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台湾統治めぐり「一面的」 NHKスペシャルを検証

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台湾統治めぐり「一面的」 NHKスペシャルを検証

2009/05/03 16:48更新


NHK総合テレビが4月5日に放送した「NHKスペシャル シリーズJAPANデビュー」の第1回放送「アジアの“一等国”」に対し、出演した台湾人のほか日台の友好団体、識者などから「一方的だ」と批判の声が上がっている。NHKは「番組にすべての要素を盛り込むことはできない」(日向英実放送総局長)と反論するが、番組は何を取り上げ、何を報じなかったのか。3日の第2回放送を前に、その“文脈”を検証する。(牛田久美、草下健夫)  


≪一家は中国福建省から移り住んできた漢民族でした≫

 番組でそう紹介された元医師の柯徳三さん(87)は「私は漢民族ではない」と言い切る。

 「台湾人の祖先は、宋代に南アジアの少数民族との混血が進んだ。その一部が約200年前に台湾に移り、南方系の先住民と結婚した。私でその移民から7代目。漢民族の血は1万分の1も入っていない」

 台湾民族のHLA(ヒト白血球型抗原)を研究したことのある東京大学の徳永勝士教授は「民族の呼び方は、その人たちのアイデンティティーを尊重するべき。(反発は)自然なことなのでは」と語る。北京政府は、台湾を国家として認めず「中国の一部」と主張する。漢民族という呼び方は、その文脈に沿った表現といえる。

 ■日台戦争!?

 ≪台湾人の抵抗は激しさを増していきます。戦いは全土に広がり、後に日台戦争と呼ばれる規模へと拡大していきました≫

 番組出演者の蒋松輝さん(96)は「初めて聞く」と驚きを隠さない。「確かに祖先は抵抗し、治安は悪かったが、戦争は言い過ぎ」。柯さんも「思いも寄らない言葉だった」と語る。

 NHKは「日本軍だけで死者は5000人近くにのぼった。学者も用いている」としているが、4000人以上はマラリアによる病死で戦死ではない。国立国会図書館の論文検索でも「日台戦争」は1件もヒットしない。学説と呼べるのだろうか。

 ■人間動物園…

 このほかにも、数多くの疑問が示されている。

 「台北一中の生徒は台湾人が2人だけで厳しい制限付きだったというが、教育は開かれていた」(台湾協会、小原孝弼さん)

 「樟脳(しょうのう)生産や港湾整備を取り上げ≪金のなる島≫と強調したが、日本の統治への高い評価が抜け落ちている」(日本李登輝友の会、柚原正敬事務局長)

 「(先の大戦で)21万の台湾人を戦場にかり出したと言うが、その10倍も(日本軍への)志願者がいた事実は報じていない」(日本文化チャンネル桜、水島総代表)

 1910年にロンドンで開かれた日英博覧会で台湾の先住民族を紹介したことを≪人間動物園≫と表現したことも、自民党議員らから反発を集めた。

 ■多面的か?

 出演者の柯さんが「日本統治の功罪の両面を50%ずつ話したが、NHKが取り上げたのは罪の部分だけ」と評したこの番組が放送された後、NHKには4月末までに2500件を超える声が寄せられた。「多くが『一方的だ』という意見」(NHK広報部)だったという。放送法3条は「意見が対立する問題は多くの角度から論点を明らかにすること」と定めている。台湾研究フォーラムの永山英樹会長は「日本が侵略者だというストーリーに合わせて証言、史実を切り貼りしている。一面的すぎる」と評する。

 日向総局長は、多面性の確保については「放送全体の中で考えてほしい」としている。第2回以降の放送が注目される。

【用語解説】NHKスペシャル「JAPANデビュー」

 NHKが今後3年間にわたって「これから日本はどこに向かい、私たちはどんな生き方を選ぶのか」(番組広報資料)をテーマに、歴史から教訓を探る目的で放送する大型企画番組「プロジェクトJAPAN」の一シリーズ。NHKによると(1)アジアの“一等国”(2)天皇と憲法(3)貿易で立つ国家(4)軍事強国-の4回を放送予定。


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