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『白旗の少女』放送

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命の尊さ伝えたい 激戦地沖縄を1人で生き抜いた テレ東『白旗の少女』あす放送

2009年9月29日 朝刊

 太平洋戦争末期の沖縄で、避難中に姉たちとはぐれ、戦禍を一人で生き抜いた少女を、実話を基に描くドラマ「白旗の少女」が、三十日午後九時からテレビ東京で放送される。主人公の比嘉富子さん(71)が、六~七歳時の経験をつづった同名の著書が原作。ドラマは戦争の悲惨さを伝えるだけでなく、「命の尊さを分かってほしい」という比嘉さんの切なる思いも込められている。 (高橋知子)

 富子(八木優希)は、沖縄・首里に父・直彰(石黒賢)、姉のヨシ子(鈴木杏)と初子(大平うみ)、兄・直裕(神谷涼太)の五人で暮らしていた。米軍が沖縄本土に上陸した一九四五年四月。父は出掛けたまま戻らない。子供たちは戦禍を逃れ、父を捜して南へ向かう。

 その途中で姉たちとはぐれた富子は、生きるために民家に忍び込み、時には死んだ兵士の荷物をあさり、食料を得て飢えをしのぐ。やがて、あるガマ(洞窟(どうくつ))にたどり着いた富子は、両手足のない老人(菅原文太)と盲目の老婦人(倍賞千恵子)に出会い、生きる尊さを諭されて、白旗を手に一人で米軍に投降する-。

 同作は、開局四十五周年記念作品を募った社内コンペで選ばれた。命の問題が軽くなっている現代に、戦争を二度と起こしてはいけないということと、生き続ける尊さを伝えようと企画された。

 「これは紛れもない命の物語。今は、生きる意味も見失いがちだが、六歳の少女が極限状態で生き抜いたという真実には感銘を受けた」と岡部紳二プロデューサー。原作を読んだ後、比嘉さんと会い、その口から昨日の出来事であるかのように、明瞭(めいりょう)に当時の話が出てきたことに、あらためて体験のすさまじさを思い知ったという。

 七十一歳を迎え、“沖縄のおばあ”という雰囲気の比嘉さん。今は平和なのに、なぜ子供たちの自殺が多いのか。そんな日本を憂いているという。ドラマを通して「命は一人のものか。そうではない。曾祖父母、祖父母、父母から受け継がれたもの。そう考えたら、どんなに苦しくても頑張れるんじゃないかと。命の尊さを分かってもらいたい」と話す。

 原作をほぼ忠実にドラマ化。八割以上の撮影が、梅雨時の沖縄で行われた。

 畑の泥がついたままの菜っ葉を食べ、死体の中をさまよい、至近距離での爆撃にさらされる富子役の八木は、小学校三年生には過酷といえるシーンを次々とこなした。

 ロケでは、戦争を経験したエキストラから「生き残れればいいってわけじゃない。大切な人も亡くなるわけだから、生き残れればうれしいってわけじゃないんだよ」と教えられたことが印象に残ったそうで、「戦争って嫌だ」と思ったという。

 八木の演技に比嘉さんは「あんなつらいシーンを次々とやってくださって」。戦禍をくぐり抜けた人の中には、どんな戦争ドラマを見ても「悲惨さは、そんなもんじゃなかった」という声もあるが、比嘉さんは「戦争真っただ中のことは、実体験した人に言わせると、ああだこうだというのが出てくる。強調し過ぎても、しなくても意味がない。ドラマは、戦争の醜さと命の尊さを伝えるのが本筋ですから」と言う。

 そして、戦争を知らない世代へ訥々(とつとつ)と語った。

 「今の時代でも、いろんな心の中の葛藤(かっとう)、心の中の戦争はあると思う。でも、死んだら戻れない。命を大切にしてほしい」



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