15年戦争資料 @wiki

rabe11月16日

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pipopipo555jp

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十一月十六日

ここでがんばりぬこう。一日じゅう自分にそういいきかせていた。いま耳にしたのだが、蘇州では、まいもどってきた中国の敗残軍によって、ひどい略奪が行われたという。まったく、ため息が出る。それなのに中国人は、たとえ揚子江から砲撃されても、この町を守れると信じているのだ。

それはそれとして、私にすがりついている中国人たちはいったいどうなるのだろう。韓がまた前借りを頼みにきた。青島に友人がいるので、済南経由で家族を避難させるつもりだったのだが、いま、むりだということがわかった。日本人の侵攻を防ぐため、済南の手前にある鉄道橋が中国人の手によって爆破されたのだ。ということは、日本軍はすでに黄河の手前か、そのほとりにいることになる。こうなったら韓も家族を漢口にやるしかないだろう。彼はただ、いっしよに行ってくれる知り合いの家族を待っている。まにあうといいのだが。

いまさら商売に精を出したところではじまらない。商談の相手もいない。世間では荷造りの真っ最中だ。かくいう私も! 日記はもうかばんにつめた。今度は背広だ。おつぎは銀器。いやはや、すごい音がする! それからそのへんにあったものを手当たり次第放りこんだ。これから送り先を貼りつける。現金を持っているほうがいいといわれたので、金をおろしてこよう。どっちみち銀行も閉めたがっている。



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