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準備書面概要

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京都朝鮮第一初級学校、民事訴訟準備書面の概要



第1準備書面(損害論)の要旨

1 原告の第1準備書面では,被告らの過激な街宣活動により,原告がいかなる損害を被ったかを論じています。それぞれの街宣の際に授業が物理的に妨害されたのはもちろんですが,原告に与えた影響は,それにとどまりません。被告らの行為は,児童らの民族教育権に対する直接の攻撃であり、原告の教育事業に対し、今日に至るまで深刻な影響を及ぼしつづけています。今回の準備書面では、具体的な財産的損害の主張も行っていますが、ここでは原告の無形損害について述べたいと思います。

2 原告の無形損害を評価するためには、まず、民族教育の重要性についての理解が不可欠です。法律の観点からいえば、民族教育権や民族教育を実施する自由については、憲法26条13条のほか、世界人権宣言26条1項、社会権規約13条1項、子どもの権利条約28条1項など、国際人権条約によっても、手厚い法的保障のもとにあります。

とりわけ、1910年以降の日本による植民地支配を経験してきた在日朝鮮人にとっては、民族教育は特別の意味をもっています。奪われた言語・歴史・文化を回復し、在日朝鮮人の子らが、日本社会のなかでも堂々と誇りをもって育っていくために、本件学校をはじめとする朝鮮学校が実施する民族教育事業は、極めて重要な意義を有しています。

根強い差別意識が残る日本社会にあって、在日朝鮮人の子ども達が民族的アイデンティティと健全な自尊心を確立していくことは決して容易なことではありません。まず、差別攻撃に晒されず、また自分たちの民族性を発揮することを肯定的に受け止める学校環境が必要です。そして、一貫したカリキュラムのもと、日々の授業や課外活動を通して、長い時間をかけて少しずつ子どもの内面に民族性を浸透させ、人格の拠り所となる自尊心を形成していく。原告は、まさにこうした営みを学校法人の主たる目的に据えて、民族教育に取り組んできたものです。この事業は、教師、父母、
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卒業生、その他の支援者といった、多数の人々の努力、献身、情熱なくして成立しえないといってもよいほど、困難な事業でした。

3 被告らの行為は,むき出しの民族的憎悪を、人格も未成熟で内面も繊細な児童らにぶつけるものであり、子どもたちの恐怖、混乱の度合いは想像だにできません。何十時間、何百時間にも及ぶ授業や課外活動を施し、ようやく育ちつつあった民族的自尊心や自己肯定感も、被告らのような常軌を逸した憎悪と嘲笑に晒されれば、一瞬で消失しかねません。この意味で、被告らの行為は、原告が、これまで子ども達の教育に惜しみなくつぎ込んできた莫大な努力を無に帰せしめかねない許し難い行為であります。

また、子どもたちの恐怖心――この恐怖心は本件に関していえば、自らの民族性のために憎悪・攻撃の対象となるという自覚を伴ってしまいますから――この恐怖心が残存している間は、民族的自尊心を育んでいくことは極めて困難となってしまいます。原告の無形損害という文脈に置き換えていうのであれば、継続的にかつ深刻な態様で、原告の最も重要な事業目的であり、法的にも手厚い保護のもとにある民族教育の実施が、阻害されつづけることになります。

4 あろうことか、被告らは,自らの不法行為の様子をインターネットの動画配信サイトにアップロードし,広範囲かつ不可逆的に,事実無根の誹謗中傷を広めています。これは、伝播性を高めて日本社会の差別意識を広く扇動している点で、本件学校児童らの恐怖・混乱を深め、かつ、持続させる効果ももたらし、原告の事業に対する阻害の度合いをより深刻なものにしているといえます。

こうした被告らの行為が、本件学校の社会的評価ないし名誉を著しく毀損しており、これが原告の無形損害となることは言うまでもありません。本件学校が,長年、日本社会に根付く差別意識や,日本政府からの直接の排斥,弾圧,敵視に屈することなく,地道に教育事業の成果を積み上げ,
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他方で、地域の日本社会と交流するなどして,並々ならぬ努力で築きあげてきた高い社会的評価。被告らの行為は、こうした努力を一顧だにせず、事実無根の誹謗中傷を拡散し、原告の名誉を大きく毀損したのです。

5 このような被害の深刻さに照らすと,被告らの行為が原告に対し莫大な無形損害を生ぜしめていることは明らかです。社会正義の観点からしても、高額の損害賠償が認められなければならないのです。

第2準備書面(人種差別)の要旨

被告らの行為は、朝鮮人に対する人種差別です。

人種差別撤廃条約を批准した日本は、適切な全ての方法により、人種差別を禁止し終了させる義務を負っています。条約4条は、人種差別行為のうちでも特に、差別を扇動する活動を犯罪として処罰すべきと定めています。それは、差別を扇動する行為が最も悪質で、被害も深刻で、社会にとっても危険だからです。さらに条約6条は、裁判所等を通じて被害者が効果的な保護と賠償を求める権利を定めています。

本件はまさに、被告らが朝鮮人に対する人種的憎悪に基づき、組織的に街宣活動を繰り返し、しかもそれをインターネット等で全国に広めている事件であり、人種差別行為の中でも最も悪質な部類に入るものです。したがって、被告らの行為を禁圧する必要性が非常に高く、被害者に対し速やかに効果的な保護を与える必要性の高い事案です。

被告在特会及び主権回復は、本件後も一切の謝罪反省を行わず、原告を始めとする朝鮮学校攻撃を続けており、折しも今週末12月4日には、一周年と称して各地でさらなる街宣を予告しています。すなわち、2回の仮処分、2回の間接強制、逮捕、起訴によっても、被告らの人種差別行為を終了させることはできなかったものです。したがって、被害者に対する効果的な保護と救済を実現するためには、本件訴訟で、請求の趣旨に掲げた程度の賠償金支払いを命じることが、最低限必要です。
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第3準備書面の要旨

1 在特会をはじめとする被告らは、本件の過激な街宣活動にあたり、原告が都市公園法に反して、勧進橋公園を長期間に亘って不法に占拠してきたと主張しています。現に第一初級学校の当時の校長は、検察に略式起訴され、刑罰を受けています。

このような点のみに着目すると、原告側にも相当の非があったかのような誤解を生じかねません。

当時の校長は異常に長時間の取り調べを受け、検事に「略式起訴に協力してくれなかったら、校長や原告をどうとでもできる」などと言われました。このため、今後の学校業務への支障を懸念し、学校側と相談の上、検事の略式起訴を争うことなく刑罰に服したものです。

しかし、第一初級学校と勧進橋公園の正確な歴史的経緯を紐解けば、勧進橋公園の使用について原告に相当の非があったとまではいえないことがわかります。

すなわち、第一初級学校は、1963年の京都市と地元自治連合会との協定に基づいて勧進橋公園を使用してきたものであり、平成21年7月10日に京都市から公園内のサッカーゴール等の撤去を持ちかけられたのに対し、「平成22年1月末まではサッカーゴール等を公園に設置しておいても構わない。ただし、同月末時にはこれを撤去する」という内容で承諾を得て、これに基づきサッカーゴール等を公園内に設置していたものです。

2 このような経緯からすると、原告弁護団としては、原告が勧進橋公園にサッカーゴールを設置していたことが、相当の非難に値するとは到底思われず、そもそも第一初級学校の元校長の有罪すらも疑わしいと考えます。

3 第3準備書面は以上のような事情について、詳しく述べています。

第4準備書面・骨子

第4準備書面は、被告中嶋に対する求釈明と、被告らの一部が12月4日の事件及び徳島での同種事件で逮捕起訴されたことを記載したものです。


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