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2-2 放射性物質又は放射線の放出形態、被ばくの形態及び被ばく低減化措置

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2-2 放射性物質又は放射線の放出形態、被ばくの形態及び被ばく低減化措置



原子力防災に係る計画の立案あるいは充実を図るに当たって基本となる、原子力施設からの放射性物質又は放射線の放出形態、被ばくの形態及び被ばく低減化措置の考え方は以下のとおりである。

(1) 放射性物質又は放射線の放出形態

原子力施設からの放射性物質又は放射線の放出の形態は、施設の特性や事故の形態により異なるものであり、対象とするそれぞれの施設等に応じた原子力防災計画の立案が必要である。

[1]原子炉施設で想定される放出形態

原子炉施設においては、多重の物理的防護壁により施設からの直接の放射線はほとんど遮へいされ、また、固体状、液体状の放射性物質が広範囲に漏えいする可能性も低い。したがって、周辺環境に異常に放出され広域に影響を与える可能性の高い放射性物質としては、気体状のクリプトン、キセノン等の希ガス及び揮発性の放射性物質であるヨウ素を主に考慮すべきである。また、これらに付随して放射性物質がエアロゾル(気体中に浮遊する微粒子)として放出される可能性もあるが、その場合にも、上記、希ガス及び揮発性放射性物質の影響範囲への対策を充実しておけば、所要の対応ができるものと考えられる。

これらの放出された放射性物質は、プルーム(気体状あるいは粒子状の物質を含んだ空気の一団)となって風下方向に移動するが、移動距離が長くなるにしたがって、拡散により濃度は低くなる。

[2]核燃料施設で想定される放出形態

(イ) 火災、爆発等による核燃料物質の放出
核燃料施設(原子炉施設以外をいう。)においては、火災、爆発、漏えい等によって施設からウラン又はプルトニウム等がエアロゾルとして放出されることが考えられる。これらの放射性物質は上記[1]と同様にプルームとなって放出、拡散されるが、爆発等により、フィルタを通さずに放出され、量的には多いとみられる粗い粒子状のものは、気体状の物質に比べ早く沈降すると考えられる。また、フィルタを通して放出される場合には、気体状の物質とほぼ同様に振る舞うと考えられる。

(ロ) 臨界事故
臨界事故が発生した場合、核分裂反応によって生じた核分裂生成物の放出に加え、反応によって中性子線及びガンマ線が発生し、周囲に放出される。この場合、施設の遮へいが十分な箇所で発生した場合は放射線の影響は無視できるが、遮へいが十分でない場合は、施設から直接放出される中性子線及びガンマ線に対する防護が重要となる。

施設から直接放出される放射線は、施設内外の遮へい条件にもよるが、施設からの距離のほぼ2乗に反比例して減衰するため、その影響は近距離に限定される。核分裂反応によって生じた核分裂生成物の放出は、希ガス及びヨウ素を考慮すればよいが、その潜在的な総量は原子炉施設に比べ極めて少ない。

なお、核燃料施設から液体状の放射性物質の流出があったとしても、多数の障壁や大きな希釈効果によって、周辺環境に重大な影響を及ぼすような流出の可能性はほとんど考えられない。

(2) 被ばくの形態

施設から放出される放射性物質及び放射線による被ばくの形態は、大きく「外部被ばく」と「内部被ばく」に分けられる。

[1]外部被ばく

外部被ばくとは、体外から放射線を受ける場合の被ばくであり、主に原子力施設から直接放出される中性子線及びガンマ線並びに放射性プルームからのガンマ線によって生じる。

[2]内部被ばく

内部被ばくとは、吸入、経口摂取等によって体内に取り込んだ放射性物質が生体の各所に沈着し、体内組織(甲状腺、肺、骨、胃腸等)が放射線を受ける場合の被ばくであり、主に電離効果の高いアルファ線及びベータ線によって生じる。

(3) 被ばくの低減化措置

放射性プルームによる被ばくは、その放射性物質の濃度、放射線のエネルギー及び放射性プルームによる影響の継続時間に比例する。このため、放射性プルームによる被ばくを低減化する措置としては、気密性の高い場所への屋内退避、放射線の遮へい効果の高い場所への屋内退避及び放射性プルームに遭遇する場所からの避難が有効である。

この際、風向きを考慮し、風下軸からある幅を持った範囲の住民に対して措置を講じることが重要となる。また、これらの防護対策を補完するものとして、放射性ヨウ素の内部被ばくに対しては、安定ヨウ素剤を予防的に服用することが有効である。

核燃料施設における臨界事故等により原子力施設から直接放出される中性子線及びガンマ線については、距離による減衰や建家等の遮へい効果があり、原子力施設から遠ざかることや遮へい効果の高い場所への屋内退避により被ばくを大きく低減できる。なお、この場合、屋内退避に当たっては風向きを考慮する必要はない。

飲食物の経口摂取等による内部被ばくに対しては、飲食物中の放射性物質の濃度をモニタリングし、必要に応じて摂取制限や代替飲食物の供給等の対策を講じることが有効である。


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