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5-3 防護対策のための指標

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「原子力施設等の防災対策について」原子力安全委員会
第5章 災害応急対策の実施のための指針

5-3 防護対策のための指標



防護対策をとるための指標は、なんらかの対策を講じなければ個人が受けると予想される線量(予測線量)又は実測値としての飲食物中の放射性物質の濃度として表される。

予測線量は、異常事態の態様、放射性物質又は放射線の予想される又は実際の放出状況、緊急時モニタリング情報、気象情報、SPEEDIネットワークシステム等から推定されることとなる。※4 なお、SPEEDIネットワークシステムを用いた予測線量の算定についての参考資料を、付属資料10(未作成)に示す。

(1) 屋内退避及び避難等に関する指標

国際放射線防護委員会(ICRP)等の文書を踏まえながら、防護対策の実効性も考慮し、屋内退避及び避難等に関する指標を以下のとおり提案する。検討に当たり参考とした資料については、付属資料7(未作成)付属資料8(未作成)付属資料11(未作成)に示す。

表2 屋内退避及び避難等に関する指標

予測線量(単位:mSv) 防 護 対 策 の 内 容
外部被ばくによる実効線量 内部被ばくによる等価線量
・放射性ヨウ素による小児甲状腺の等価線量
・ウランによる骨表面又は肺の等価線量
・プルトニウムによる骨表面又は肺の等価線量
10~50 100~500 住民は、自宅等の屋内へ退避すること。
その際、窓等を閉め気密性に配慮すること。
ただし、施設から直接放出される中性子
線又はガンマ線の放出に対しては、
指示があれば、コンクリート建家に退避
するか、又は避難すること。
50以上 500以上 住民は、指示に従いコンクリート建家の
屋内に退避するか、又は避難すること。
注)
  1. 予測線量は、災害対策本部等において算定され、これに基づく周辺住民等の防護対策措置についての指示等が行われる。
  2. 予測線量は、放射性物質又は放射線の放出期間中、屋外に居続け、なんらの措置も講じなければ受けると予測される線量である。
  3. 外部被ばくによる実効線量、放射性ヨウ素による小児甲状腺の等価線量、ウランによる骨表面又は肺の等価線量、プルトニウムによる骨表面又は肺の等価線量が同一レベルにないときは、これらのうちいずれか高いレベルに応じた防護対策をとるものとする。

※4 IAEA等の文書において、防護対策(屋内退避/避難)の指標は、ある対策を講じた場合に回避することができる線量(回避線量)で記載されている。一方、防災指針においては、予測線量を用いている。これは、原子力災害発生時においては防護対策の実施期間を定めて求めた回避線量より、一定の期間を定めて求めた予測線量を防護対策指標と比較し、防護対策の実施を判断した方がより安全側の対応になるためである。


屋内退避及び避難等に関する指標には、ある幅を持たせることとした。この理由は、線量によってのみ防護対策は決定されるべきではなく、その対策の実現の可能性、実行することによって生ずる危険、影響する人口規模及び低減されることとなる線量等を考慮して決定されるべきであり、そのためには防護対策の実施に柔軟性が必要とされるからである。また、災害対策本部が行う周辺住民等の行動についての勧告又は指示は、ある地域的範囲を単位として与えられることが予想され、この地域的範囲の中で予測線量が場所によって異なることも指標に幅を持たせた理由である。

なお、屋内退避若しくはコンクリート屋内退避あるいは避難という防護対策を実際に適用する場合は、上記指標に応じて異常事態の規模、気象条件を配慮した上、ある範囲を定め、段階的に実施されることが必要である。また、放射性物質の放出前又は放出後直ちに、地域の実情や異常事態の態様及び今後の見通し等によっては、予防的に屋内退避あるいは避難等の対策を実施することも有効である。

(2) 安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策の指標


安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策の指標として、性別・年齢に関係なく全ての対象者(原則40歳未満。詳細については、付属資料12参照。)に対し一律に、放射性ヨウ素による小児甲状腺等価線量の予測線量100 mSvを提案する。この際、5-2-(4)のとおり、本防護対策の効果が限定的であり、屋内退避、避難等の他の防護対策を補完する対策であることを踏まえ、実施に当たっては、技術的観点、実効性、地域の実情を考慮し、他の防護対策とともに判断することが必要である。

(3) 飲食物の摂取制限に関する指標


飲食物摂取制限に関する放射性元素として、放射性プルームに起因するヨウ素、ウラン及びプルトニウムを選定するとともに、旧ソ連チェルノブイル事故時の経験を踏まえてセシウムを選定した。そして、これらの核種による被ばくを低減するとの観点から実測による放射性物質の濃度として表3のとおり飲食物摂取制限に関する指標を提案する。

なお、この指標は災害対策本部等が飲食物の摂取制限措置を講ずることが適切であるか否かの検討を開始するめやすを示すものである。

表3 飲食物摂取制限に関する指標
対 象 放 射 性 ヨ ウ 素
(混合核種の代表核種:131I)
飲 料 水 3×10Bq/kg 以上
牛乳・乳製品
野 菜 類
(根菜、芋類を除く。)
2×10Bq/kg 以上

対 象 放 射 性 セ シ ウ ム
飲 料 水 2×10Bq/kg 以上
牛乳・乳製品
野 菜 類 5×10Bq/kg 以上
穀 類
肉・卵・魚・その他

対 象 ウ ラ ン
飲 料 水 20Bq/kg 以上
牛乳・乳製品
野 菜 類 1×10Bq/kg 以上
穀 類
肉・卵・魚・その他

対 象 プルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種
( 238Pu、239Pu、240Pu、242Pu、
241Am、242Cm、243Cm、244Cm
の放射能濃度の合計)
飲 料 水 1Bq/kg 以上
牛乳・乳製品
野 菜 類 10Bq/kg 以上
穀 類
肉・卵・魚・その他


(注) 乳児用として市販される食品の摂取制限の指標としては、ウランについては20Bq/kgを、
プルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種については1Bq/kgを適用するものとする。
ただしこの基準は、調理され食事に供される形のものに適用されるものとする。

なお、上記の対象物中の放射能濃度の定量に当たっては、以下の文部科学省放射能測定法シリーズを参照することを提案する。

  • 放射性ヨウ素 :
    15「緊急時における放射性ヨウ素測定法」
  • 放射性セシウム:
    7「ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー」
    24「緊急時におけるガンマ線スペクトロメトリーのための試料前処理法」
    29「緊急時におけるガンマ線スペクトル解析法」
  • ウラン :
    14「ウラン分析法」
  • プルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種:
    12「プルトニウム分析法」
    21「アメリシウム分析法」
    22「プルトニウム・アメリシウム逐次分析法」
    28「環境試料中プルトニウム迅速分析法」
    30「環境試料中アメリシウム241、キュリウム迅速分析法」

また、上記濃度の算出についての考え方を付属資料14に示す。



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