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尖閣沖漁船衝突事件について 河内謙策 2010/09/27

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pipopipo555jp

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尖閣沖漁船衝突事件について 河内謙策 2010/09/27


 河内謙策と申します。私は、現在大きな問題になっている、尖閣沖漁船衝突事件についての私見を述べ、平和を愛する人々に問題を提起させていただきたいと思います。(この情報を重複して受け取られた方は失礼をお許し下さい。転送・転載は自由です。)

 尖閣沖漁船衝突事件については、論じなければならない論点は多数ありますが、真相はなにか、中国の意図は何か、菅内閣の態度をどうみるか、日本の平和活動家のとるべき態度はなにか、の4点にしぼって論じることにしたいと思います。


 今回の事件の真相については、不明の点も多数ありますが、現在判明している点を基礎に推論することが大事と思います。推論に推論を積み重ねることは面白いけれど危険です。

 この見地からみると、尖閣諸島は日本の領土か、ということがまず問題になります。私は、日本の領土と思います。その根拠は、以下のサイトに掲載されている内容が基本的に正しいと私は信じるからです。
 http://www.geocities.jp/tanaka_kunitaka/senkaku/1home.html ※1

最近の以下の論文も分かりやすいです。
高花豊※2「中・台の資料が示す「尖閣日本領」の証拠」『WiLL』2010年11月号

中国の主張は以下のサイトで分かりますが、極めて貧弱です。
 http://j.people.com.cn/94689/94696/7142418.html ※3

なお、日本の政府も、中国政府も、その声明において、領土・領海を問題にしています。一部の論者のいう「トウ小平以来の日中の了解」は問題になっていません。

 次に、不法操業していた中国の漁船が日本の巡視船に衝突したのかどうかが問題になります。これは、衝突時のビデオが公開されないとはっきりしない点がありますが、現在公開されている写真をみるかぎり、中国の漁船が故意に日本の巡視船に衝突した、というのが正しいと思います。以下のサイトに掲載されている写真を見て下さい。
 http://dogma.at.webry.info/201009/article_7.html ※4

以上より、日本の領海で不法操業した中国の漁船船長の公務執行妨害罪の成立は間違いないと思います。

次に、では、なぜ中国が大騒ぎをし、この事件を拡大し、日本に対し「力の外交」を展開しているのかが問題になります。

中国が、はじめからこのような事件が発生することを予期して漁船を送り込んだのかどうかは分かりません。しかし、中国のやりかた・言動を見ていると、明らかに中国はこの事件を利用して、アジアで一番偉いのは俺だ、という帝国主義外交を展開し、一挙に北東アジアの覇権確立を意図しているとしか言いようがありません。

 2010年9月28日付『夕刊フジ』は、9月8日に北京で「対日工作会議」が開催され、この中では軍事衝突は避けられないという発言も出た、とスクープしています。これは十分に有りうる話だと思います。※5

 中国がこのように強硬な態度にでる背景には、米中の経済面・軍事面での対立の激化があります。私は、中国問題は日本と中国だけを見ていたのでは分からない、と言いたいのです。とくに上海バブルの崩壊が真近で、人民元の大幅切り上げ問題により発生する中国民衆の不満を日本にぶつけるという狙いを、私は重視すべきと思います。
 http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/220918.htm ※6

 もう1点は、中国共産党内の指導権争いが、背景にあるということです。

これは、予想以上に深刻で、私たち日本人の想像を超えます。政権の中で、「比較的」穏健な温家宝が嘆いているという以下の記事はその一端を示していると思います。日本に対し弱腰の態度をとれば、指導権争いから脱落することになるのです。
http://www.epochtimes.jp/jp/2010/09/html/d90519.html ※7

 このような中国の日本攻撃に対し、菅内閣の態度はまことに方向が定まらない情けない態度であることは言うまでもありません。国技館では「売国奴」という野次が出たと報道されています。

 私は、菅内閣の「弱腰」の原因には、中国という国が如何に力の外交を展開する国になったかということについての認識の不足と国際政治の論理に対する無理解があると思います。中国は1990年代までの中国とは異なっているのです。特に今は、日本をGNPで追い越し、おごりたがぶっているのです。また、菅首相は「中国の謝罪と賠償の要求には応じられない」とは言いましたが、「中国の謝罪と賠償の要求は誠に不当な国際法にも違反したものであり抗議する」とは言いませんでした。今日も仙石官房長官は「中国との戦略的互恵関係を、あらためて充実させ豊かにする作業に入る段階だ」と述べました。けんかの途中でけんかが終わった後の夢を語ると、外国では馬鹿にされるということが何故分からないのでしょうか。日本の物事をあいまいにし、対立を避ける「政治文化」は国際政治では通用しないのです。

 もっとも、菅内閣を弱腰だと批判するだけでは不十分と思います。日本の支配勢力も馬鹿ではありませんから、今回の事態を利用して「だから中国に対する防衛力を強化しなければ」とか「だから、日米同盟でアメリカの力を借りなければ」というキャンペーンが今後強まるでしょう。したがって平和勢力は、政府の弱腰を批判するだけでなしに、どのような方向で事態を打開すべきか、積極策の提示が求められると思います。積極策の内容としては、中国の横暴を抑える国際的な連携・包囲網の形成、中国の自由と民主主義を求める勢力に対する支援と連帯こそが究極の中国問題の解決であることを訴えるべきだと私は考えています。

 日本の平和活動家のとるべき態度について私の言いたいことは、今こそ過去の誤りを反省し、中国に対する幻想を捨て、アメリカにも中国にも毅然とした平和国家の創造をめざすことを明確にすべきではないか、ということです。

 日本の平和運動は中国にたいする軽視や甘い態度に基づき、中国の横暴や人権侵害に抗議の声を挙げてきませんでした。たとえば、最近では2008年のチベット問題に沈黙を決め込み、心ある人の顰蹙を買いました。今回の事件は、このような日本の平和運動のあり方は過去のものにしなければならないし、そうしなければ日本の平和運動は日本の国民に完全に見放されることになることを警告していると思います。

 最近、酒井亨※8『「親日」台湾の幻想―現地で見聞きした真の日本観』(扶桑社新書)が出版されました。酒井氏議論には賛成できない点もありますが、日本の平和が世界でいかに評価されているか、世界の人が中国をどう見てみているか、という点につき、極めて教えられることの多い内容が豊富に書かれています。日本の平和活動家に一読をお勧めします。そして、ぜひ皆で議論し、知恵をだしあい、日本の平和運動を新しい方向に向けて前進させていきましょう。
                          (2010/09/27 記)


【転載者注記】

※1 河内さんは筆者が誰かを明記してませんが、田中邦貴氏。

※2 高花豊氏は警備会社(株)テイケイ会長http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%A4%E3%82%B1%E3%82%A4。沖縄県民大会の参加人数に異を唱えたことに名を馳せました。will論文の趣旨はWEB検索から知ることが出来ます。例えば、http://www.nikaidou.com/archives/5787

※3 「貧弱です」という前に、ソースである井上清氏の論考にあたって批判してくださればもっとよかったですね。

※4 河内さんが仰る「写真をみるかぎり、中国の漁船が故意に日本の巡視船に衝突した、というのが正しいと思います」とはどの写真でしょうか? なおこの「東アジア黙示録」というサイトの立ち位置はこちらhttp://dogma.at.webry.info/。ちなみに、在日本朝鮮人連盟接収にあたった警視庁警察官を「朝鮮進駐軍」としたデマ、そのルーツとなったのがこのサイトです。今世情を騒がせている「在日特権を許さない市民の会」発会大会に参加して書いたエントリーに記述されています。http://dogma.at.webry.info/200701/article_19.html

※5 ZAKZAKにその記事が載っていたようなので、あとで検証しました

※6 これは「国際戦略コラム」F&T(津田)氏です。

※7 「大紀元」サイトです。法輪功を支持する華僑たちによって設立されたもっとも明確な反中国政府サイトです。裏の取れていない憶測によるものや、他のあまり信頼性のない週刊誌の記事からの転載であっても、中華人民共和国や中国共産党の批判に使えるものなら、使用する傾向があるといわれてます。

※8 酒井亨氏はブログ「むじな@台湾よろず批評ブログ」http://blog.goo.ne.jp/mujinatw においても旺盛な執筆をしています。立ち位置は、中国共産党と台湾国民党が大きらい、でも台湾の「親日」を利用するチャンネル桜など、日本の右翼&ウヨクはもっと大嫌い、という民主主義者です。


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