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2-3 原子力施設における防災対策及び異常事態の把握

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2-3 原子力施設における防災対策及び異常事態の把握



原子力施設に対しては、炉規法、原災法等に基づき、種々の安全・防災対策が講じられる。

しかしながら、これらの安全・防災対策にもかかわらず、施設周辺に、放射性物質又は放射線の異常な放出が発生した場合、原子力事業者は、原子力災害の発生やその拡大の防止活動について、責任を持って実行しなければならない。このため、原子力事業者は、この施設内の対策及び施設外への協力体制も含めた原子力災害予防対策、緊急事態応急対策及び事後対策についての防災業務計画を策定し、従業員に対する教育と訓練を実施して、緊急時に適切に対処できるよう準備しておくことが必要である。特に、防災対策の適切な実施のために、異常事態に関する情報を、関係機関に迅速かつ正確に通報することは、原子力事業者の極めて重大な責務である。これに加えて、ある原子力施設において事故が生じた場合、日本原子力研究開発機構及びその他の原子力事業者は、その専門家・要員及び保有する原子力防災資機材等を動員して、防災対策に積極的に協力をするよう求められている。さらに、これらの者以外の原子力関係者等の自主的な協力を得ることも有効である。また、普段から緊急時に備え、原子力事業者、国、都道府県、市町村等の関係機関との間で、緊急事態応急対策拠点施設(以下「オフサイトセンター」という。2-8に記載。)において定期的に連絡会を開催することなどにより、緊密な連絡調整を図っておく必要がある。

(1) 防災対策上の異常事態の態様とその対応

原子力施設において、その施設周辺に、放射性物質又は放射線の異常な放出が瞬時に生ずることは、原子力施設におけるこれらに対しての閉じ込め機能等の安全対策があるため、ごく一部の事象を除いてほとんど考えられず、事前になんらかの先行的事象の発生やその検知があると考えられる。このような先行的事象は、原子力施設内の放射線モニタ等の設備により把握できるので、原子力事業者の適切な対応等によって、施設内の異常事態が、必ずしも直ちに周辺住民等に影響を与えるような事態に至る可能性は低いが、万一そのような事態になったとしても、これに至るまでにある程度の時間的経過があるものと考えられる。この時間的余裕を有効に利用して、万一の場合への種々の対策の準備ができるよう平常時から体制を整えておく必要がある。

一方、核燃料施設の臨界事故に伴う中性子線及びガンマ線あるいは火災、爆発等に伴うウラン、プルトニウム等の施設周辺への放出は、先行的事象から放出までの時間的な余裕が少ない場合も考えられるが、これらの事象の影響を及ぼす範囲は比較的狭い範囲に限定されると考えられるため、その範囲内で、具体的な対応策を準備しておけば、適切な対応が可能であると考えられる。

(2) 異常事態の把握の手段

原子力施設における施設内の異常事態や、施設外への放射性物質又は放射線の異常な放出が発生した場合には、その異常事態の拡大の防止及び災害応急対策の準備という面から、状況把握が重要となる。このため、原子力施設の特性を踏まえつつ、施設内の異常事態や施設外の放射線量を適切に把握するための測定器等を配置するとともに、監視体制を整備しておく必要がある。また、原子力事業者から異常事態の報告が迅速かつ正確に、国、地方公共団体等関係機関に行われなければならない。この際、施設の状況に関する情報に加え、必要となる内容は、第一に当該時点までの施設からの放射性物質の放出状況(量、組成、継続時間等)と敷地境界等における空間放射線量であり、第二に主要な地点における放射線量の推定と事態の今後の見通しである。

このような情報が緊急時に迅速かつ正確に伝えられるためには、あらかじめ通報連絡様式を定め、原子力施設においては様式の中の情報が迅速に得られるような措置を講じておく必要がある。



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