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パートI 5 厳正な秩序と組織の能率は反比例する

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5 厳正な秩序と組織の能率は反比例する


 国家や社会には適度の秩序が必要であり、秩序が維持されていないとみんなが快適に暮らせない。今のイラクのことを考えれば良くわかると思う。昔の日本は、街中等において若い者が悪さをすれば年寄りがこれを諌めることができた。今では年寄りが注意でもしようものなら若い者に殴り飛ばされるので見て見ぬ振りをするしかない。勇気がないといって年寄りばかりを責めるわけにはいかない。戦後の学校教育において、個人の権利と自由ばかりが強調され、道徳教育を軽視してきた結果が傍若無人の若者を多数生み出している。他人の迷惑を顧みない若者が多すぎる。一時話題になった成人式の光景などは正に目にあまるものがある。目上の人を敬うということがきちんと教えられていれば、若者は年寄りの忠告に従うはずである。昔の日本にはそういう風土があった。しかし今の日本にはそれがない。学校の先生でさえも尊敬の対象にならない。

 一方自衛隊においては世間と違ってきちんとした秩序が維持されている。多くの心ある人達が自衛隊の各種行事や成人式等を見て、同世代の若い隊員が街中で見る若者達とまったく違っていることに感動される場合が多い。自衛隊においては目上の人あるいは上官を敬うという風土が出来上がっている。軍事組織である自衛隊にとっては、これは組織存立の要件であり、上官は権威のある偉い存在である。しかしながら上官が偉すぎると、一方では部下は精神的自由を失い適切な権限の委任が行われにくくなる。部下指揮官や幕僚が細かなことまで一々上官の御沙汰を仰ぐようになるし、意見具申や部下から上官に対する意見の表明も少なくなっていく。即ち自衛隊における厳正な秩序を徹底的に追求すると部下指揮官等の精神的硬直が起こる。行き過ぎるとイラクや北朝鮮のようになり、上司を満足させることが組織の目的になってしまう。航空自衛隊の現状を見るに組織の秩序は適正に維持されているので、上司が部下に対しよほど目に余るものは別として、礼儀正しさや完璧な手続きをあまり求めるべきでない。それを求めた途端に組織に硬直が起きる。厳正な秩序にも適度のあそびが必要であり、あそびがないと仕事の能率はどんどん低下する。規則ガチガチ型の人に改革のエネルギーや仕事の馬力が期待できないのはこのためである。指揮官は、部下にのびのびと仕事をして貰うことが大切である。厳正な秩序と組織の能率は反比例するのだ。

  • (引用者注)太字は引用者による。旧関東軍将校の独断専行もむべなるかな。


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