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日中歴史共同研究 認識の違いを越え関係構築を

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pipopipo555jp

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日中歴史共同研究 認識の違いを越え関係構築を



 一定の成果はあった半面、大きな課題も浮き彫りになった。歴史問題の克服を目指す「日中歴史共同研究」の報告書が公表された。

 日中戦争を「日本による侵略」とする共通見解なども盛り込まれたが、ほとんどは両国それぞれの論文を併記する形で決着した。

 南京大虐殺の犠牲者数や日本の拡張政策などで歴史認識の違いは埋まらないままだ。今後の共同研究でも、厳しい議論が予想される。

 ただ、伝統や政治体制が違う両国間で歴史の見方が異なるのは当然だろう。共通見解を導く努力は必要だが、違いを克服した上で相互理解を進める方法も探るべきだ。

 共同研究は両国関係を改善するため2006年に合意。10人ずつの有識者が、「古代・中近世史」「近現代史」について議論していた。

 両国の代表的な有識者が会合し、重要な歴史問題をめぐり意見を交わす機会は、相互理解を深める手段として一定の評価はできよう。

 しかし結果は、両論併記という手法をとらざるを得なかった。多くの分野で、互いの主張が食い違うからだ。

 例えば琉球問題で、「琉球の帰属へ既成事実を積み重ねた」とする日本側に対し、中国側は「琉球は中国の冊封体制下にあった独立国だが、日本は横取りした」とする。

 南京大虐殺の犠牲者数でも、日本側の見解は虐殺事件として認めた上で20万人を上限とした。対して中国側は30万人以上という主張だ。

 加えて、戦後史の部分が非公表とされた。

 天安門事件について報道も研究も禁じている中国政府の要求が反映された結果だ。南京大虐殺や日中戦争についても、中国側からの申し入れで何度も書き直したという。

 日本政府にも、研究の中に歴史認識の違いを封じ込めることで、外交を進めたいとの思惑が見え隠れする。

 共同研究は「なるべく自由に議論」(岡田克也外相)すべきだ。しかし、政治的思惑から切り離された研究はありえないという現実に、わたしたちは直面している。

 その現実は受け入れねばならない。その上で、歴史に多様な側面から光を当てる作業は今後も進める必要がある。歴史から目を背けてはなるまい。天安門事件は消えないし日中戦争で中国側に犠牲者が出たのも事実だから。

 鳩山由紀夫首相はアジア重視の姿勢を打ち出し「歴史を直視する」と言う。歴史の直視とは、違いを認め、理解し合う作業でもある。

 両国の座長は最終会合後、次期研究に意欲を示した。その過程で、両国の友好やアジアの未来が描けるなら、十分な研究の成果であると評価してもいいではないか。


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