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特集:日中歴史共同研究報告書(要旨) 加藤陽子・東大大学院教授の話

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特集:日中歴史共同研究報告書(要旨) 加藤陽子・東大大学院教授の話

◇交互に執筆、読み応え--加藤陽子・東大大学院教授(日本近現代史)


 日本側から提起した研究だけあって、特定テーマではなく、時間軸に沿った叙述方式が採られている点をまずは評価したい。

 アヘン戦争から太平洋戦争終結までの100年余を二つの時期に分け、後半部分を満州事変、盧溝橋事件、日米開戦の三つの画期から描いた今回の枠組みは、革命史観をとってきた従来の中国のスタンスとは異なるものだった。それが可能だったのは、臧運〓氏(北京大)など若手エース級を中国側が多数起用して臨んだゆえだろう。

 日中が交互に執筆する内容も読み応えがあった。日清修好条規について日本側が古典的な解釈を記せば、中国側は台湾の研究成果をも含めた新解釈で補完する。義和団事件時の日本軍の略奪について中国側が記せば、日本側は日本兵が総理衙門史料を守った事例で補完する。史料をベースとした学問的掛け合いの呼吸がよい。

 注文もある。日中関係について経済史的な把握が弱いのではないか。グラフが一つもないのはいただけない。さらに、400字詰め換算で1000枚近い分量は、国民感情の疎隔への処方せんというより、その前段階の環境整備のためというべきか。そのような意味でも、日中の認識のギャップが一目でわかる討議要旨の公開が望まれる。

毎日新聞 2010年2月1日 東京朝刊
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