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武器輸出三原則 見直し議論大詰め

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東京新聞11/25「こちら特報部」

武器輸出三原則 見直し議論大詰め



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平和主義に風穴も 「自民でも慎重だったのに」


朝鮮半島で戦火が上がった翌日、民主党内では新防衛大綱策定に向けた「武器輸出三原則」の見直しをめぐる大詰めの議論が交わされた。周辺地域の緊張ば国防増強論をあおりがち。それだけに見直し反対の護憲・リベラル勢力にとっては悩ましい情勢だ。思えば、沖縄・普天問題でも、三月の韓国哨戒艦沈没事件が県内移転方針への政府の「Uターン」を助けた。今回はどう影響するのが。(出田阿生、加藤裕治、秦淳哉)

◆民主調査会


 「時あたかも、北朝鮮がとんでもない挑発をした。さりながら一つの事象に引っ張られることなく、中長期的な眺望でじっくりと議論したい」

 衆院第二議員会館で二十四日に開かれた民主党の外交・安全保障調査会・総会の冒頭。会長の中川正春衆院議員は五十人を超す同党の国会議員を前にこうあいさつした。

 政府は年内に新たな防衛大綱の策定を目指している。焦点は防衛省が求めている「武器輸出三原則の見直し」を盛り込むかどうか。政府が参考にするのは、この調査会の提言と、首相の私的諮問機関「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」の報告書だ。

 すでに懇談会は見直し要望の報告書を出した。見直しにブレーキをかけ一られるのは調査会の提言だけ。だが、役員間の話し合いで三原則「緩和」を柱とする見直し案が作成されたと報じられ、これに党内の護憲・リベラル勢力が強く反発。この日の総会を迎えた。

 護憲・リベラル勢力の議員たちは懸念を口々に語る。「これまで非核三原則とともに日本の平和主義を支えてきた武器輸出三原則が緩和されれば、風穴が開き、どんどん拡大解釈されていきかねない」(那谷屋正義参院議員)、「東アジア共同体構想からも大きく逸脱するのではないか」(今野東参院議員)。

 今回の朝鮮半島での緊張についても「防衛力を高めるには三原則見直しが必要、という雰囲気づくりにつながるかもしれない」という危機感が同勢力には漂っている。

 見直しのポイントは他国と武器を共同開発・生産を可能にすること。巨額の開発費が必要な戦闘機は国際共同開発が世界の潮流。防衛省は「共同開発が可能になれば、武器の調違コストを下げられるし、優先的に取得できる」と強調する。

 しかし、輸出管理が厳格な国に限って共同開発するとしても第三国の輸出をどれだけ制限できるのか不透明。結果的に「死の商人」になってしまう可能性は否定できない。さらに国際協力活動で、対象国に輸送用トラックなど自衛隊の装備品することを可能にする「緩和」項目もあるが、そもそも国際協力活動と紛争介入との線引きは難しく、紛争介入となる危険は消せない。

 ある中堅議員は「歴代の自民党政権ですら、戦中派のベテランたちが三原則の見直し慎重で、露骨に緩和しようとはしなかった。それなのになぜ民主党政権が‥‥」と表情を曇らせた。


武器輸出三原則

1967年、佐藤栄作首相(当時)が国会答弁で(1)共産圏諸国(2)国連決議で禁止された国(3)国際紛争当事国----に対する武器輸出を認めないと表明し、政府方針とした。76年には三木武夫首相(同)が対象地域を拡大。だが、83年に米国への武器技術供与が例外扱いとされ、2004年にも例外対象にミサイル防衛(MD)の日米共同開発・生産が加えられた。

デスクメモ

絶対視される血筋があり、「解放」の大義を掲げ、外部からの情報を狭め、明らかに兵たん面からはむちゃな戦争を、自国民の痛みは顧みず、逆に頭のてっぺんからつま先まで敢闘精神で武装せよと鼓舞し、遂行する。大義のお題目こそ違えどかつてどこかで闇いたような話。北朝鮮は遠くて近い国だ。


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北砲撃で加速懸念 「普天間も脅威論で転換」


◆反対集会


 民主党の調査会が開かれる直前、隣の衆議院第一議員会館では武器輸出三原則の見直しに反対する市民たちの集会があった。集まったのは護憲や反戦を訴える人など百数十人。菅政権の防衛政策を批判する言葉に時折、拍手がわいていた。

 「憲法を生かす会」の筑紫建彦さんは「朝鮮半島での衝突は三原則とは関係ない」と前置きした上で「衝突は自衛隊の配備見直しや先制攻撃を認めようとする動きに利用されかねない」と語る。

 女性参加者の一人は「韓国の哨戒艦沈没事件で北朝鮮の脅威があおられて、沖縄の普天間飛行場を辺野古沖へU夕ーンさせる流れができた。今度も北朝鮮は怖いという印象で世論誘導が図られるのでは」と、三原則緩和への影響を心配する。

 「許すな! 憲法改悪・市民連絡会」の土井登美江さんは今年十月、都内で通りがかりの人々に辺野古移設についての賛否を問う催しを企画した。

 その結果は「以前より辺野古移設に賛成する人たちか増えた。九月の尖閣諸島沖での漁船衝突事件による影響だと思う。軍事的な緊張は人々を不安にさせる。三原則緩和に反対する動きへの逆風になりかねない」と不安を隠さなかった。

 「憲法の平和主義を具体的な行動に変えなくてはならない。でも、何をすればいいか、まだ考えはまとまっていない」

 「核とミサイル防衛にNO!キャンペーン」の杉原浩司さんも「軍事衝突はほっておくと軍備増強の流れにつながっていく」と指摘。「しかし、外交や安全保障は本来、いかに対立を終わらせるかという観点から考えるべきもの」と訴えた。

「多国間開発が現実」「安保強化とは別物」


◆識者は


 識者たちはこの朝鮮半島情勢と武器輸出三原則の見直しがどう絡むとみているのだろうか。

 防衛庁(当時)防衛研究所の元研究員で桜美林大国際学研究所の加藤朗所長(国際紛争)は「長期的な視点からみるべき三原則の見直しと今回の武力衝突は切り離して考えた方がよい」と話す。

 加藤氏は「地雷探知機のカンポジア配置が可能になった例もあった。三原則は時代の要請と政治状況によって常に見直されてきた」と、見直しには賛成の立場だ。

 「多くの国が兵器の生産にかかわり相互依存関係になれば、関係国間での戦争は実質的に不可能で、逆に抑止力を高めることになる。実際、兵器すべてを自国製造することはできない。戦闘機のパーツが何カ国もの製品からなるように三原則は有名無実化している」

 一方、元外務省国際情報局長の孫崎享氏は見直し反対を訴える。「今回の北朝鮮の砲撃事件で三原則緩和に向けた圧力は強まるかも知れない」

 しかし、三原則見直し問題と安全保障体制の強化はあくまで分けて考えるべきだと主張する。

 「イラク戦争が間違いだったと分かり、アフガン戦争についてもオバマ米大統領は現在、撤退したがってる。これが世界の潮流だ。そうした中で、武器輸出は国際貢献にはならない」

 孫崎氏は「三原則見直しの動きはむしろ、国内防衛産業からの圧力が主な要因だろう。日本経済を強くすることは必要でも、武器輸出に加担してまで発展させるべきだとは思えない」という。

 「米国からの圧力も指摘されるが、少なくとも私の耳には、拒めば日米関係がこじれるという米国側の要人の声は届いていない。見直しを急ぐ調査会の説明のどこにも説得力は感じられない」


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