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参考人(高木学校)(医学博士) 崎山比早子君

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参考人(高木学校)(医学博士) 崎山比早子君


○川内委員長 次に、崎山参考人にお願いいたします。

○崎山参考人 皆さん、おはようございます。崎山です。よろしくお願いします。

 私は、この絵を、二つかいてあるんですが、それを全部説明しますと時間がありませんので、体の設計図であるDNA、体に一番重要な分子のDNAに放射線がどう影響するかということをお話ししたいと思います。

 私たちの体は、成人は約六十兆個の細胞からできています。この六十兆個の細胞も、初めは一つの受精卵から始まっているわけです。この受精卵が分裂して、分化して、最終的にいろいろな体の器官をつくる。この最終分化した細胞は、それぞれ形や機能も全然違いますけれども、この一番初めにあった受精卵と全く同じものを一分子だけ持っています。それがDNAなんですね。

 DNAがなぜそのように変わらないかということを、次にお話ししたいと思います。

 これは、DNAの模型図です。DNAというのは二重らせん構造をとっていて、このようにリボンのようにかいたバックボーンの真ん中に向けて塩基が飛び出しています。その塩基は、アデニン、チミン、グアニン、シトシンという四種類で、この対のつくり方としては、アデニンは必ずチミンと、グアニンは必ずシトシンとしか対をつくりません。

 ですから、人間のDNAは三十二億塩基対ありますけれども、その対というのは、A―T、G―C、その二種類しかないわけです。それが延々と配列されているわけですけれども、この塩基の三つが一つのアミノ酸を決めるということになっています。

 ですから、DNAというのは、どういうアミノ酸がどういう順序で並んでいるか、言いかえれば、どういうたんぱく質をつくるかという情報がDNAの中に組み込まれているわけです。

 DNAは、細胞が分裂するときに必ず二倍になります。そのときに、この結合が切れて、これが一つの鋳型になって新しいものができるということになっていまして、これは巻き戻した図ですけれども、古いDNAの片一方が鋳型になって新しいものがここにできる。これもそうです。ですから、新しくできた二対のDNAは必ずもとのDNAと同じ配列を持っている。

 次のスライドをお願いします。

 こういうふうに複製が同じというか、正しくできるということが、何回DNAが複製されても、もともとの一代目のDNAと同じ配列を持っているということで、DNAが変わらない。六十兆個の細胞になってもDNAの配列は変わらないということです。そのDNAの配列が変わらないということが、体の恒常性を保つために非常に重要なことなんです。

 次のスライドをお願いします。

 こういう重要なDNAに放射線はどういう影響を与えるかということですけれども、まず、影響は放射線の量に比例してふえます。一ミリシーベルトというのを盛んにマスコミでも言われるようになりましたけれども、一ミリシーベルトを被曝するということは一体どういうことなのかということですが、一つ一つの体を構成する細胞の核、この中にDNAが入っているわけですけれども、平均して一本放射線が通る、そういうものが一ミリシーベルトです。ですから、皆さん、一ミリシーベルト被曝したということになりますと、全身の細胞の核に一本ずつ放射線が通ったことになります。千ミリシーベルト被曝しても、千本通るわけですが、一ミリシーベルトで起きたことが千倍になるだけです。その傷の質というのは変わりません。ですから、量的な差だということです。これが放射線に安全量がないと言われるもとなんですね。

 次のスライドをお願いします。

 これはDNAの化学構造をかいたものですけれども、ここに先ほどのリボンのような背骨、この五炭糖と燐酸がずっと延々続いているわけですけれども、その中心に向かって塩基が飛び出しています。相手方もそうです。この結合の仕方は、化学結合のエネルギーで結合しています。このエネルギーというのは弱いわけですけれども、例えば診断用エックス線のエネルギーといいますと、この結合のエネルギーの一万五千倍から二万倍ぐらいのエネルギーを持っています。

 ですから、そういうものがDNAの上を通りますと、簡単にDNAは切れてしまいます。その切れ方が、エネルギーが大きいので、単純に切れるわけではなくて、DNAの周りにはたくさんの酵素があります、たんぱく質があります、そういうものも巻き込んで傷をつけますので、非常に複雑な傷になります。

 自然にもDNAというのは毎日切れていますけれども、それを体は治しているわけです。ところが、放射線のような高エネルギーで切れた複雑な傷というのは、正しく治すことが難しい。間違えやすい傷が起きるわけです。そういうところでこの配列が変わって、違うアミノ酸がここへ入ると、ここに変異が起きるわけです。それが子孫に伝わって、がんの原因になっていくわけです。

 次のスライドをお願いします。

 がんになるのは低線量ですけれども、たくさんの放射線を一度に全身に浴びると、例えば六千から七千ミリシーベルトを一度に浴びると、ほとんど一〇〇%の人が死亡します。五〇%の人が死亡するのは、大体三千から四千ミリシーベルト浴びると五〇%が死にます。

 こういう大量の放射線を一度に浴びた場合に、比較的短時間の間に、皮下出血とか脱毛とかいろいろな症状が出てきます。この症状は、時間的に急性なので、急性障害というふうにいいます。その急性障害は、放射線を浴びた人だれかれなしにあらわれるので、確定的影響とも呼ばれています。

 この急性障害のあらわれる一番軽い症状というのは、リンパ球や白血球の一時的減少です。これが起こる線量というのは、百から二百五十ミリシーベルト。この線量以下ですと、直ちに健康に影響を与える量ではありませんという説明がよく出てきますけれども、そういう線量になるわけです。低線量域ですね。

 この低線量域が安全、安心でないということは、これが原因になって、数年から数十年後にがんになる、発がんが起こるということで、それで安心、安全ではないということなんです。この発がんというのは、だれかれなしではなくて確率的に出てくるので、遅く出てくるから晩発障害、確率的影響ということで、確率的に出てくるのでそういう影響だということになっています。

 次のスライドをお願いします。

 がんは一つの遺伝子の変化によって起こるものではありません。たくさんの遺伝子が変化して、それでがんになるということ、これは、がん研究者の間でも定説となっているがんの多段階説です。

 ここで放射線によるがん遺伝子の活性化がありますと、放射線によって遺伝子の不安定化ということも起こりますので、環境にあるほかの放射線とか化学物質なんかによって変化が起きて、だんだんこの階段を上っていくという感じで、ここには時間がかかりますから、老人にがんが多いというのは、この階段を上る時間が多いということなんですね。

 次のスライドをお願いします。

 それでは、どういう線量でどのぐらいの発がんが起こるかということなんですが、一ミリシーベルトを一万人の人が浴びると、その中で一人がんになる。十ミリシーベルトを浴びると十人ががんになる。百ミリだと百人。これは、これ以下の線量だと安全だ、がんが出ない、そういう閾値はないという閾値なし直線説です。

 このモデルは国際放射線防護委員会が出しているわけですけれども、もとになったのは広島、長崎の被爆者です。その被爆者のリスクに二分の一を掛けたのが、この防護委員会のモデルです。

 次、お願いします。

 今の発がんの閾値なし直線説を採用している機関というのは米国科学アカデミーで、これから出ているBEIR7という報告書があります。それにもはっきり書いてあります。それから国連科学委員会、UNSCEARに書いてありますし、今の国際放射線防護委員会、ICRP、それから欧州の放射線リスク委員会、ECRRも、こういうところの機関は閾値なし直線説を採用しています。

 ということは、放射線には安全量はないということが国際的な合意事項になっているということなんです。ですから、防護というのは、その前提に立って行わなければならないというのが国際放射線防護委員会の見解だと思いますので、これからも、防護のことについて、国会議員の皆さん、よろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。(拍手)

○川内委員長 崎山参考人、ありがとうございました。




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