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尖閣沖漁船衝突事件について(その六)2010/12/05

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尖閣沖漁船衝突事件について(その六)2010/12/05

2010/12/05
河内謙策


 河内謙策と申します。(この情報を重複して受け取られた方は、失礼をお許しください。転送・転載は自由です。)

 今年9月に発生した尖閣沖漁船衝突事件に関連したニュースや私の見解を「尖閣沖漁船衝突事件について」~「尖閣沖漁船衝突事件について(その五)」として発信させていただきましたが、この間、私のPCがダウンしたため休まざるをえませんでした。御迷惑をかけた方々に深くお詫び申し上げます。

 本日は、私がこの間考えていたことを3点指摘し、問題提起とさせていただきたいと思います。

 私がこの間考えていたことの第一は、「尖閣沖漁船衝突事件は未だ終わっていない」ということです。

 たしかに、尖閣沖周辺の日本領海からは中国漁船は去りましたが、中国の監視船はやってきていますし、準軍艦ともいうべき「魚政310」もやってきました。テレビに同準軍艦に搭乗していた中国人民解放軍の軍服姿が写しだされ、同準軍艦が「来たい時にまた来る」というメッセージを残していったことは、忘れてはならないことだと思います。

 また、来年6月17日にはアメリカの反日活動家らが1000隻の中国船で尖閣諸島を包囲し、上陸するという「千船保?」計画も発表されています。

 さらに、今回の「尖閣沖漁船衝突事件」は偶然の事件ではありません。この漁船自体が中国人民解放軍とどういう関係にあるかについては未だ不明の点はありますが、1980年代以来の中国海軍の戦略転換、21世紀に入ってからの中国の覇権主義戦略の採用・東アジアにおける中国の覇権確立の動きと密接な関連にあることは、もはや明白になっています。そうであれば、「尖閣沖漁船衝突事件」と同様な事件が将来においても繰り返される可能性が大であるとみるのが当然ではないでしょうか。

 ところが、平和主義者や左翼の一部の尖閣沖漁船衝突事件の発言は、なぜかこれらの事実に目をふさぎ、日本のマスコミの「沈静化」報道に呼応しつつあるかのようにさえ見えるのです。

 私の考えていたことの第二は、日本の平和主義者や左翼の一部の尖閣沖漁船衝突事件の発言は、あまりにも評論家的で、国民や平和運動に対し何を訴えるのか不明確であるということです。

 日本の平和主義者や左翼が中国問題にたいし及び腰で、21世紀に入ってほとんど発言らしい発言をしてこなかったというのは、周知のことです。私に言わせると、2005年の反日デモ事件、2007年中国毒餃子事件、2008年チベット事件、2009年ウィグル事件、2009年劉暁波事件、ほとんどの日本の平和主義者と左翼が沈黙を守ってきました。言わば「5連敗」しかも「不戦敗」の「5連敗」でした。それだけに、「足元に火がついたのだから、今回は違うだろう」という期待が私にはありました。たしかに、これまでと違って、若干の活発な発言がありました。しかし、政党の話を別にすれば、日本の平和主義者や左翼の発言の多くは、自己の過去の誤りは棚上げにし、さまざまなきれいな分析をならべるだけの評論家的発言で、日本の国民や平和運動のあり方に発言が及んでいません。これは私の予想外の出来事でした。

 日本は、戦後60年余アメリカの属国でしたが、今度は中国が日本を中国の属国にしようとしています。これをやめさせて日本の独立を守り抜くためには、中国の覇権主義に反対する巨大な国民運動をつくりあげあければならないと思います。それが今なのだと思います。中国の覇権主義に反対する巨大な国民運動なくして中国の覇権主義の手を逃れることができると考える人は、空想的な平和主義者でしょう。かつて丸山真男がサンフランシスコ条約や安保条約に反対することを日本国民に呼びかけたように、日本の平和主義者・左翼・知識人は、日本の国民に対し、中国の覇権主義に反対する巨大な国民運動を作り上げることを呼びかけるべきではないでしょうか。

 私の考えていた第三は、尖閣問題を平和的政治的に解決せよ、尖閣諸島及びその周辺への自衛隊の配備反対、憲法9条を守れ、の声をもっと大きくしなければいけないということです。

 私は、このことを強く訴えているつもりですが、ネットで見る限り、新防衛大綱に反対する方々の御努力を別にすると、その声は大きくありません。

 国家基本問題研究所の「中国人船長釈放に関する緊急提言」は明確に尖閣諸島及びその周辺に自衛隊を配備することを主張しています。
http://jinf.jp/suggestion/archives/3608

 また、西部邁が『正論』12月号で「核武装以外に独立の方途なし」でそのことを主張するなど、「保守」の論客がますます声高に主張しています。小林よしのりも「国防論」を『SAPIO』に連載し始めています。最近では、徳間書店から『ニッポン自衛隊、中国軍と戦わば』が『週刊アサヒ芸能増刊』として刊行されています。

 それなのに、日本の平和運動は、それを大きく問題にしないのです。闘わないのです。憲法学者も沈黙を守っているのです。どうしてでしょうか。

 なお、私が、これまでに主張してきたように、情勢の新しい展開の中では、新しい運動と新しい論理が必要です。今までのように“憲法9条に違反する事実がこれだけある”という訴え方では、憲法9条を支持していない人の心には響きません。まして、憲法9条というだけではやはり駄目なのではないかという疑問を多くの人が持ち始めている状況では、なぜ自衛隊の配備がいけないのか、自衛隊の配備に代わるどういう方法が有効なのか、というところから丁寧に説き起こした論理がなければ「保守」の論理に勝つことはできません。

 そして、この尖閣諸島への自衛隊配備をめぐる闘いに平和勢力が勝たなければ、憲法9条をめぐる国民投票で平和勢力が勝利することは、ほぼ絶望的でしょう。

 だから私は、「ここがロドスだ、ここで飛べ!」と主張しているのです。


以上

河内謙策 〒112-0012 東京都文京区大塚5-6-15-401 保田・河内法律事務所(電話03-5978-3784,FAX03-5978-3706)
Email:kenkawauchi@nifty.com


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