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【沖縄タイムス】命令 一層明確に/「軍の意体し 自決」
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http://www.okinawatimes.co.jp/news/2008-11-01-M_1-030-1_001.html
2008年11月01日【朝刊】 社会
2008年11月01日【朝刊】 社会
【沖縄タイムス】命令 一層明確に/「軍の意体し 自決」
「集団自決」訴訟の控訴審判決は、一審・大阪地裁判決の構成と内容をほぼ踏襲した。「『沖縄ノート』の記述は、戦隊長ら個人を特定していない」とする被告の大江・岩波側の主張は、一審に続いて退けたが、むしろ本筋では一審よりも踏み込んだ判断を示しており、再び被告側の全面勝訴といえる。(社会部・粟国雄一郎)
特筆されるのは、戦隊長による住民への直接命令について、「証するに足りる的確な証拠はないのが素直」とする一方で、「なかったかと断定できるかといえば、それもできない」として、一審判決が暗示していた直接命令の可能性をより明確に摘示している点だ。
梅澤裕氏については「集団自決」のための弾薬を求めに来た村の幹部らを引き下がらせただけで、玉砕の方針を撤回していないとし、「(幹部らは)日本軍ひいては梅澤隊長の意を体して自決を敢行したともいえる」と指摘。
赤松嘉次氏についても、渡嘉敷島で住民が「集団自決」に至った経緯に照らし、「自決を命じていないと断定できない」としている。
組織としての日本軍による命令と戦隊長命令とを区別した上で、米軍上陸の際は捕虜にならず、玉砕するという日本軍の方針があれば、部隊長が玉砕を指示することは避けられず、軍隊組織であればそれは命令を意味すると述べている。
控訴審判決は、「『集団自決』には複数の要因があり、軍命令などと単純化して語られるべきではない」と指摘した。この点を踏まえつつも、真実性が否定された戦隊長による直接命令は、その存在の可能性を併せ持っているということを、判決の解釈にあたっては留意するべきだ。
また名誉棄損と出版の差し止めをめぐる新たな司法判断は、新資料が出るたびに真実性について再考が要求されるなら、言論は萎縮しかねないとの懸念に基づく。時代の推移とともに、活発な批判と論議が不可欠な民主主義社会の理念をうたった意味で、意義は大きい。
研究の価値 後押し
三十一日にあった「集団自決」訴訟の控訴審判決で、継続して出版されている書籍について大阪高裁が「新しい資料の出現で真実性が揺らいだとしても、それだけで出版継続が違法とはならない」との初判断を示したことに、被告の岩波書店や支援者からは「画期的な判決だ」と喜びの声が上がった。
岩波書店の岡本厚編集局部長は「ここまでの内容は予想していなかった」と評価した。特に、判決が公益性の高い書籍などは「仮に後の資料からみて誤りと見なされても、言論の場において無価値なものとは言えない」と触れたことに、「異なる意見をぶつけて研究を深めていくのは、学問において当たり前のことだと示した」と解釈。「原告らは一部の異論をもって過去の研究成果を封じようとしたが、判決は『それは違う』とくぎを刺した。今後、同様の政治的意図をもつ訴訟は起こせなくなるだろう」と語った。
被告側の秋山幹男弁護士は閉廷後の会見で「民主主義社会にとって言論の自由がどれだけ大切かという私たちの主張が受け入れられた」と喜んだ。
座間味村出身の女性史家・宮城晴美さん(58)も「沖縄戦研究にとって力強い判決だ」と歓迎。「住民証言のよる研究の価値が再び認められた。私たちは従来のやり方に自信をもち、これからも自由に研究を進めていけばいい」と話した。
原告側 裁判の意義強調
原告代理人の徳永信一弁護士は判決後に会見し、「『集団自決』がなぜ起こったのかを広く国民の関心事にし、隊長命令自体は証拠がないことが明らかになった。それを踏まえた教科書検定が社会的影響を及ぼし続けていることで裁判の意義はあった」と強調した。ただ、「出版当時に真実相当性があれば、その後出てきた事情、証拠で真実性が揺らいでも、真実でないことが明白にならない限り、出版し続けることができるという判断は問題がある」と批判した。
原告の梅澤裕さんと赤松秀一さんの判決後の様子については「勝訴を確信していたので信じられないという様子だった。どういう理由で敗訴になったかを聞いていた」と述べた。