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発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針【解説】

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発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針【解説】



本指針を適用するに当たって、運用上の注意を必要とし、又は指針そのものの意義、解釈をより明確にしておく必要があると考えられる事項について、次にその解釈を掲げることとした。なお、ここに解説として取り上げた指針本文中の項目は以下のとおりである。

Ⅲ.用語の定義
(1) 安全機能
(2) 安全機能の重要度
(6) 事故
(7) 原子炉格納容器バウンダリ
(8) 原子炉冷却材圧力バウンダリ
(13) 安全保護系
(14) 工学的安全施設
(15) 単一故障
(18) 多様性
(19) 独立性
(20) 燃料の許容設計限界

Ⅳ.原子炉施設全般
指針1.準拠規格及び基準
指針2.自然現象に対する設計上の考慮
指針3.外部人為事象に対する設計上の考慮
指針4.内部発生飛来物に対する設計上の考慮
指針5.火災に対する設計上の考慮
指針6.環境条件に対する設計上の考慮
指針7.共用に関する設計上の考慮
指針8.運転員操作に対する設計上の考慮
指針9.信頼性に関する設計上の考慮
指針10.試験可能性に関する設計上の考慮

Ⅴ.原子炉及び原子炉停止系
指針12.燃料設計
指針13.原子炉の特性
指針14.反応度制御系
指針15.原子炉停止系の独立性及び試験可能性
指針17.原子炉停止系の停止能力
指針18.原子炉停止系の事故時の能力

Ⅵ.原子炉冷却系
指針19.原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性
指針23.原子炉冷却材補給系
指針24.残留熱を除去する系統
指針25.非常用炉心冷却系
指針26.最終的な熱の逃がし場へ熱を輸送する系統
指針27.電源喪失に対する設計上の考慮

Ⅶ.原子炉格納容器
指針28.原子炉格納容器の機能
指針30.原子炉格納容器の隔離機能
指針31.原子炉格納容器隔離弁
指針32.原子炉格納容器熱除去系
指針33.格納施設雰囲気を制御する系統

Ⅷ.安全保護系
指針34.安全保護系の多重性
指針35.安全保護系の独立性
指針36.安全保護系の過渡時の機能
指針38.安全保護系の故障時の機能
指針39.安全保護系と計測制御系との分離
指針40.安全保護系の試験可能性

Ⅸ.制御室及び緊急時施設
指針41.制御室
指針42.制御室外からの原子炉停止機能
指針43.制御室の居住性に関する設計上の考慮

Ⅹ.計測制御系及び電気系統
指針47.計測制御系
指針48.電気系統

XⅡ.放射性廃棄物処理施設
指針52.放射性気体廃棄物の処理施設
指針53.放射性液体廃棄物の処理施設

XⅢ.放射線管理
指針58.放射線業務従事者の放射線管理
指針59.放射線監視


Ⅲ.用語の定義


(1) 「安全機能」


「安全機能」を有する構築物、系統及び機器については、別に「重要度分類指針」において定める。

(2) 「安全機能の重要度」

「安全機能の重要度」については、別に「重要度分類指針」において定める。

(6) 「事故」

「想定される」とは、原子炉施設の安全設計の観点から考慮すべき頻度で発生すると考えられることをいう。
本指針にいう「想定される飛来物」、「想定される静的機器の単一故障」等も、上記の考え方に準じて解釈する。

(7) 「原子炉格納容器バウンダリ」

「原子炉格納容器設計用の想定事象」とは、原子炉格納容器の設計の妥当性について判断するための想定事象をいい、原子炉格納容器の機能の確保に障害となる圧力・温度の上昇、動荷重の発生、可燃性ガスの発生及び放射性物質の濃度について評価された結果のうち、着目するパラメータについて最も厳しい条件を包絡した事象をいう。具体的には、「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針」に定める。

(8) 「原子炉冷却材圧力バウンダリ」

「原子炉冷却材圧力バウンダリ」とは、次の範囲の機器及び配管をいう。
  • [1] 原子炉圧力容器及びその付属物(本体に直接付けられるもの、制御棒駆動機構ハウジング等)
  • [2] 原子炉冷却材系を構成する機器及び配管。ただし、PWRにおいては1次冷却材ポンプ、蒸気発生器の水室・管板・管・加圧器、1次冷却系配管、弁等をいい、また、BWRにおいては、主蒸気管及び給水管の原子炉側からみて第2隔離弁を含みそこまでとする。
  • [3] 接続配管
    • (a) 通常時開、事故時閉となる弁を有するものは、原子炉側からみて、第2隔離弁を含みそこまでとする。
    • (b) 通常時閉、事故時閉となる弁を有するものは、原子炉側からみて、第1隔離弁を含みそこまでとする。
    • (c) 通常時閉、原子炉冷却材喪失時開となる弁を有する非常用炉心冷却系等も(a)に準ずる。
上記において「隔離弁」とは、自動隔離弁、逆止弁、通常時ロックされた閉止弁17及び遠隔操作閉止弁をいう。

(13) 「安全保護系」

安全保護系には、原子炉停止系を緊急作動するための信号回路と工学的安全施設等の作動を行わせるための信号回路とがあり、いずれの設備も検出器から動作装置入力端子までをいう。

(14) 「工学的安全施設」

「工学的安全施設」とは、非常用炉心冷却系、原子炉格納容器(隔離弁を含む。)、格納施設雰囲気浄化系等をいう。

(15) 「単一故障」

「従属要因」とは、単一の原因によって必然的に発生する要因をいう。

(18) 「多様性」

「異なる性質」とは、所定の機能の全部又は一部を喪失するモードが同じでないことをいう。

(19) 「独立性」

「共通要因」とは、二つ以上の系統又は機器に同時に作用する要因であって、例えば環境の温度、湿度、圧力、放射線等による影響因子、及び系統又は機器に供給される電力、空気、油、冷却水等による影響因子をいう。

(20) 「燃料の許容設計限界」

 「継続して原子炉の運転をすることができる」とは、必ずしもそのままの状態から原子炉を運転することを意味するものではなく故障箇所の修理及び必要な場合における燃料の検査・交換を行った後に運転を再開することも含む。
 燃料の許容設計限界設定のめやすとしては、燃料ペレットの最高温度、燃料被覆管の最高温度、最大熱流束、最小限界熱流束比、最小限界出力比、燃料ペレットの最大エンタルピ、燃料被覆管の最大変形量等が判断の基礎となる。


Ⅳ.原子炉施設全般


指針1.準拠規格及び基準

 安全機能を有する構築物、系統及び機器の設計、材料の選定、製作及び検査に当たっては、原則として現行国内法規に基づく規格及び基準によるものとする。
 ただし、外国の規格及び基準による場合又は規格及び基準で一般的でないものを適用する場合には、それらの規格及び基準の適用の根拠、国内法規に基づく規格及び基準との対比並びに適用の妥当性を明らかにする必要がある。
 「規格及び基準によるものである」とは、対象となる構築物、系統及び機器について設計、材料の選定、製作及び検査に関して準拠する規格及び基準を明らかにしておくことを意味する。

指針2.自然現象に対する設計上の考慮

 「適切と考えられる設計用地震力に十分耐えられる設計」については、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」において定めるところによる。
 「自然現象によって原子炉施設の安全性が損なわれない設計」とは、設計上の考慮を要する自然現象又はその組合わせに遭遇した場合において、その設備が有する安全機能を達成する能力が維持されることをいう。
 「重要度の特に高い安全機能を有する構築物、系統及び機器」については、別に「重要度分類指針」において定める。
 「予想される自然現象」とは、敷地の自然環境を基に、洪水、津波、風、凍結、積雪、地滑り等から適用されるものをいう。
 「自然現象のうち最も苛酷と考えられる条件」とは、対象となる自然現象に対応して、過去の記録の信頼性を考慮の上、少なくともこれを下回らない苛酷なものであって、かつ、統計的に妥当とみなされるものをいう。
 なお、過去の記録、現地調査の結果等を参考にして、必要のある場合には、異種の自然現象を重畳させるものとする。
 「自然力に事故荷重を適切に組み合わせた場合」とは、最も苛酷と考えられる自然力と事故時の最大荷重を単純に加算することを必ずしも要求するものではなく、それぞれの因果関係や時間的変化を考慮して適切に組み合わせた場合をいう。

指針3.外部人為事象に対する設計上の考慮

 「外部人為事象」とは、飛行機落下、ダムの崩壊、爆発等をいう。

指針4.内部発生飛来物に対する設計上の考慮

 「内部発生飛来物」とは、内部発生エネルギーの高い流体を内蔵する弁及び配管の破断、高速回転機器の破損、ガス爆発、重量機器の落下等によって発生する飛来物をいう。なお、二次的飛来物、火災、溢水、化学反応、電気的損傷、配管の破損、機器の故障等の二次的影響も考慮するものとする。

指針5.火災に対する設計上の考慮

「火災により原子炉施設の安全性を損なうことのない設計」とは、「発電用軽水型原子炉施設の火災防護に関する審査指針」に適合した設計をいう。

指針6.環境条件に対する設計上の考慮

「その安全機能が期待されているすべての環境条件」とは、通常運転時及び異常状態において、その機能が期待されている構築物、系統及び機器が、その間にさらされると考えられるすべての環境条件をいう。

指針7.共用に関する設計上の考慮

ここでいう「原子炉の安全性を損なうことのない設計」とは、共用によっても、異常状態において必要とされる安全機能が阻害されることがなく、原子炉の1基が関与する異常状態において他の原子炉の停止及び残留熱除去が達成可能であること、並びに共用される構築物、系統及び機器の想定される故障により同時に2基以上の原子炉の事故をもたらさないことをいう。

指針8.運転員操作に対する設計上の考慮

 「適切な措置を講じた設計」とは、人間工学上の諸因子を考慮して、盤の配置及び操作器具、弁等の操作性に留意すること、計器表示及び警報表示において原子炉施設の状態が正確かつ迅速に把握できるよう留意すること、保守点検において誤りを生じにくいよう留意することなどの措置を講じた設計であることをいう。
 また、異常状態発生後、ある時間までは、運転員の操作を期待しなくても必要な安全機能が確保される設計であることをいう。

指針9.信頼性に関する設計上の考慮

 「安全機能の重要度に応じて、十分に高い信頼性」及び「重要度の特に高い安全機能を有する系統」については、別に「重要度分類指針」において定める。
 「単一故障」は、動的機器の単一故障と静的機器の単一故障に分けられる。重要度の特に高い安全機能を有する系統は、短期間では動的機器の単一故障を仮定しても、長期間では動的機器の単一故障又は想定される静的機器の単一故障のいずれかを仮定しても、所定の安全機能を達成できるように設計されていることが必要である。
 上記の動的機器の単一故障又は想定される静的機器の単一故障のいずれかを仮定すべき長期間の安全機能の評価に当たっては、その単一故障が安全上支障がない期間内に除去又は修復できることが確実であれば、その単一故障を仮定しなくてよい。
指針10.試験可能性に関する設計上の考慮
 「適切な方法」とは、実系統を用いた試験又は検査が不適当な場合には、試験用のバイパス系を用いることなどを許容することを意味する。


Ⅴ.原子炉及び原子炉停止系


指針12.燃料設計

「生じ得る種々の因子」とは、燃料棒の内外圧差、燃料棒及び他の材料の照射、負荷の変化により起こる圧力・温度の変化、化学的効果、静的・動的荷重、燃料ペレットの変形、燃料棒内封入ガスの組成の変化等をいう。
指針13.原子炉の特性
 「固有の出力抑制特性を有し」とは、予想されるすべての運転範囲において、原子炉出力の過渡的変化に対し、燃料の損傷を防止又は緩和するため、ドップラ係数、減速材温度係数、減速材ボイド係数、圧力係数等を総合した反応度フィードバックが、急速な固有の出力抑制効果を持つことをいう。
 「出力振動が生じてもそれを容易に制御できる」とは、燃料の許容設計限界を超える状態に至らないよう十分な減衰特性を持つか、あるいは出力振動を制御し得ることをいう。

指針14.反応度制御系

 「制御棒の最大反応度価値」の評価に当たっては、原子炉の運転状態との関係で、制御棒の挿入の程度及び配置状態を制限するなど、反応度価値を制限する装置が設けられている場合には、その効果を考慮してもよい。
 「想定される反応度投入事象」とは、原子炉に反応度が異常に投入される事象をいい、「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針」及び「発電用軽水型原子炉施設の反応度投入事象に関する評価指針」において定めるところによる。

指針15.原子炉停止系の独立性及び試験可能性

 現在軽水炉で採用されている制御棒による系及び可溶性毒物による系(BWRにおけるほう酸注入系、PWRにおける化学体積制御設備のほう酸注入系)は、その性能からみて指針15を満足する原子炉停止系と考える。
 なお、制御棒による原子炉停止系自身が独立した複数個の停止機能を持ち、その数が高温停止に必要な数に比し十分な余裕を持っている場合には、実質的に幾つかの独立した停止系とみなせる。
 「高温状態で臨界未満を維持できる」とは、過渡状態が収束した後、キセノン崩壊により反応度が添加されるまでの期間、臨界未満を維持することをいい、さらにそれ以降の長期の臨界未満の維持は、他の系統の作動を期待してよいことをいう。なお、事象により原子炉の停止能力を備えた系統の作動が期待できる場合には、その寄与を考慮してよい。

指針17.原子炉停止系の停止能力

「低温状態で炉心を臨界未満にでき、かつ、低温状態で臨界未満を維持できる」とは、高温臨界未満の状態からキセノン崩壊及び原子炉冷却材温度変化による反応度添加を補償しつつ、低温未臨界状態を達成し、かつ、維持することをいう。

指針18.原子炉停止系の事故時の能力

事故時における原子炉停止系の能力について、原子炉の停止能力を備えた系統の作動が期待できる場合には、その寄与を考慮してよい。例えば、PWRの主蒸気管破断時において原子炉停止系が非常用炉心冷却系と複合して、炉心を臨界未満にでき、かつ、炉心を臨界未満に維持できる場合である。


Ⅵ.原子炉冷却系


指針19.原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性

 「健全性を確保できる設計」とは、原子炉停止系、原子炉冷却系、計測制御系、安全保護系、安全弁等の機能によって、原子炉冷却材圧力バウンダリの急冷・急熱及び異常な圧力上昇を抑制し、原子炉冷却材圧力バウンダリ自体は、その遭遇する温度変化及び圧力に対して十分耐え、異常な原子炉冷却材の漏えい又は破損の発生する可能性が極めて小さくなるよう考慮された設計をいう。
 「隔離弁を設けた設計」とは、原子炉冷却材系に接続され、その一部が原子炉冷却材圧力バウンダリを形成する配管系に関しては、原子炉冷却材圧力バウンダリとならない部分からの異常な漏えいが生じた場合において、原子炉冷却材の喪失を停止させるため、配管系の通常運転時の状態及び使用目的を考慮し、適切な隔離弁を設けた設計をいう。

指針23.原子炉冷却材補給系

 「原子炉冷却材補給系」とは、原子炉冷却材系へ原子炉冷却材を補給する系統(BWRにおける制御棒駆動水圧系及び原子炉隔離時冷却系(給水系を除く。)、PWRにおける充てんポンプによって補給する系統)をいう。
 「原子炉冷却材の小規模の漏えい」とは、原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する弁、ポンプ等のシール部及び原子炉冷却材圧力バウンダリの小亀裂等からの原子炉冷却材の漏えいをいう。

指針24.残留熱を除去する系統

 「残留熱を除去する系統」とは、主復水器による熱除去ができない場合にも残留熱を除去できるように設けられる系統(BWRにおける原子炉隔離時冷却系、残留熱除去系、高圧炉心スプレイ系、自動減圧系等、PWRにおける蒸気発生器、主蒸気逃がし弁、主蒸気安全弁、補助給水設備、余熱除去設備等)をいう。また、これに関連し、原子炉冷却材系を減圧する系統として、BWRでは主蒸気逃がし安全弁、PWRでは加圧器逃がし弁等がある。
 「その他の残留熱」とは、通常運転中に炉心、原子炉冷却材系等の構成材、原子炉冷却材及び2次冷却材(PWRの場合)に蓄積された熱をいう。
 「適切に備え」とは、異常状態における当該系統の機能について、多重性又は多様性及び独立性を必要とすることをいう。

指針25.非常用炉心冷却系

「配管破断等」とは、例えば逃がし弁の開固着のように、物理的破断は発生しないものの原子炉冷却材喪失を生じさせる事象を含むことを意味する。

指針26.最終的な熱の逃がし場へ熱を輸送する系統

 「最終的な熱の逃がし場」とは、海、河、池、湖又は大気をいう。
 「最終的な熱の逃がし場へ熱を輸送する系統」とは、非常用炉心冷却系、残留熱を除去する系統等から最終的な熱の逃がし場へ熱を輸送する系統(原子炉補機冷却設備、原子炉補機冷却海水設備等)をいう。
 「適切に備え」とは、異常状態における当該系統の機能について、多重性又は多様性及び独立性を必要とすることをいう。

指針27.電源喪失に対する設計上の考慮

 長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又は非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない。
 非常用交流電源設備の信頼度が、系統構成又は運用(常に稼働状態にしておくことなど)により、十分高い場合においては、設計上全交流動力電源喪失を想定しなくてもよい。


Ⅶ.原子炉格納容器


指針28.原子炉格納容器の機能

「電線、配管等の貫通部及び出入口の重要な部分」とは、漏えいの観点から重要である部分をいい、具体的には、弾性シール又は伸縮ベローズが使用される出入口及び貫通部をいう。

指針30.原子炉格納容器の隔離機能

 「原子炉格納容器隔離弁」とは、自動隔離弁(事故時に充分な隔離機能を発揮するように配慮された逆止弁を含む。)、通常ロックされた閉止弁及び遠隔操作閉止弁をいう。上記でいう「事故時に充分な隔離機能を発揮するように配慮された逆止弁」とは、原子炉格納容器壁を貫通する当該系統に、原子炉格納容器内外いずれかの位置で破損が生じ、その逆止弁に対する逆圧がすべて喪失した条件においても、必要な隔離機能が重力等によって維持されるように設計された逆止弁をいう。
 「原則として、原子炉格納容器隔離弁を設けた」とは、原子炉の安全上重要な計測又はサンプリングを行う配管、制御棒駆動機構用水圧管等の配管であってその配管を通じての漏えいが十分許容される程度に少ないものを除き、原子炉格納容器隔離弁を設けることをいう。
 「主要な配管系」とは、原子炉格納容器隔離弁を設けなければならない配管系のうち、高温運転時に原子炉格納容器隔離弁が閉止されているように設計された配管系を除き、通常運転状態のまま放置すれば原子炉格納容器からの許容されない漏えいの原因となるおそれのある配管系をいう。
 「原則として、自動的、かつ、確実に閉止される機能」とは、安全保護系からの原子炉格納容器隔離信号等により自動的に閉止され、かつ、原子炉格納容器隔離弁以外の隔離障壁とあいまって、単一故障の仮定に加え、外部電源が利用できない場合においても原子炉格納容器からの放射性物質の漏えいを低減し得ることをいう。また、ここでいう「原則として」とは、主要な配管系であっても事故の収束に必要な系統の配管系は、その系統の安全機能を阻害しないために、自動隔離信号によって閉止することを要しないことをいう。ただし、その場合であっても、それらの配管系により、原子炉格納容器の隔離機能が失われてはならない。
 なお、自動的に閉止される原子炉格納容器隔離弁も事故後の必要な処置のため隔離解除が考慮されていなければならない。

指針31.原子炉格納容器隔離弁

 「原子炉格納容器の外側で閉じていない配管系」とは、事故時の配管系の状態を考慮し、隔離されない場合、原子炉格納容器内雰囲気から外部への放射性物質の許容されない放出の経路となるものをいう。
 「原則として原子炉格納容器の内側に1個及び外側に1個とする」とは、原子炉格納容器隔離機能以外の安全上の考慮を含め、その妥当性が示される場合には、外側に2個の原子炉格納容器隔離弁を設けることも許容されることを意味する。
 「原則として原子炉格納容器の外側に1個とする」とは、機能状態を考慮し原子炉格納容器外部に連絡していない配管系については、内側又は外側に1個の原子炉格納容器隔離弁を設けることも許容されることを意味する。

指針32.原子炉格納容器熱除去系

 「原子炉格納容器熱除去系」とは、原子炉格納容器設計用の想定事象に対し、原子炉格納容器内の圧力及び温度を十分に低下させ得る機能を有するもので、例えば、原子炉格納容器スプレイ系及びその熱除去系をいう。

指針33.格納施設雰囲気を制御する系統

「格納施設雰囲気を制御する系統」とは、格納施設雰囲気浄化系及び可燃性ガス濃度制御系をいう。
「格納施設雰囲気浄化系」とは、BWRにおいては、非常用ガス処理系、非常用再循環ガス処理系、原子炉格納容器スプレイ系等を、PWRにおいては、アニュラス空気再循環設備、原子炉格納容器スプレイ系等をいう。
「水素又は酸素の濃度を抑制する」とは、原子炉格納容器の内部を不活性な雰囲気に保つこと、又は必要な場合再結合等により水素若しくは酸素の濃度を燃焼限界以下に抑制することをいう。


Ⅷ.安全保護系


指針34.安全保護系の多重性

「チャンネル」とは、安全保護動作に必要な単一の信号を発生させるために必要な構成要素(抵抗器、コンデンサ、トランジスタ、スイッチ、導線等)及びモジュール(内部連絡された構成要素の集合体)の配列であって、検出器から論理回路入口までをいう。

指針35.安全保護系の独立性

「チャンネル相互を分離し」とは、一方のチャンネルにおいて不利な条件が発生した場合において、他方のチャンネルも同種の不利な条件が発生しないこと、又はその安全機能が阻害されるような影響を受けないようになっていることをいう。

指針36.安全保護系の過渡時の機能

安全保護系の過渡時の機能の具体例としては、原子炉の過出力状態や出力の急激な上昇を防止するために、異常な状態を検知し、原子炉停止系を作動させ、緊急停止の動作を開始させることなどをいう。

指針38.安全保護系の故障時の機能

 「駆動源の喪失、系統の遮断及びその他の不利な状況」とは、電力若しくは計装用空気の喪失又は何らかの原因により安全保護系の論理回路が遮断されるなどの状況をいう。なお、不利な状況には、環境条件も含むが、どのような状況を考慮するかは、個々の設計に応じて判断する。
 「最終的に原子炉施設が安全な状態に落ち着く」とは、安全保護系が故障した場合においても、原子炉施設が安全側の状態に落ち着くか、又は安全保護系が故障してそのままの状態にとどまっても原子炉施設の安全上支障がない状態を維持できることをいう。

指針39.安全保護系と計測制御系との分離

「安全保護系の機能を失わない」とは、接続された計測制御系の機器又はチャンネルに単一故障、誤操作若しくは使用状態からの単一の取り外しが生じた場合においても、これにより悪影響を受けない部分の安全保護系が指針34から指針38を満たすことをいう。

指針40.安全保護系の試験可能性

「原子炉の運転中に、定期的に試験できる」とは、安全保護系の機能が健全に保持されていることを運転中に適当な期間ごとに確認できることをいうが、運転中における機能確認試験の実施中においても、その機能自体が維持されていると同時に、原子炉停止系、非常用炉心冷却系等の不必要な動作が発生しないことをいう。


Ⅸ.制御室及び緊急時施設


指針41.制御室

 「主要パラメータが監視できる」とは、指針47で監視が要求されるパラメータのうち、連続的に監視する必要のあるものを制御室において監視できることをいう。
 「急速な手動操作」とは、原子炉の停止及び停止後の原子炉冷却の確保のための操作をいう。

指針42.制御室外からの原子炉停止機能

 「制御室外の適切な場所から原子炉を停止することができる」とは、何らかの原因で制御室に接近できない場合の対策が講じられていることをいう。
 「原子炉の急速な高温停止ができる」とは、直ちに原子炉を停止し、残留熱を除去し、高温停止状態に安全に保持することをいう。

指針43.制御室の居住性に関する設計上の考慮

「従事者が制御室に接近し、又はとどまり」とは、事故発生後、事故対策操作をすべき従事者が制御室に接近できるよう通路が確保されていること、及び従事者が制御室に適切な期間滞在できること、並びに事故対策操作後、従事者が交替のため接近する場合においては、放射線レベルの減衰及び時間経過とともに可能となる被ばく防護策が採り得ることをいう。


Ⅹ.計測制御系及び電気系統


指針47.計測制御系

 「健全性を確保するために必要なパラメータ」とは、炉心の中性子束、中性子束分布、原子炉水位、原子炉冷却材系の圧力・温度・流量、原子炉冷却材の水質、原子炉格納容器内の圧力・温度・雰囲気ガス濃度等をいう。
 「事故の状態を知り対策を講じるのに必要なパラメータ」とは、原子炉格納容器内雰囲気の圧力、温度、水素ガス濃度、放射性物質濃度等をいう。
 「記録」とは、事象の経過後において、必要なパラメータが参照可能であることを含む。

指針48.電気系統

 「外部電源系」とは、外部電源(電力系統又は主発電機)からの電力を原子炉施設に供給するための一連の設備をいう。
 「非常用所内電源系」とは、非常用所内電源設備(非常用ディーゼル発電機、バッテリ等)及び工学的安全施設を含む重要度の特に高い安全機能を有する設備への電力供給設備(非常用母線スイッチギヤ、ケーブル等)をいう。
 「重要度の特に高い安全機能」及び「重要度の高い安全機能」については、別に「重要度分類指針」において定める。

XⅡ.放射性廃棄物処理施設


指針52.放射性気体廃棄物の処理施設、指針53.放射性液体廃棄物の処理施設
気体及び液体の放射性廃棄物の処理施設は、周辺公衆の線量を合理的に達成できる限り低く保つ設計であることが必要であり、このためには別に定める「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針」を満足しなければならない。

指針53.放射性液体廃棄物の処理施設

 「放射性液体廃棄物の処理施設」とは、原子炉施設の運転に伴い発生する放射性液体廃棄物のほか、スラッジ等の固体が混入している液体状の放射性廃棄物を分離・収集し、廃液の性状により、適切なろ過、蒸発処理、イオン交換、貯留、減衰等を行う施設をいう。
 「関連する施設」とは、処理施設を収納する建屋又は区域をいう。
 「液体状の放射性物質の漏えいの防止及び敷地外への管理されない放出の防止を考慮した設計」については、「放射性液体廃棄物処理施設の安全審査に当たり考慮すべき事項ないしは基本的な考え方」において定めるところによる。


XⅢ.放射線管理


指針58.放射線業務従事者の放射線管理

「必要な情報を制御室又は適当な場所に表示できる」とは、制御室において放射線管理に必要なエリア放射線モニタによる空間線量率を、また、適当な場所において管理区域における空間線量率、空気中の放射性物質の濃度及び床面等の放射性物質の表面密度を、それぞれ表示できることをいう。

指針59.放射線監視

 「モニタリング」とは、サンプリング、放射線モニタ等により、放射性物質濃度等を測定及び監視することをいう。
 「適切にモニタリングできる」とは、通常運転時及び異常状態において、放射性物質の放出の監視及び空間線量率の測定ができ、事故時に迅速な対策処理が行えるように、放射線源、放出点、原子力発電所周辺、予想される放射性物質の放出経路等適切な場所をモニタリングできることをいう。
 通常運転時におけるモニタリングについては、「発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針」において定めるところによる。
 事故時におけるモニタリングについては、「発電用軽水型原子炉施設における事故時の放射線計測に関する審査指針」において定めるところによる。


(参考)平成2年8月30日付け原子力安全委員会決定文
発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針について


当委員会は、平成2年7月24日付けで原子炉安全基準専門部会から提出のあった標記指針に関する報告書について、その内容を検討した結果、別添のとおり「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」を定める。

従来、当委員会は発電用軽水型原子炉施設の安全審査を行うに当たって、昭和52年6月14日に原子力委員会が策定(平成元年3月27日に原子力安全委員会が一部改訂)した「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」を用いてきたが、今後はこれに代えて、別添の「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」を用いることとする。

なお、本指針については、今後の新たな知見と経験により、適宜見直しを行うものとする。


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