九月二十六日
昨夜、周文伯が延々二十六時間も汽車にゆられて上海から到着。交通部(運輸省)の役人、陶(タオ)氏の依頼とのこと。電話機の修理だという。周はわが社の優秀な技術者のひとりだ。
私は言った。「道中きみに万一のことがあるかもしれないということを、家族は承知しているのかね?」
そのときの周の返事は忘れられない。
「私は女房にいいました。『俺が死んでも、ジーメンスがなにかしてくれると思うな。北部の親戚の所へ行け。そこにうちの小さな畑があるから、子どもと一緒に暮らしていけるだろう。俺が南京へ行くのは会社のためだけではない、なによりもまず祖国のためだ』と」
ふつう中国人はこのように考えないと思われている。だが現にこういう人々がいるのだ。なかでも、貧しい人や中流の人たちの間ではますます増えてきている。
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