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毎日:社説:前空幕長招致 隊内幹部教育の実態究明を

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社説:前空幕長招致 隊内幹部教育の実態究明を



 戦前の日本の植民地支配と侵略を正当化し、政府見解に反する論文を発表した田母神(たもがみ)俊雄・前航空幕僚長が、参院外交防衛委員会に参考人として招致された。

 田母神氏や浜田靖一防衛相に対する質疑で、現在の文民統制(シビリアンコントロール)の危うさと自衛隊内教育の問題点が浮き彫りになった。

 田母神氏は空幕長就任直後、航空自衛隊の隊内誌「鵬友」に論文と同様の趣旨の文章を掲載していたが、浜田防衛相は「チェックしていなかった」と述べた。

 また、田母神氏は空幕長だった1年7カ月の間、頻繁に基地を視察し、隊員らに講話・訓話を繰り返していた。今年1月の熊谷基地(埼玉県熊谷市)での講話について同氏は「内容は論文に書いたのと一緒だと思う」と語ったが、防衛相は講話をすべて確認しているわけではないと述べた。

 今回の論文だけでなく、文章や発言で同様の歴史認識を繰り返していたのに、これを防衛相が把握していなかったのは論外である。

 田母神氏は、論文が問題になったことについて「今回は多くの人の目につき騒がれたからだ」と語った。従来の主張をしているのに、報道されたために更迭された、というのだ。特異な主張をする人物として防衛省内で知られていた人物を空自トップの座に据えた安倍政権、それを引き継いだ福田、麻生政権では、文民統制が機能していなかったと言わざるを得ない。

 委員会では、田母神氏が統合幕僚学校長時代に設置したカリキュラムの問題も取り上げられた。

 統幕学校は、陸海空各自衛隊の1佐、2佐クラスを対象にした、将官・上級幕僚への登竜門である。

 同校に04年度に新設された「歴史観・国家観」講座は現在も続いている。02年12月から04年8月まで校長を務めた田母神氏は「私が設けた」と述べた。講義は外部講師が中心で、防衛省の資料によると、教育内容に「大東亜戦争史観」「東京裁判史観」などが並ぶ。

 防衛相は「中身は把握していない。確認したい」と述べた。防衛省は講師名を発表していないが、田母神氏と同様の主張が幹部教育の場で行われていたのではないかとの疑念がわく。

 もしそうなら、偏った歴史観を持つ自衛隊幹部が量産され、第2、第3の田母神氏を生む仕組みが作られていたことになる。早急に調査し、是正策を取るのは麻生内閣の責任である。

 与野党にはこの日の参考人招致は新テロ対策特措法改正案を処理するための「儀式」と受け止める向きもある。これを反映したのか、民主党の追及に迫力は今ひとつ感じられなかった。

 しかし、文民統制の問題も隊内教育の疑惑も解明されたとは言い難い。麻生太郎首相が出席した審議は必須である。田母神氏再招致も検討してしかるべきだ。

毎日新聞 2008年11月12日 東京朝刊


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