15年戦争資料 @wiki

四、第32軍の戦力増強策

最終更新:

pipopipo555jp

- view
管理者のみ編集可
戦史叢書 沖縄方面陸軍作戦
第7章 第32軍の作戦準備と航空基地問題

四、第32軍の戦力増強策


海上挺進基地大隊の改編

第三十二軍司令官は戦カ増強のため、二十年二月十二日(筆者推定)球作命甲第一〇二号をもって「海上挺進戦隊同基地大隊仮編成規定」による部隊の改編を命じた。編成第一日を二月十三日とし編成完結は二月十七日とされた(199)。宮古島では改編されなかった。

その趣旨とするところは、海上挺進基地大隊(以下基地大隊と略称 編制--付録参照)を改編して歩兵大隊に準ずる部隊とすることであった。

海上挺進基地大隊中から海上挺進戦隊の作戦に絶対必要とする一部の勤務隊及び整備隊を海上挺進戦隊長の指揮下に入れ、残余兵カを歩兵大隊に準じて独立大隊を編成した。その概要は次のとおりである。

海上挺進戦隊長に配属する部隊
  勤務隊(本部と三小隊) 約一七〇名
  整備中隊       約六〇名
独立大隊(基地大隊号を称す) 約六〇〇名
  大隊本部約五〇名
  中隊三(中隊は三小隊、軽機関銃三、重擲弾筒四、約一八○名)
  機関銃小隊一(約三〇名、重機二)

海上挺進戦隊の泛水(へんすい)(舟を水際にうかぺる)作業要員と

175
して二月十六日特設水上勤務中隊(朝鮮人軍夫により編成)などが海上挺進戦隊長に配属された。(第九章参照)

編成された独立大隊は、二月十七日各兵団に配属されて地上戦闘力の強化に充当された(43,87)。(付図第五参照)

第二十四師団 独立第一、第二十六、第二十八大隊
第六十二師団 独立第二十七大隊(筆者推定)
独立混成第四十四旅団 独立第二、第三、第二十九大隊

慶良間列島で編成した独立第一~第三大隊は二月十八日沖縄本島に転移(機帆船輸送)した。配属を受けた各兵団は独立大隊を第一線部隊として配備し、あるいは予備隊などとした。(43,87)

第二十四師団の改編

第二十四師団は、昭和十九年春在満の各歩兵聯隊及び砲兵聯隊から一コ大隊が中部太平洋方面に抽出派遣され、歩兵聯隊は二コ大隊、砲兵聯隊は三コ大隊のまま沖縄に移動した。

二十年二月十一日歩兵聯隊を三コ大隊とするなどの編制改正(軍令陸甲第三号)が実施されたが、砲兵聯隊は三コ大隊のままとされた。(「付録」第二十四師団の編制参照)

防衛召集と兵器の増加装備

第三十二軍においては、航空基地の急速設定時の特設警備工兵隊の編成、遊撃隊の編成などに防衛召集を実施したが、二十年二月中旬情勢が急迫を告げた際(前述)相当数の防衛召集を実施し、更に三月上旬約一五日間を目途として大々的に防衛召集が実施された。この際学徒の一部も動員された。(36)

注 三月上旬の防衛召集者は約二万ともいわれるが、明確な人員数は分からない。一部史料によれば次のとおりである。(各隊命令綴などから)

独立歩兵第十四大隊配属 兵員約二〇〇
第二歩兵隊第二大隊配属 兵員二一〇
第四十四飛行場大隊配属 兵員四五〇、学徒一五〇
第五十六飛行場大隊配属 兵員一五〇、学徒一五〇
第五十飛行場大隊配属 兵員三〇〇
第三十二野戦兵器廠配属 九〇〇(内容不詳)

大本営は比島方面の作戦が絶望となったため、同方面に輸送予定の兵器、資材などを第三十二軍に交付した。その概数は次のとおりである。(10)

小銃数千、軽機関銃約四〇〇、重擲弾筒約四〇〇、重機関銃約二〇〇、速射砲及び機関砲約一〇

第三十二軍司令官は、二月中旬これらの増加兵器を各

176
部隊に交付して戦カ増強を図ったため、主陣地帯一粁正面の火器の密度は軽機関銃約二五、重擲弾筒約二五、重機関銃約一〇となった。(10)

特設旅団(聯隊)の編成

軍司令官は二十年三月二十日(筆者推定)航空、船舶、兵站部隊などを地上戦闘に使用できるように特設部隊として編成することを命じ(球作命甲第一一二号)、三月二十一日これら部隊の運用計画を示して地上戦闘を準備させた。(45)

特設部隊の編成概要は次のとおりである(10,88)。(付図第五参照)

特設第一聯隊 長 第十九航空地区司令官 青柳時香中佐 
  航空関係諸部隊で編成
特設第一旅団 長 第四十九兵站地区隊長 高宮章大佐
  特設第二聯隊 長 高宮章大佐(旅団長兼任) 
    兵站勤務関係部隊で編成 総員約三、○○○名
  特設第三聯隊 長 第三十二野戦兵器廠長 土田勘次郎中佐
    兵器廠関係部隊で編成 総員約二、○○○名
  特設第四聯隊 長 第三十二野戦貨物廠長伊藤馨大佐
    貨物廠関係部隊で編成 総員約一、五〇〇名
特設第二旅団 長 第十一船舶団長 大町茂大佐
  特設第五聯隊
    海上挺進戦隊出撃後の残留員で編成の予定 総員約三、五〇〇名
  特設第六聯隊 長 第七船舶輸送司令部沖縄支部長 平賀又男中佐
    船舶輸送司令部、海上輸送大隊、滞留機帆船要員などで編成
    総員約一、○○○名

特設第一聯隊は地上戦闘移行に当たっては第六十二師団長の指揮下に入り、その他は津嘉山周辺地区に陣地を占領して主陣地帯の核心を保持するとともに第一線兵団の後拠となるように部署された。(45)

球作命甲第一一三号
第三十二軍命令 三月二一日〇九三〇 首里

一 航空、船舶、後方関係諾部隊ハ別冊「地上戦闘ノ為航空船舶後方関係諾部隊運用計画」ニ基キ地上戦闘ヲ準備スヘシ
二 自今兼城、標高八六・六高地、銭又屋取、神里南側高地、友寄ノ線(含ム)ヲ連ヌル地域ヲ軍直轄戦闘準備区域トス
三 第二十四、第六十二師団長及独立混成第四十四旅団長ハ各防衛担任地域内二於ケル戦闘準備ノ細項二関シ特設第一及第二旅団長ヲ区処スルコトヲ得


目安箱バナー