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9条改正のためにも過去の総括をしっかりと

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9条改正のためにも過去の総括をしっかりと2010年02月03日

海形マサシ

 先日、日中間の有識者による歴史共同研究委員会が、共同研究の報告書を公表した。論争の的となる南京大虐殺では、虐殺の事実は両国とも認めたものの、犠牲者数の認定では隔たりを残したままとなった。とはいえ、両国とも、日中戦争が侵略戦争であり、一般市民を含め多大な犠牲を生じたものの、戦後は軍国主義を捨て、新たな平和発展の道を歩み始めた、と認める点では一致した。

 筆者は、かねてからこの問題に関心があり、5年前に南京に行ったり、実際に現場で被害にあった方々の声を直接聞いたりした経験がある。

 日本の戦前における負の面を語ると、必ず保守派ががなり立てるのが、これまでのパターンだ。なぜなら、そのことが日本人としての威信を貶めるからだと。
 一昨年、日本は侵略国家でないという主旨の論文を公表して更迭された航空自衛隊の前空幕長の田母神氏は、この問題こそが日本が憲法9条を変えられないでいる根源だと論じて、南京虐殺を否定している。

 筆者は昨年6月に田母神氏の講演に出席して、自らが南京虐殺の認知をする活動に関わりながらも9条改正に賛成で、一般市民に危害を加えたことは当時の軍紀にも違反する行為だったから、事実を認め、再発防止を約束する形で再軍備をしていくのが得策ではないかと問うた。すると、田母神氏は「私が中国にいいたいのは講和条約で、すでに解決済みなので、水に流せないかということだ」という意外な答えが返ってきた。

 本心は、事実が何であれ、過去のことにより煩わされたくない、ということなのだろうということを感じとった。

 日本は戦争を始め、他国で一般市民を虐殺したりして負けた国だから、軍隊を持ってはいけない国なのか、というのが戦後、何度も問い質されたことだったように思う。

 だが、実際には持っていて、それは芦田修正といわれる9条2項の「前項の目的を達するため」という文言を拡大解釈して自衛目的なら合憲だとしたためだ。
 しかし、拡大解釈による軍備の保持なので、常に自衛隊は軍隊なのか、でないのかの論議でもめる。その結果、占領時代から駐留する米軍に形の上でだが防衛を委託するという独立国としては奇妙な形を取らざる得ず、それは昨今の普天間移設問題でも分かるように、自国内の領土の使用場所を他国軍の意向に配慮しながら決めなければいけないという屈辱的な立場を強いられることになっている。


【写真】
沖縄を占拠する米軍基地 右の滑走路は嘉手納空軍基地、左は普天間海兵隊基地。(2002年、筆者撮影、飛行機の窓から)


 その状況を打破するには憲法9条改正だろう。軍備の保持を正式に認め、使用目的を限る条項を入れて過去のあやまちを繰り返さないと誓うことが最善の策だと思う。

 しかし、改正には国内外からの反発が必ず来る。やはり過去が繰り返されるのではないかという懸念からだ。そのためにも、過去の総括と克服が重要になる。結論ありきの「日本は実をいうと、いい国だった」という総括では克服にならない。

 この場合、よくドイツの例が、取り上げられる。ドイツはナチスによる侵略とユダヤ人などを対象とした虐殺行為を行い敗戦となったが、交戦国とは陸続きなうえ、戦後、国を東西に分断され冷戦の最前線に立ったことにより再軍備をせざる得なかった。だからこそ、周辺国との信用回復は最重要課題となったのだ。


【写真】
中国、南京虐殺記念館(2004年9月、筆者撮影)石ころは犠牲者の白骨を象徴する。


 過去の総括をすることは敗戦国としての負い目を払い、自分の国は自分で守れる主権国家として当然の権利回復につながる。ドイツは再軍備をしながら周辺国との信用回復を成し遂げた。だからこそ、米軍との関係も日本とは大違いであり、地位協定では環境への配慮や立ち入り検査などを米軍と約束させている。イラク戦争では国内世論を優先して派兵は見送った。近い内に、米軍は全軍、ドイツから撤退する予定だという。

 日本は過去に失敗を犯したが、そんな国でも自分の国は自分で守る権利はある。だから、憲法9条改正は必要だ。来るべき9条改正のためにも、しっかりとした過去の総括をしようではないか、と呼びかけたい。


【写真】
ドイツの過去の総括の象徴、ベルリンの「石の波」600万人のユダヤ人犠牲者を象徴するモニュメント。2008年7月、筆者撮影。



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