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「融解する日本の安全保障政策」

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2010.11.27.九条の会事務局主催学習会
「新安保防衛懇報告と憲法9条」レジュメ

「融解する日本の安全保障政策」

半田滋


(はじめに)


民主党政権発足から1年。迷走した昔天間移設問題に代表されるように民主党の安全保障政策は足元が定まっていない。鳩山前首相は「官僚主導からの脱却」を目指したはずだが、交代した菅首相は日本の行方を官僚の舵取りに任せている。

9月の民主党代表選で菅首相が続投した結果、自民党政権と何ら変わりない安全保障政策が続くことになった。最大の注目点である普天間問題に関心を示さず、放置しているに等しい。しかし、政権が安定してくれぱ、「改憲論者=民主党の有カ者」なので平和憲法を見直す動きが必ず出てくる。

(トピツク)
  • 様変わりした与那国島の陸上自衛隊誘致・・・反対派町議2人誕生(全6人のうち)
  • あす投票の沖縄知事選挙・・・県議会、名護市長、名護市議会も辺野古移設反対。残るのは知事のみ。


1 安全保障政策はどう変わったか


(1)変化したこと

[1]今年1月の新テロ特措法の期限切れを受けて、インド洋の洋上補給から撤退
[2]普天間移設先を「国外、県外」を打ち出した。5月28日の日米共同声明で元通り
[3]「防衛省改革」を振り出しに戻した。制服組と背広組を混合させない方向。

(2)変化しないこと

[1]米軍再編を2006年ロードマップ通りに実施。「対等な日米関係」は雲散霧消
[2]ミサイル防衛システムの導入推進
[3]ソマリア沖の海賊対処に自衛隊活用

(総論)

意思決定システムは大きく変化した。鳩山首相は「官僚主導からの脱却」をスローガンに政策調査会を廃止して、政策会議を設置した。与党であれば、だれでも参加できる会議で、防衛省主催の政策会議は隔週で実施され、政務三役のうち、北沢俊美防衛相を除く3人が説明役になった。しかし「素人が素人に答える場」となったに過きず、防衛政策に反映できる中身のある議論はほとんどなかった。

菅首相に代わると、政調が復活したものの、自民党政調と異なり、もとより党内への影響カのない政調では何もできない。防衛政策については、政策会議が消え、政調がほとんど開かれないため、党内の声を聴く場さえ消えた。政務三役にすべての権限が任されるかたちになった。その政務三役も素人のため、実態は官僚主導に逆戻りしている。

菅政権に代わり、政調を復活したが、極めて低調。党内の安保論議はゼロに等しいのに「大綱」提言が突然、新聞報道された。


2 菅政権下での安全保障政策


(1)普天間問題に代表される自民党政権と変わりない政策

(2)より積極的な自衛隊の海外派遣を検討(仙石官房長官によるスーダンPKO検討)

(3)11年度防衛費概算要求からみえる自民党政権との類似点
  • 4兆7123億円は前年比O.6%の増加。自民党政権では7年連続、鳩山政権を含めると8年連続減少。政権の10%削減の号令を無視して増加に転じている。
  • 購入する武器類は過去と変わりなく、民主党らしさが見えない。.
  • PAC3を沖縄に初めて配備。手厚い米軍支援を実現
  • 米軍再編には惜しみなくカネを注ぐ

(4)新安防懇が報告書を提出。自民党政権当時の報告書より踏み込んだ内容。報告書によると、非核3原則見直し、集団的自衛権の解釈見直しなど、「平和国家」の基礎を揺るがせる内容が満載されている。管政権が12月までに策定する「防衛計画の大綱」にどこまで盛りこまれるかは未知数だが、武器輸出3原則は見直し方向

(5)民主党外交・安全保障調査会が「大綱見直しに関する提言」(11月26日版)
 [1]動的抑止カの向上と南西方面の危機への対処
 [2]人的基盤、実行力のある精強な防衛カ構築
 [3]装備品の戦略的整備と武器輸出三原則見直しの明確化
 [4]国際平和協カ活動への積極的な取り組み
 [5]安全保障・危機管理における艦艇機能の強化およびインテリジェンス態勢の充実、政治主導の安全保障体制構築へ向けて
  • 南西重視の動的抑止。機動性を重視して戦車、大砲削減=陸自削減。
  • PKO5原則の見直し。破綻国家対応で停戦合意、派遣同意、中立性を無視して国連の要請に一本化。

(トピツク)
武器輸出3原則
  • F35は国際共同開発といえるのか
  • 次期戦闘機の開発計画はない
  • 分かりにくい民主党提言。「装備品を輸出する場合、平和構築や人道目的に限定」
  • 前提になっているPKOでの輸出基準は緩和済
  • 失うものの大きさとの比較

PKO5原則
  • 中立性を排除。平和執行部隊への参加を意味
  • 後方支援に限定しても武カ行使と一体化するから偏向した活動

(6)アフガニスタンに医療指導部隊を派遣検討
  • 防衛省設置法4条の「教育訓練及び研究を行うこと」とする方針。2008年以降、同じ規定に基づきアフリカのPKOセンターに陸自派遣を前例。
  • 非戦闘地域と戦闘地域の違いを無視
  • 自衛隊を「法の支配」から外すのと同然の検討
  • シビリアンコントロールの強化を目指しながら、逆に招く弱休化


3 米軍再編の現状


(1)迷走する普天間問題

(2)空母艦載機部隊の岩国基地移転問題

(3)キャンプ座間に来ないことになった第1軍団。矛盾するグアム移転

(4)第5空軍の空疎化


4 揺らぐ日米の安全保障関係


(1)普天間見直しの可能性が薄れた

(2)今年11月の沖縄知事選挙が終わっても何も決めない

(3)政府と沖縄の温度差が広がれぱ、日米関係が変化


5 民主党政権が続けば、いずれは憲法改定へ


(1)民主党は1999年に置いた憲法調査会で「創憲」を提唱

(2)菅氏は「イラクに自衛隊を派遣しないと日本の平和が維持できないなら、憲法改正を提起するのが筋ではないか」(04年1月21日、衆院本会議で代表質問)、「自衛隊は軍隊」とも発言

(3)小沢氏は1999年に「日本国憲法改正試案」を発表。戦カの保持、国連常備軍の創設、天皇元首制を主張。鳩山前首相はかねてよりの改憲論者

(4)民主党政権が長期化すれば、5月18日施行の国民投票法を活用し、衆参国会議員3分の2の発議で憲法改定を発議。国民投票実施が可能になる。

(5)ブレーキ役として不可欠な社民党の与党復帰

以上

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