15年戦争資料 @wiki

新安保防衛懇報告 はじめに

最終更新:

pipopipo555jp

- view
管理者のみ編集可
新安保防衛懇報告(要約) 目次 第一章  安全保障戦略

新たな時代における日本の安全保障と防衛力の将来構想
―「平和創造国家」を目指して―

はじめに


いかなる国家にとってもその安全は最も基本的な価値である。国の安全なくして国民の独立も繁栄も福祉もありえない。一方、日本をめぐる安全保障環境は、世界的にも地域的にも、まさに歴史的と言えるほどに変容しつつあり、安全保障はますます大きな課題となりつつある。冷戦終結以降、世界は地域紛争、破綻国家、大量破壊兵器の拡散、テロ、海賊など、冷戦の時代以上に多様な安全保障上の課題に直面し、日本もそうした課題に対応するべく努力してきた。しかし、これからの世界の変化、とりわけ新興国の台頭によるパワーバランスの世界的、地域的変化を考えれば、日本をめぐる安全保障環境は重要な変動期に入ったと言える。

本懇談会は、こうした安全保障環境の変化に鑑み、日本の安全保障政策と防衛政策をタブーなく再検討し、継承すべきは継承し、見直すべきは見直すことを試みた。それが「新たな時代における」日本の安全保障と防衛力について構想することを求められた本懇談会の使命であると考えたからである。

日本は、第二次世界大戦後、防衛については基本的に抑制的な姿勢を維持しつつ、米国との同盟によってその安全を確保する政策をとってきた。日本が60年以上にわたって享受してきた平和と安全と繁栄はこの政策によるところが大きい。またこの政策は、アジア太平洋地域のパワーバランスを維持することを通じ、地域と世界の安定にも大きな意義を持つものであった。日本はこれからも基本的にこの政策を継承していくべきである。

しかし、これは、日本の安全保障政策と防衛政策を見直す必要が全くないということではない。冷戦終結以降、政府が安全保障政策、防衛政策を適時、見直してきたことは評価できるものの、体制整備は十分と言えず、日本の安全保障政策と防衛政策はなお受動的で事態対応型の体質を残している。本懇談会としては、日本はもっと能動的に世界の平和と安定のために貢献すべきであり、そしてそれが日本の平和と繁栄を維持する最善の道だと考える。

本報告書はこうした問題意識に立って日本の安全保障および防衛戦略を提示する。その基本的な方向は、日本が自国の平和と安全を守り繁栄を維持するという基本目標を実現しつつ、地域と世界の平和と安全に貢献する国であることをめざすべきだ、というものである。あるいは別の言い方をすれば、日本が受動的な平和国家から能動的な「平和創造国家」へと成長することを提唱する。日本は創意と工夫によって、国際安全保障において、今後大きな積極的役割を果たすことができるはずである。

この目標達成のためには、日本はその持てる様々な手段を活用する必要があるが、特に防衛力は他では代替不可能な重要な役割を担っている。2004年制定の現行の防衛計画の大綱(16大綱)は、時代の変化に合わせた見直しを謳っており、実際、本懇談会は、日本が整備すべき防衛力の体制にまで踏み込んだ検討を行った。そして、本報告書は、冷戦期に提唱され、冷戦終結後も継承されてきた「基盤的防衛力整備」の考え方を見直し、多様な事態が複合的に生起する「複合事態」への対応を念頭に置いた防衛力の整備を提言した。

新しい時代の安全保障と防衛戦略はそれを支える基盤を必要とする。したがって、本報告書では、防衛力を支える基盤と安全保障戦略を支える基盤についてもこれまでのあり方を見直し、その充実を提言した。これからの日本にとってその持てる資源を有効に活用し、同盟関係・友好関係を活用して、その安全保障を確保することは決定的に重要であり、そのためにはこれまでの政策で合理性を欠くところがあれば、それは改められなければならない。

日本はいま歴史の大きな転換点にある。2009年9月の政権交代は、国民がそれを理解し、新しい日本のかたちを求めていることを示すものであろう。いうまでもなく、安全保障は日本の死活的国益であり、本懇談会としては、政権交代があったからといって、その安全保障政策、防衛政策を軽々に見直すべきとは考えない。しかし、これは国民がこれまでの政策の不合理なところを見直す絶好の機会でもある。日本の直面する安全保障環境は、これからますます大きく変容していく。そうした中、日本が世界の平和と安定に貢献する国として生きていくために、政府が、これまでの安全保障政策、防衛政策のよいところを継承、発展させる一方、冷戦時代の遺産にとらわれることなく、未来を直視し、果敢に能動的に取り組んでいくことを大いに期待したい。


(要約) 目次 第一章  安全保障戦略

目安箱バナー