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発信箱:イルカ漁とサイード教授=布施広

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発信箱:イルカ漁とサイード教授=布施広


 話題の映画「ザ・コーヴ」を見て、故エドワード・サイード氏を思い出した。パレスチナ系米国人で、有名な「オリエンタリズム」の著者。米国の大学に身を置いてイスラエルのパレスチナ占領を非難し続けた。国際世論を喚起すべきアラブ側の人々にも厳しい目を向け、彼らの英語は「情けないほどたどたどしい」「(米国への対応で)初歩的な無能をさらけ出している」とも語っている(「戦争とプロパガンダ2」)。

 なるほど、思いつくまま例を挙げると、パレスチナの最高責任者、アッバス自治政府議長の英語はとつとつとして、ネタニヤフ・イスラエル首相の滑らかな英語とは比較にならない。それによって能力を測るのもどうかと思うが、英語を基準にすれば確かにアラブ側の情報発信力は劣るだろう。

 さて「ザ・コーヴ」である。ご存じのように日本のイルカ漁の残虐さを訴える英語の映画だが、登場する日本人は一、二の例外を除いて英語がさほどうまくない。不意の取材に慣れぬ英語で応対したのか、イルカ漁批判への反論もたどたどしい。盗撮などの是非はともかく、この辺の取材姿勢はフェアじゃないなと私は思った。

 イルカ漁は日本の伝統文化だという主張もある。それを達者な英語できちんと語る日本人をもっと登場させないとバランスが悪かろう。まるで人語を解さぬ未開の地に文明国の探検隊が踏み込んだような視点と描写。これこそ「オリエンタリズム」が指摘する、アジアや中東に対する西洋的な偏った視線ではなかろうかとも考えた。

 とはいえ入り江を赤く染めて殺されるイルカの姿には胸が痛んだ。同じ漁法が続いているならやめてほしいと私は思うが、これは食文化の問題だと言う人もいる。上映に反対する動きもあるが、いろんな意味で見る価値はありそうだ。(論説室)

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雑記帳:イルカの視覚実験 佐世保・海きらら
毎日新聞 2010年7月1日 東京朝刊


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