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パートI 8 後輩に夢を与える

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8 後輩に夢を与える


 後任者が自分のポストに配置された場合、自分よりは楽に仕事ができ、自分よりは大きな力が振るえるようにしておくことは先輩の責任である。「今はいいよな。でもおまえたちの時代になったら大変だぞ」と言い残し何の責任も感じないようでは困るのだ。先輩は後輩に夢を与えなければならない。将来は少なくとも今よりは良くなるという夢である。当面の対応としてどんなに立派なものでも、それによって後輩が手足を縛られ、自分よりも困難な事態に直面することが予測されるような解決策では後輩に対して申し訳ないし、自衛隊の精強化には反するものとなる。私たちは常に、自分の判断が将来後輩たちに負の遺産を残すことがないよう配慮する必要がある。

 例えば空幕における防衛力整備について考えてみよう。航空機やミサイルシステムあるいは警戒監視レーダー等を整備する場合、もし1社独占の体制になるような選択をした場合は、後輩たちは会社間の競争をさせることもできないし、もちろん会社を選ぶことはできなくなる。1社に集中したほうが効率的という主張もあるが、短期的にはそうであっても長期的には高い買い物になる場合が多い。通常は各種不測の事態等を考慮して、最低2社の体制は残したほうが後輩のためになる。もちろんそれは空自のためであり、日本国のためでもあると思う。国の財政事情が許せば3社や4社の体制が望ましいが、通常はそれでは非効率であり、2社体制を目指し、国としては常にナンバー2の育成を心がけておけばよいのではないかと思う。ナンバー2の育成は、弱い者に味方するということであり、自衛官のメンタリティーにはぴったり来るのではないか。

 航空事故や服務事故等で基地対策を実施する場合は相手が空自の味方であるか否か、日本国民として国家の発展を真に願っているか否かが対応の重要な分かれ目になる。味方ではないと考えられる人やある種の思想を持った人に十分な誠意を尽くして説明したり、細かい調整をしたりするのは基本的に間違いである。また、説明者の選定に当たってはレベルを考慮する必要がある。群司令や団司令などがはじめから出て行くようでは相手に足元を見られるだけである。まして簡単に空幕から部長等が派遣されたりすれば、相手によっては現地指揮官を相手にしてくれなくなる。現地指揮官のステータスの低下は著しいものがある。一度中央から人が派遣されると、次回にはさほど必要がなくても「何故中央から人が来ないのか、現地を軽視しているのか」と言われるだろう。

 戦後我が国の外交が謝罪外交に徹したと言われているが、その結果はどうか。もっと謝罪しろと言われ状況はどんどん悪くなるだけである。その場を収めようとして1歩下がる、あるいはより誠意を尽くすことは、当事者にしては楽な選択である。しかしそのために後輩がもっと苦労するようでは正しい選択とはいえない。そうしないためには多少の摩擦を覚悟しても踏ん張ることだ。のらりくらりと不真面目にやることが必要な場合も多い。結局は誰かが踏ん張らなければならない状況がいつかは訪れる。防衛庁や自衛隊の基地対策が謝罪対策になってはいけない。自衛官は本質的に純粋な人が多く誠意を尽くせばいつかは分かると思っている人が多い。しかしある種の思想を持つ人たちには誠意を尽くしてはいけないのだ。毅然とした対応をしないと泥沼にはまるだけである。誠意を尽くすべきか否か、相手をよく見て判断しなければならない。そしてもっと大事なことは現地における対応を空幕においては支持することだ。これまで県知事や当該市長が中央を訪れ、現地部隊の対応に不満を漏らすこともあったが、よくよく調べてみれば、ほとんどの場合現地の対応は大筋で適正なものであったと記憶している。よく状況を調査することなく、現地で摩擦が起きたらいつでも部隊側に問題があると考えることは自信のなさの裏返しである。あるいは部内の誰かを攻撃したくて言っているに過ぎない。航空自衛隊はもっと自信を持っていい。

 我が国は中国や韓国に謝り続け、自衛隊は基地周辺に対し謝り続けるような構図に近づいているような気がしてならない。部隊指揮官等がもっと毅然として国民に接することができるようにしなければならない。彼らが精神的に萎縮して自信を失っているようでは自衛隊を精強にすることはできない。国の安全保障上マイナスである。そのためには中央における対応が毅然としたものでなければならない。防衛庁も空幕も部隊を守ることが必要であり、それによって部隊等からの信頼を得ることが必要である。部隊を攻撃し、部隊を弱体化しておいて中央のステータスを維持するというような馬鹿なことがあってはいけない。部隊を精強にすることは中央の責任そのものである。部隊があっての防衛庁、部隊があっての空幕である。決して「部隊は一体何をやっているんだ」などと言うなかれ。

  • (引用者注)太字は引用者による


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