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パートII 6 止(や)めない勇気と始める勇気

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pipopipo555jp

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6 止(や)めない勇気と始める勇気


 景気がなかなか回復しない。十数年前のバブル景気が忘れられず、夢よもう一度と思っている人も多い。景気が悪いと隣の芝生が青く見える。ひがみ根性が強くなり、何かうまくいかないと他人のせいにしたくなる。自分よりいい思いをしていると思えるような者に対しては腹が立つ。また戦後の社会風潮や日教組に牛耳られた学校教育のせいで、何にでも自分の権利を主張したがる人が増えてしまった。会社においても或いは行政に対してでも些細なことでも注文をつける。自分にとって都合の良いことは当然の権利と思う反面、少しでも気に入らないと文句を言わずには収まらない。このような人が増えると世の中いろいろとうるさくなる。マスコミもこれをあおり立てるようなところがある。自衛隊においても縮み指向が加速され、何事にも慎重に対応する人が増えてくる。積極的に仕事にチャレンジするよりは、上から指示されたことだけやろうと思うようになる。チャレンジしようとすればエネルギーが必要だし、失敗したときのリスクもある。主導権争いなどで周辺との摩擦を生じたりすることも多い。とにかく部内外からいろいろ言われないことが大事になる。マスコミなどで批判されることが一番困るのだ。

 こうなってくると自衛隊の中で今までやってきたことでも、ひょっとするとあれは止(や)めたほうがいいかもしれないというものが目についてくる。それは自衛隊の仕事としてやっていいのかとか、情報公開を求められたときに耐え切れるのかとかいう議論が出てくる。例えばOB会の面倒を見るなどということに関しては、自衛隊はやたら慎重になり過ぎている。しかし自衛隊がやっていることで明らかに違法であると言いきれることなどないと言っていい。あらゆることは社会常識の範囲内でやっていると私は思う。いま現在やっていることは何かの理由があって始めたことであり、そのとき当然法令や規則のフィルターはかけられているはずである。自衛隊は極めて順法精神の高い組織であるので各級指揮官等にはこの点自信を持ってもらいたい。もちろん自衛隊を好ましく思っていない人たちから見ればあれやこれや言いたいことがあるかもしれない。しかし私のこれまでの経験では、指摘を受けた後でも議論できるようなものばかりであったと思っている。いわゆるグレーゾーンに属するようなものはあるだろう。しかしそれは自衛隊を精強化するために諸先輩が知恵を出したぎりぎりの選択なのだ。だから何かを止(や)めようとするときは、それを止(や)めたら自衛隊が強くなるのか弱くなるのか自問自答してみる必要があろう。年月が経って現状にそぐわなくなっているものもあるだろう。或いは最早自衛隊の団結の強化や士気の高揚に効果がなくなってしまっているものもあるかもしれない。そんなものなら止(や)めたらいい。しかしそれが自衛隊の精強化に貢献していると思われるものについては、外からとやかく言われるかもしれないという理由だけで中止すべきではない。それを止(や)めるということは、外から何か言われるということを理由に、自衛隊が弱体化するという選択を予めしてしまうということなのだ。止(や)めない勇気を持つことが大事である。是非自分の胸に手を当てて考えて欲しい。心の底で自衛隊が弱くなっても自分がトラブルに巻き込まれなければいいと思っていないかどうか。もしそうだとしたら是非止(や)めないで頑張ってもらいたい。貴君がそこで踏ん張ってくれることが自衛隊の精強性を維持することになるのだ。

 反対に何か新しい事を始めようとしたときに、それは問題になるのではないかとか、時期尚早ではないかとかの意見が出る。いわゆるつぶしの論理である。しかし自衛隊が一歩前進するためには常に新たなチャレンジが必要である。今までと同じやり方では何も変わらない。むしろ後退している可能性さえある。新たなことを始めようとするのだから摩擦があるのは当然である。絶対に問題がないと言い切れることなど殆どない。何か言われるぐらいのことは覚悟しておいた方がいい。しかし摩擦や問題を恐れていては一歩も前進できないこともまた事実である。失敗を恐れずにチャレンジを継続しなければならない。一般に真面目と云われる人ほど慎重になる傾向があるので、自分が真面目だと思っている人は注意する必要がある。慎重すぎる指揮官は決心が遅れ、適時適切な部隊行動を損なうこともある。或いは部下たちの成長の芽を摘んでしまう場合もある。何か問題が起こるかもしれないということで予防整備に走りすぎてはいけない。指揮官が予防整備症候群にかかってしまうと部隊の活力はどんどん失われていく。だから案外真面目な人が自衛隊をだめにすることがあるのだ。そこで部下たちの提案が自衛隊の精強化に貢献するものであるならば、それが外からとやかく言われるかもしれないという理由で、これを退けるべきでない。明らかに違法であるものは論外であるが、その他については始める勇気を持つことだ。よそから絶対に何も言わせないと自信を持てるまで行動しないようではタイミングを失ってしまう。それが違法であるとか明確に非常識であるとか思われるものでない限り、とやかく言われることなど気にしなければいいのだ。上司がそう思っていてくれると部下としてこれほど有り難いことはない。反日的な人たちに気を遣い過ぎてはそれらの人たちの思いで自衛隊が動かされてしまう。自衛隊は本来我が国を愛する国民の思いに応えて動かなければならないのだ。

 自衛隊の現状を見るに、止(や)めない勇気と始める勇気がとても大切であると思っている。各級指揮官は精神的に伸び伸びとしていなければならない。


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