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パートI 1 80対20の法則

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pipopipo555jp

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1 80対20の法則


 SOCに入校していた頃に時間を有効に使うための本を読んだことがあった。その中に80対20の法則というのがあり、確か「目標の80%は20%の努力で達成できるが、目標の残り20%を積み上げるために80%の努力が必要である。従って時間を有効に使うためには目標の達成率を80%程度に抑えなければならない。」というような内容であったと記憶している。自衛隊に入隊以来、私の誤解かもしれないが、どんなことにも常に完璧を期すよう教えられていたような気がするので、当時の私にとっては大変に新鮮な印象があった。しかし今になって考えてみればこれは極めて真っ当なことであると思うし、いろんな場面に適用できるように思う。


 まず自分が自ら仕事をする場合において重要であると考える20%の仕事に80%の努力を集中した方が良い。そして残り80%の仕事を20%の労力で実施するのだ。これまでの部隊等における経験に照らしてみれば、これで必要な目標は達成できていたように思うし、効率的に業務が進んだようだ。組織において上の立場になればなるほどやることが多くて、全てについて完璧にやり遂げることはいかなる超人でも無理であるし、もしそれを求めると時間的に遅れ遅れになり結局は任務遂行ができないことになる。

 部下を使って仕事をする場合には、仕事の20%以内を掌握し80%以上は部下に完全に任せた方が良い。部下に任せるということは部下の決めた振り付けに従って踊ってあげるということである。部下を信頼するということである。しかしながらこの任せるということが極めて難しい。特に真面目といわれる人ほど全てを掌握したがる傾向があるような気がする。真面目な人はおそらく部下は自分と同じほどは真剣に仕事に取り組まないのではないかと深層心理で考える場合が多いのではないか。従って完全に任せることが心配になる。しかしそれでは仕事の能率も悪いし、部下も育たない。指揮運用綱要に「指揮の要訣は部下を確実に掌握し・・・」とあるが確実に掌握することと全てを掌握することとはまったく異なることである。

 さらに言えば自衛隊でも上級の指揮官になれば部内の仕事は20%ぐらいにして、自衛隊の外で自衛隊のための仕事をすることに80%以上の努力を費やすべきではないかと思っている。対外的には基地司令とか群司令とかのポストを得ないと、どんなに能力の高い人でも部外では相手にして貰えないことも多い。ポストを得た人はそこのところを十分に理解して部下にはできない仕事に努力を傾注すべきである。それは部隊や部下の努力を広報し、自衛隊を支援してくれる人を増やし、自衛隊に対する国民の理解を深めることにある。手を変え品を変え行われる国家安全保障にとって好ましくない活動に負けない親日活動を行うことは部隊長等の責任と認識すべきである。しかしながら対外的な行動は面倒だし、各種困難も伴う。またそれほど熱を入れなくても誰からも文句を言われない。部下を指導している方が楽である。いきおいエネルギーは内向きになりがちである。しかし指導と称して部下に任せるべき仕事に過度に介入することは部隊の精強化には逆効果であることを理解しなければならない。任せたことは指導しないで好きなようにやらせることだ。通常は部下の手のひらの上で踊ってやる覚悟が必要だ。

  • (引用者注)太字は引用者による


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