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『原爆と平和学』~放射線健康影響の克服から国際ヒバクシャ医療と平和構築活動~

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2011年3月1日

『原爆と平和学』~放射線健康影響の克服から国際ヒバクシャ医療と平和構築活動~

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 山下俊一


20世紀をふり返ると科学技術のめざましい進歩により、先進国は豊かで便利な生活と長寿を獲得しました。格差が拡がる競争的社会において、魔法の頭脳(コンピューター)、魔法の力(原子力)、そして魔法のいのち(遺伝子操作・再生医療)と呼ばれる現代の三種の神器はその象徴です。一方では、科学技術は、人間社会と地球環境を脅かす負の側面をもつことも明確となりました。その悲しい歴史が原子力の開発に垣間見られ、狂気の核兵器開発競争に腐心した東西冷戦構造時代は広島・長崎への原爆投下から始まりました。

唯一の被爆国日本では、すでに原爆被災から66年目を迎えようとしていますが、戦争体験の風化と共に平和の尊さが忘れ去られようとしています。そこで原爆被災という広島・長崎の負の遺産を正しく学ぶために、放射線健康障害の実態をまず理解したいと思います。その上で原爆被爆者のみならず世界のヒバクシャの存在について最新の知見を網羅し、21世紀という核の時代における原子力や放射線と人類の共存共栄について新たなパラダイムや進むべき道を開拓する試みを紹介します。すなわち原爆被災を一例として、チェルノブイリ原発事故や世界の核実験場を例に加えて、現代科学技術の進歩の光と影を洞察する能力を養成する知の市場の提供を企画しました。

平成23年度後期初めて開講予定の『原爆と平和学』は、長崎の地から国際的に活躍する医療のスペシャリストが、平易な言葉とわかり易いスライドで、物理学や化学、病理学、内科学そして生物学を基礎とした15回の講義を行います。オムニバス方式ですが、はじめに原爆医療概論、そして放射線や放射能の正しい知識を学び、放射線災害医療やエネルギー問題まで幅広く講義をします。これら到達目標は、放射線、放射能の正しい理解の上で正しく怖がり、核時代における原子力や放射線・放射能との平和共存の術を修得することです。講義の内容は常に人間本位な考え方に立脚しています。工学や産業界のエネルギー開発にともなうハード面の安全安心とは異なるヒューマンエラーの視点からも人間の安全安心を考えます。特に放射線災害医療への対応は日本が世界をリードしています。

健康という視点から生命現象に深く関わる放射線や放射能の事が理解できれば、物質の本質のみならず、生命の本質から健康や病気、さらに生死の理解も深まるものと期待されます。後半は健康リスク管理のノウハウを緊急被ばく医療や放射線リスク管理から学び、核時代における平和論へと押し進めます。そして被爆国日本の立ち位置と国際貢献への道を模索します。オバマ大統領のノーベル平和賞受賞に期待される核兵器のない平和な世界の実現への道のりは困難な課題が多いのも事実です。しかし、まず人間ありきで、地球の保全と同時に、人間の安全そして健康リスク管理から社会の安全安心の構築に向けた取組を学びます。長崎を最後の被爆地にすべく、人間の尊厳を破壊する核兵器廃絶と平和構築を表裏一体と考え、日本の将来展望と国際貢献の意義を考察します。

最後に、平和論については医療の専門家が門外漢ですが人間の本性から議論します。すなわち『すべて人間が成せるわざである』という立場で、同様に戦争もそして核兵器使用も人間の仕業であるという考え方で広島・長崎への原爆投下の事実を捉えます。世界の核兵器廃絶の高まりと核保有国のパワーバランス外交との狭間で、放射線健康影響の克服から国際ヒバクシャ医療を展開する長崎の力を集結することで、私たちの地道な国際医療活動が平和構築活動そのものに繋がることを啓発する予定です。


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