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「台湾の声」編集部多田恵氏の一文

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「台湾の声」編集部多田恵氏の一文



「中国語の禁止」?-NHKスペシャルの扇情的な事実歪曲


東京都 多田恵

四月五日の「NHKスペシャル|シリーズJAPANデビュー」(第1回「アジアの“一等国”」)では、浅薄な知識による結論先にありきの作りになっており、植民地統治が台湾を利用したと日本人に反省を求める製作者側こそ、台湾人の発言の上っ面を利用していて、それこそ台湾人を蹂躙していると言わざるを得ません。

私は、語学が専門ですから、特に次の点に疑問を持ちました。

「皇民化」の説明で、「学校や新聞などで中国語を禁止し、日本語の使用を強要します」というナレーションが入ります。

台湾の人が学校で中国語を話すようになったのは、戦後のことです。日本統治時代に、どうやって中国語を禁止したのでしょうか。

インタビューに出た台湾の人達は、日本語のほかは、台湾語で話している人がほとんどで、みな、その言語を「台湾語」と言っています。

つまり製作者は、台湾語を中国語と歪曲して伝えることで、台湾はもともと中国だったんだという誤った印象を増幅させているのです。

同じその言葉が、戦後、まさに、罰金や体罰を以って政策的に禁止されていることを知れば、そのような表現はありえません。「戦後、国民党政府は学校で中国語推進のために中国語を禁止した」と言わざるを得なくなるのです。

また、田宮良策氏のインタビューの字幕でも、「台湾人同士で話すときには平気で(中国語を)話す」と、勝手に「中国語」と補っていますが、これも、台湾人が元から中国語を話すかのような印象操作です。

台湾人は、少なくとも広義の台湾語、つまりいわゆる台湾語および客家語、原住民諸語を話していたのであって、決して中国語で話してはいませんでした。

では、NHKが使った中国語という言葉を台湾語に置き換えれば、正しい伝え方になるでしょうか。

そうでもありません。「禁止した」といえば、ああ、台湾人に対する抑圧だ、という印象を与えるでしょう。しかし、それが、どのようなものであったのか、NHKは調べてから番組にすべきではなかったでしょうか。

たとえば、どのような通達にもとづいて、どういった範囲で行われ、どのような罰則があったというのでしょう。

日本の台湾統治を断罪するという目的を持った人達は確かにそういった言葉遣いをしますが、正確ではないのです。言葉によって印象を操作しています。

台湾史で「漢文欄の廃止」として知られていることを、「中国語の禁止」と、歪曲するのです。番組を事実から離れて扇情的に作ることは、全体主義国家がやっていることです。このようなNHKが近代日本を批判するのは偽善といわずして何なのでしょう。戦争中は戦争を鼓吹しておいて、戦後は批判に回り、自己批判がないとされている某新聞社と同じです。

他にも、日本を断罪するという目的を持った人達は、戦争や占領という言葉を、本来の意味とは違うことを指して使っています。

たとえば、この番組で「日台戦争」という表現を紹介しています。そのようなことを言いはじめたら、きりがない。228事件は台中戦争になり、朝鮮での抗日運動は日朝戦争になるんでしょうかね。

元台湾籍日本兵の言葉が「みなしごになって捨てられたみたいです…(台湾の青年は)命がけで(日本)国のために尽くしたんだよ。それなのに」でカットされています。さまざまな想像を可能にする編集手法です。

「みなしごになって捨てられたみたいです」という言葉がカットされていなかったのがせめてもの救いです。

台湾人が、日本に求めているのは「反省・謝罪・賠償」ではないのです。


NHK回答の欺瞞を暴く:「中国語」表記について


                          多田 恵

NHKからの回答で、言語に関する説明がある部分を見ました。そこにはこうあります:

(以下、[[NHKの回答(coffee氏への)>]http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/1972.html])
台湾語は閩南語にきわめて近い言語です。そして、閩南語は中国語の一方言として位置づけられています。一方、台湾には、客家語を話す客家もいます。客家語もまた、中国語の一方言です。台湾総督府の調査によれば、1930年代に自らを福建系(閩南語)と認識している人はおよそ70パーセント、広東系(客家語)と認識している人は十数パーセントいます。客家は、自らの客家語という言葉を、台湾語と区別して使用しています。ですから、当時の住民が「台湾語を話す」と表現すると、そこには客家語を話す人びとが含まれないことになります。

閩南語も客家語も中国語(北京語ではなく)の一方言であること、さらに客家の方々の存在を考え、「中国語を話す」と表現しました。

NHKは、客家人(ハッカ人)が客家語を話すことを考慮して、台湾語という名称を使わずに、中国語とした、としていますが、これも視聴者を馬鹿にして騙しているのです。

まず台湾では、いわゆる「台湾語」(ホーロー語)や、ハッカ語を、現在政策的にも方言とは見なしていません。「○○語」と扱っています。それらを「方言」と強調するのは、台湾語を弾圧していた時期の国民政府を含む中国の視点です。

そして、客家の人たちの中には、客家語も台湾語の一つであるという主張があります。「客家台湾語」という表現がされています。

これは、たぶん「日台戦争」よりは普及した言い方です。しかし、客家の方でも、まだ、ホーロー語のみを台湾語と呼ぶ習慣が一部残っているので、NHKが「台湾語」を使わなかったとする理由が成り立つようにも思えます。

しかしそこには、重大な欠陥があります。同番組では、原住民のことも扱いました。それなのに「中国語」という表現を使ったということは、原住民のことを無視していることになります。客家は無視していけなくて、原住民は無視していいというのでしょうか?

台湾総督府から明治40年に出た、『日台大辞典』では、「台湾語」という用語を、台湾で行われる「支那語」と「蕃語」の上位概念として提示しています。ここで言う、「支那語」という概念は、現在、「シナ語派」とか中国で「漢語」といわれているもので、「蕃語」とは、現在、台湾原住民諸語といわれているものです。

したがって、NHKが、台湾の「本島人」が話す言語を指したいのであれば、「台湾語」とすればいいのではないでしょうか。あの番組では、客家人だとか、ホーロー人だとか、そこまで詳しく紹介していなかったはずです。それならば、台湾語という名称を使っておいて、もし、抗議があったら、「ここでは、ホーロー語、ハッカ語、原住民語を含む広義で使った」と説明すればよい話です。

もし政策的に「禁止」したという事実があれば、その文書にある表現を使えばいい話です。それを出してこないということは、NHKは、資料に基づかずに番組を制作したのでしょうね。

NHKが、「台湾語」を認めない理由として、中国と同じ宣伝をしているのが注目に値します。


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