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沖縄戦集団自決の洞穴「チビチリガマ」で写った魂に祈る

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【コラム】安住るりの昭和史瑠璃色眼鏡 沖縄戦集団自決の洞穴「チビチリガマ」で写った魂に祈る

2010年03月03日コラム沖縄 安住るり


◆ 何度でも行きたい沖縄


 沖縄未体験の家族を伴って、3泊4日の気ままなドライブ旅行に行った。
 と言っても私は運転免許がないので、ドライブ好きで沖縄大好き人間の長女が仕事を休めることが前提だ。

 2月末の数日間、行けることになったので、さっそくネットで航空券と宿泊所と、レンタカーなどの手配をした。

 いままでの沖縄体験は、旅行会社の普通の観光ツアーから始まって、家族とのドライブ旅行も何度か経験し、ひとりで八重山諸島までフェリー(原油高騰の時に廃止されてしまった)で行ったこともある。

 先月は名護市長選挙(1月24日投票)の取材を兼ねて友人と、ついに北端の辺戸岬(へどみさき)まで行けたので、一応、北から南まで極めた(?)ことになる。

 地元の人たちは、あまり島内観光などに出かけないようなので、市場のおばちゃんなどと話してみると、私のほうが沖縄事情に詳しかったりする。

 私の一人旅なら一泊千円くらいのドミトリーを探して行くのだが、今回はある程度「人並み」の宿を選ぶことにした。

 楽天カードのポイントを溜めているので、楽天トラベルで探す。
 飛行機は全日空で往復。宿は、3人一部屋で泊まれるところを、安いほうから探していく。レンタカーも、大手ではなく安いところにする。それでも那覇空港と営業所間の送迎つきだ。

 食事代は別として、交通費と3泊の宿泊代は一人当たり総額6万円程度。
 厚生遺族年金の収入しかない私でもなんとかなる廉価プランだ。

 それでも1泊目は「社会保険庁」が厚生年金のカネにあかして造った「ウェルサンピア」が居抜きで民間に身売りした巨大リゾートホテルで、温泉施設と体育館が無料で使える。4階の和室からは知念半島の北側の湾が一望できる素晴らしいロケーションだ。

 2泊目は普天間基地そばの全日空グループの立派なホテルで、室内プールもジャグジーもサウナも無料だし、おまけに素敵な朝食付きだ。浜辺に続く庭園も素晴らしい。

 ちょうど横浜ベイスターズがキャンプをしていた。11階の部屋の窓からシーサイドの野球場が丸見えだが、残念ながら、選手の名前も背番号も、まったく知らない。同じ神奈川県なのに、申し訳ないことだ。

 3泊目は、ぐっとローカルな味わいで、北部の田舎の民家を自炊の宿にしたところを選んだ。今帰仁(なきじん)城址の管理を現在担当しているU氏がオーナーだ。

 2月26日に泊まったが、翌朝、沖縄では誰も経験したことがないという「震度3~5」くらいの地震があった。私の息子がテレビのニュースを見て驚いて逗子から電話をよこしたが、何も変わったことはなかった。那覇では古い水道管が破裂したところがあったらしいが。


◆ 2月が「初夏」の沖縄をたのしみつつ 戦跡を巡る


 寒い関東から那覇に着いたら、実にサワヤカ!昼の気温は24度くらい。
 2月とは思えない。これが4月になればもう「夏」で、ひどく蒸し暑くなる。

 今回はルートを一工夫した。昼前に着いた那覇空港から、まず南下して、本島南東部知念半島の山の上のホテルに泊まる。バスで回ると非常に不便だが、自動車なら、午後の数時間で、南部戦跡を数箇所巡り、本島で最高位の「聖地」である「セイファーウタキ」を見る時間もある。

 「ひめゆりの塔」の資料館を見てきた若い二人(私の娘と、息子の嫁さん)は、「戦時中の乙女たち」と、お気楽な自分たちとの境遇の、余りにも深いギャップに打ちのめされていた。

 「欲しがりません。勝つまでは」と、父親への手紙に書いていた女学生は、「勝つ」はずもなく、洞穴の野戦病院の中で、傷だらけの兵士たちと共に焼き殺された。

 「出てきなさい。殺しません」と米兵は呼び掛けたのに。

 「けっして捕虜になってはならない」「投降するのは恥である」「捕まれば酷い目に会う」「最後の一人まで戦い抜け」と教え込まれていたからだ。

 沖縄でもっとも優秀な女生徒が集まっていた学校の、マジメそのものの乙女たちだった。


◆ 兵士も市民も 「闘って、投降せず、死ぬこと」 を強いられた


 2月27日、地震があったあとだが、今帰仁の宿から自転車で海岸に向かって、早朝の散歩に出かけた。

 今泊(いまどまり=今帰仁と親泊をくっつけた地名)集落の中心部の通りで、竹箒で道を掃除していたオバアサンに挨拶して立ち話をしたら、偶然にも、宿のオーナーのU氏は「孫」だという。

 街路樹に咲き誇っている鮮やかな黄色の花の名前や、海岸に行く道を尋ねたのだが、ふと、二日前の2月25日に御参りした読谷(よみたん)村の「チビチリガマ」で撮った、不思議な写真を見てもらおうと思った。


チビチリガマの写真1、2010年2月25日14:55

 「チビチリガマ」は、小倉文三さんが先日の記事で紹介しているが、「敵に投降してはいけない」と思い込まされた人々が、追い詰められ絶望して、いわゆる「集団自決」という悲劇に至った多くの場所のうちのひとつである。

 「読谷村の戦跡めぐり」という、非常に詳しいサイトを見つけてプリントして行ったのと、地元のトリイステーション基地前の「沖縄そば」の店で食事してから道順を教えてもらったので、迷わずに「チビチリガマ」のある窪地へと降りる階段を見つけることができた。

 うっそうと樹木に覆われた窪地の更に下に、小川が勢いよく流れている。
 この「水」の動きに、なぜか気持ちが救われる。「水」は「命」の象徴だ。

 左手の崖の下に「ガマ(洞穴)」への入口がある。虹色の折鶴の束がいくつも掛けてある。足元に遺族会による看板があって、この中は「墓」だから、踏み込まないで欲しい、という主旨のことが書いてある。痛切な想いが伝わってくる。

 周囲の崖や、ガジュマルの樹や、石の銘盤などの写真を撮っていて、ガマの入口から数m離れてデジカメで撮った1枚に、肉眼で見えない半透明の白い「丸」か「球」が、大小ふたつ写っている。


写真2、14:57

 「アレッ??」と思い、ほとんど同じ位置から数秒後に撮ってみたが、ソレは跡形もなかった。連れの二人に見てもらった。娘は「写っちゃった、写っちゃった」と言うだけで、皆黙ってしまった。


写真3、14:57

 私はいわゆる「心霊写真」といったものには全く興味がないが、黒い崖の前に現れた「白い丸」は、どうにも説明がつかない。白いバックの写真に「レンズの汚れ」が薄黒く出ることはよくあるが、これはまったく違う。このときパラパラと雨粒が木々の間から体に当たったが、それがレンズに当たったのでもない。直後の写真では消えているのだから。

 今帰仁のおばあさんは、その写真をしげしげと見て、「映してもらいたかったのかねぇ」と呟いた。そして、戦争は酷い、いけない、と話し始めた。


◆ 歩いて渡れるくらいビッシリ並んだアメリカの黒い軍艦


 沖縄本島の西海岸をアメリカの大艦隊が埋め尽くしたのは1945年(昭和20年)の3月末だ。「鉄の暴風」と喩えられる無差別の大爆撃が始まった。4月1日に米軍は沖縄本島の西側一帯に上陸した。

 おばあさんは19歳だった。「おんなも兵隊と同じで徴集されるわけさ。伊江島に行け、と」「食べ物がないから、あぶらミソをつくって、包んで持って行った。豚肉を味噌に漬けた物」「伊江島には戦前は水がなかった。顔も洗えん。千人ガマというところに隠れていたともだちに、トイレもないのにどうしていたか、ときいたら、海に行って、して、海の水でお尻を洗った、と。」

 83歳のオバアサンは言う。「アメリカの軍艦は数え切れないほどたくさんビッチリ並んで、上を歩いて渡れるくらいだった。みんなでお城の山から見ていた」。今帰仁城跡のある本部(もとぶ)半島の山には日本海軍の基地があったが、そこからは米軍に一発も反撃しなかった。だから、今帰仁城の石垣も集落も守られた。冷静な判断をした軍人も居たのだ。

 うちの娘がかつてアルバイトでひと夏を過ごして大好きになった「久米島」には、山に日本海軍の基地があったが、小さな電波基地だったので米軍の爆撃の標的にはならなかった。米軍は久米島に「無血上陸」した。住民を殺すつもりはなかった。

 ところが、日本側の隊長が暗愚な臆病者で、村の少女を愛人のように連れまわして山に篭り、乏しい食料を村人から奪った。抗議する区長を殺した。朝鮮人家族をスパイ呼ばわりして皆殺しにした。米軍に拉致された住民が、投降するよう説得されて伝えに来ると、射殺した。その軍人はおそらく米軍への恐怖の為に半ば狂っていたのだろう。

 彼は生き残り、戦後関東の郷里で役人になった。久米島の人たちは彼を探し出して、裁判を起こした。何十年か前の話だ。


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沖縄フォト紀行2010(4) 読谷村のガマを見る 2010年01月28日 小倉文三
http://www.janjannews.jp/archives/2453148.html


安住フォト記事「流弾に注意!」
http://www.janjannews.jp/archives/2780734.html

【コラム】安住るりの昭和史瑠璃色眼鏡 「沖縄南北縦貫鉄道」建設が沖縄経済自立の背骨になる 2010年01月29日
http://www.janjannews.jp/archives/2463143.html

参考サイト
「読谷村の戦跡めぐり」
http://www.yomitan.jp/sonsi/senseki/index.html

◇記者の「ブログ」「ホームページ」など
 安住るり★興味津々(こうじちゅう)
 http://blog.livedoor.jp/ruri1946/


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