15年戦争資料 @wiki

つくる会教科書 慶良間触れず合格

最終更新:

pipopipo555jp

- view
管理者のみ編集可

つくる会教科書 慶良間触れず合格2009年4月10日


【東京】文部科学省は9日、2008年度教科書検定の結果を公表した。「新しい歴史教科書をつくる会」(藤岡信勝会長)が主導し、自由社(東京)が発行する中学歴史教科書など2社2点が合格した。自由社の教科書は516カ所に検定意見が付き、再申請を経て合格したが、ほかの教科書が記述している沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)が起きた慶良間諸島への米軍上陸の事実に触れていないなど、太平洋戦争に関する記述をめぐる問題点が指摘されている。

 「集団自決」における軍強制の記述を削除した2006年度の教科書検定に対し、沖縄では「沖縄戦の実相を歪(ゆが)めるもの」と厳しい抗議の声が上がった。

 「つくる会」の教科書が「集団自決」に触れず、文科省や教科用図書検定審議会も意見を付さないまま合格としたことに、あらためて批判が集まりそうだ。

 自由社の教科書は沖縄戦について「4月、アメリカ軍は沖縄本島に上陸し、ついに陸上の戦いも日本の国土に及んだ」と記述した。しかし、1945年2月に硫黄島(東京都小笠原諸島)で米軍が激しく戦闘。3月26日には米軍が阿嘉島、座間味島など慶良間諸島に上陸し、「集団自決」の悲劇が起きた。

 この記述が認められたことについて、文部科学省は「検定審の検定によるもので、文科省が個別のケースの内容について言及する立場にない」とした上で「中学生に歴史を理解させるために、どこまで詳しく記述するかも考慮される。史実に大きなずれがある場合には検定意見が付いている」と述べ、記述上の問題点はないとの認識を示した。

 高嶋伸欣琉球大学名誉教授は「沖縄本島の上陸で地上戦が始まったとされると、慶留間島や座間味村での集団自決(強制集団死)という悲劇が全く無視されることになる。軍の強制があったという歴史的な事実をねじ曲げようとする意図も感じる」と指摘した。

 「琉球処分」に関する記述では、日本が軍隊を送り、強制的に琉球藩を廃し、沖縄県とした過程にも触れていない。

 今回検定に合格したもう1点は東京書籍(東京)の高校・生物IIで、06、07年度は誤りが多く不合格だったが3回目の検定で合格した。「マングローブ林」に関する写真付きコラムなどが取り上げられた。

 今回は新しい学習指導要領に対応した教科書の検定が09年度から順次始まるため、08年度は例年に比べ、申請が少なかった。

■琉球処分でも問題指摘 専門家「強制の記述なし」

 2008年度検定に合格し、来春から使われる「新しい歴史教科書をつくる会」(藤岡信勝会長)の中学歴史教科書は、琉球が廃止され沖縄県となった琉球処分の過程を「日本はそこで1879年(明治12年)、琉球を日本領土とし、沖縄県を設置した」と記述している。現在使用されているつくる会を除くほかの6社の教科書は、日本政府が軍隊を送って強制的に琉球藩を廃止した事実を明記した。沖縄の歴史研究者や社会科教諭からは「事実関係に大変な問題がある」「沖縄の立場を無視している」との指摘が挙がっている。

 琉球処分について現在使用されている帝国書院の教科書は「新政府は軍隊や警察の力を背景にして琉球を廃止し、沖縄県を設置」、日本文教出版は「政府は琉球に軍隊と警官を送って、清との結び付きを保とうとする勢力をおさえ、琉球藩を廃して沖縄県とした」といずれも「強制」の視点を盛り込んでいる。

 つくる会の記述について、宜野湾高校の新城俊昭教諭(社会科)は「日清戦争のころまで、琉球処分に対する抵抗運動が沖縄にあり、首里王府にいた人たちは清朝へ助けを求めた。しかし、つくる会の記述は琉球処分がスムーズにいったような書き方だ。沖縄の立場を無視している」と批判した。西里喜行沖大教授(歴史学)も「軍隊によって威圧的にやられたという、一般の教科書で書かれていることが脱落している。事実関係に大きな間違いがある」と指摘した。その上で「生徒だけではなく日本国民の歴史認識を誤った方向へ導きかねない」と懸念した。



目安箱バナー