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不当な非難・中傷に屈せず「放送の自主自律」堅持を
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不当な非難・中傷に屈せず「放送の自主自律」堅持を
~NHKスペシャル『アジアの“一等国”』をめぐって~
(7月29日転載)
開かれたNHKをめざす全国連絡会
(世話人)
松田 浩(メディア研究者・元立命館大学教授)
醍醐 聰(NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
共同代表・東大教授)
岩崎 貞明(放送レポート編集長)
隅井 孝雄(メディア研究者・
京都ノートルダム女子大学客員教授)
(参加団体)
NHK問題大阪連絡会
NHK問題京都連絡会
NHK問題を考える会(兵庫)
NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
放送を語る会
(世話人)
松田 浩(メディア研究者・元立命館大学教授)
醍醐 聰(NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
共同代表・東大教授)
岩崎 貞明(放送レポート編集長)
隅井 孝雄(メディア研究者・
京都ノートルダム女子大学客員教授)
(参加団体)
NHK問題大阪連絡会
NHK問題京都連絡会
NHK問題を考える会(兵庫)
NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ
放送を語る会
4月5日に放送されたNHKスペシャル・シリーズ「JAPANデビュー」第1回『アジアの“一等国”』に対して、番組内容が偏向しているとして一部の市民団体などによる組織的な非難・中傷やデモなどがNHKに向けて執拗に続けられ、ときには街宣車なども押しかける事態となっています。
私たち「開かれたNHKをめざす全国連絡会」は、こうした行為が放送の自主・自律を脅かしかねないものであることを強く危惧します。
NHKは番組のねらいについて、150年前の開国によって近代化を急いだ日本が、西欧列強に伍して一等国の仲間入りを果たす過程で、最初の植民地とした台湾での植民地統治の歴史がどのようなものであったかを事実に基づいて検証し、その教訓を基に日本が今後アジアに対してどう向き合ったらよいかを探ろうとするものだと説明しています。
番組を見た多くの視聴者から、親日的と思っていた台湾の人々の生々しいホンネが印象的だったとか、日本による過酷な台湾統治の実態がはじめて理解できたという声が寄せられ、また、近現代史の研究者などからも新資料などに基づいて植民地支配の全体像に迫ろうとしたものだと評価する声が上がっています。
ところが、一部の新聞や雑誌、CS放送などは、番組の中で使われた「日台戦争」「人間動物園」などの用語を捉えて、「このような言葉は聞いたこともない」「台湾の少数民族を貶めるものだ」などと非難しています。
さらに、「番組は自虐史観そのもので、台湾統治の負の側面だけを取り上げ偏向している」「取材対象者の証言を恣意的に編集し彼らの心を傷つけた」「NHKは中国政府の意のままになっている」などと、自分たちの主観をよりどころに憶測を交えたな誹謗・中傷を繰り返しています。
その一方で、台湾統治下で少数民族に多くの犠牲者が出たことや、アジア太平洋戦争中、台湾の人々が日本軍兵士として徴兵され、3万人もの戦死者を出したことなどには口をつぐんでいます。
これらの主張に沿うように、「日本李登輝友の会」などいくつかの市民団体は、非常識にもNHKの番組担当者、経営者の謝罪と辞任、さらにはシリーズ企画の中止まで求めて、集会やデモ行進を行っています。こうした一連の行動の中で、NHK関係者の制止を振り切って構内に乱入する騒ぎを起こした例も報告されており、また、6月25日にはメールなどで募った8,000人を越える多数の賛同者による集団訴訟を起こすまでに至っています
。さらに問題なのは、慰安婦問題を取り上げたNHK番組に政治介入した疑いを持たれている自民党国会議員の安倍晋三氏、中川昭一氏らが、番組内容が偏向していたとして、6月11日、「公共放送のありかたについて考える議員の会」なる議員連盟を立ち上げ、番組内容に問題がないか検証すると決めたことです。与党政治家によるこうした「放送の自由」への威嚇や萎縮効果を意図したかのような動きは、放送番組への干渉などを禁じている放送法第三条に違反する疑いがあり、決して容認することはできません。
『アジアの“一等国”』に対するこのような動きに対して、NHKは6月17日、番組のねらいや取材方法、用語などについて長文の説明文を公表し視聴者の理解を求めました。
説明文は、問題にされている個々の部分に関して事実に基づいた説得力のある回答をしており、NHKがこの問題に真摯に向き合おうとしている姿勢がうかがえます。
放送された番組に対して批評を加えたり感想や批判的意見を述べることは、番組の質を高めるうえからも当然のことですが、今回のような道理を欠いた政治的圧力や威嚇的行動は、批評や批判の域をはるかに超えており、到底正当な言論活動とはいえません。
「開かれたNHKをめざす全国連絡会」は、NHK経営陣や制作現場のスタッフのみなさんが、こうした不当な圧力に動揺することなく毅然とした姿勢を貫き、事実を伝え、「放送の自主自律」を堅持し、公共放送としての自由で豊かな番組作りのために、さらに努力を積み重ねられるよう、切に希望するものです。