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日韓歴史研究 相互理解を深める礎となるか(3月24日付・読売社説)

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日韓歴史研究 相互理解を深める礎となるか(3月24日付・読売社説)



 歴史観の違いを互いに認め合った上で、いかに相互理解を深めていくかが問われていると言えるだろう。

 日本と韓国の研究者らによる第2期日韓歴史共同研究委員会の報告書が発表された。

 第1期研究の報告書は、2005年に発表されている。1910年の日韓併合条約の有効性や、古代の朝鮮半島での日本の軍事行動などをめぐって、日韓双方の異なる見解が併記されていた。

 第2期研究では、第1期に設けられた時代別の分科会に加え、教科書問題を専門に扱う小グループが新設された。教科書制度の違いや、教科書の記述内容について分析し、日韓双方の学者がテーマ別にそれぞれ論文をまとめた。

 ここでも、日韓の間で激しい応酬が見られた。

 例えば、近年の日本の歴史教科書から慰安婦に関する記述が減っていることについて韓国側研究者は「政治・社会的状況の保守化」が要因であると論じている。

 だが、慰安婦問題は女子挺身(ていしん)隊の戦時勤労動員を「慰安婦狩り」だったとする誤った情報が日本国内で流布して、国際社会の誤解を招いたという経緯がある。

 日本側研究者は、韓国側研究者の論文に対する批評の中で、挺身隊と慰安婦の混同という「重大な欠陥を有したままの立論」であると批判した。

 こうした事実誤認が解消されなければ、建設的な議論はなかなか進まないだろう。

 これまでは日本の教科書ばかりが俎上(そじょう)に載せられてきたが、今回は韓国側の教科書についても議論が交わされた。

 例えば、日本側からは、韓国の教科書に「日帝」という用語が多用されているが、誰を指すのか、「日本帝国主義者」なのかといった疑問が示された。天皇の称号が韓国の教科書では「国王」とされていることも問題とされた。

 韓国側からも、韓国の教科書は先の大戦の記述が不十分といった率直な意見が提示された。

 今年8月には、日韓併合条約締結から100年を迎える。日本の植民地統治などをめぐって、改めて両国間で活発に議論が行われる可能性もある。

 歴史をめぐり日韓で共通の認識を持つことは容易ではない。日韓歴史共同研究が、さらに継続されるかどうかも未定だ。

 しかし、立場の違いがあることを認めた上で歴史の問題を掘り下げていく場は、今後も引き続き設けていくべきだろう。

(2010年3月24日01時07分 読売新聞)


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