部分でも『戦闘詳報』や『陣中日誌』が保存されているのは、歩兵大隊に限っていえば、南京戦参加五七大隊中の一六大隊と四中隊、約三割にすぎない」(『インテリジェンス』一九九四年八月号、藤原彰著『戦争“美化”に通じる虐殺少数論』)が、公式記録の現状である。

だが、視点を変えれば資料は無限だともいえよう。それはわれわれの身近にいる(いたはずの)元兵士たちの存在である。歩兵第六五連隊員の聞き取りと、資料収集の経験からいえば多くの兵士が陣中日記を書いていた。

大虐殺の命令は軍司令部から出されたにせよ、直接虐殺を実行したのは他ならぬ末端の兵士たちである。実行者が書いた記録は貴重であり、数多く収集すれば精度が増す。俺が調査から得た結論は末端の兵士たちまで、当時、捕虜虐殺は当然と考えていた。そこまで行きついてしまった精神構造を解明せずには本当の南京大虐殺の解明には至らないのではないだろうか。

しかし、南京攻略戦後六〇年、証言を記録するには時間的に最後のチャンスだろう。陣中目記等の記録も、当事者が死亡すれば消滅するのを防ぎようがなくなる。

それぞれの地域で、対象を限定した徹底的な調査をすることを期待したい。この方面からの調査はまだまだ未開拓分野なのだ。つけ加えれば、俺の調査結果に対して具体的な反論はまだない。南京攻略戦に加わった部隊は吉田裕著『天皇の軍隊と南京事件』(青木書店)に詳述されている。
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おの けんじ・化学労働者。



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