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【沖縄タイムス】史実継承 再び光/元戦隊長控訴棄却

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【沖縄タイムス】史実継承 再び光/元戦隊長控訴棄却

被告側「勝訴」喜ぶ/検定の「壁」突破へ力

 大阪高裁は三十一日、沖縄戦時に座間味、渡嘉敷で起こった「集団自決(強制集団死)」で、名誉の棄損を主張してきた元戦隊長らの訴えをことごとく退けた。「集団自決」の実相を伝える体験者、教科書検定撤回を求める県民大会実行委らは二度目の「勝訴」を喜んだ。一方、教科書執筆者は「訂正再申請への後押しだ」と教科書の記述復活に決意を新たにした。

 判決を受け、被告側の支援者らが三十一日夜、大阪市内で報告集会を開いた。「沖縄で良い報告ができる」「一審を上回る判決」と控訴棄却を喜び、会場は拍手に包まれた。

 「本当にほっとしている」と安堵の表情を見せた秋山幹男弁護士。「いったん出版を許されたものを、反対意見が出てきたからといって、出版を差し止めなければいけないのか悩んだ。判決は理論的に進化させてくれ、まったく新しい判断」と述べ、最高裁で一層の支援を呼びかけた。近藤卓史弁護士も「(裁判官は)事実についても細かく見ていた。理論的にも大変いい判決」と評価した。

 「高裁判決の意義」と題し、講演した県歴史教育者協議会の平良宗潤委員長は「(判決から)軍の強制を認めているということが読み取れる。沖縄戦の体験者の声、研究等が否定されるかと思ったが、勝訴判決を沖縄に持って帰ることができ、うれしい」と語った。

 高教組の松田寛委員長は「教科書問題が何だったのか、あらためて文部科学省に突きつけないといけない。沖縄での運動を再び盛り上げないといけない」と話した。

教科書執筆者ら歓迎

 控訴審判決で被告側が再び勝訴したことを教科書執筆者も歓迎するとともに、記述の再訂正申請への後押しになると受け止めている。

 東京都の坂本昇さんは「『集団自決』に日本軍のかかわりが否定できないことと、軍の強制ないし命令と評価する見解もあり得ると、一歩踏み込んだ表現があり、新しい前進だ。教科書づくりの大きな励ましになる」と喜び、教科書会社が判決を前向きに検討することを期待した。

 石山久男さんは「高裁判断は、国家権力の行為に対して言論の自由はより尊重されると明確に示した。教科書検定に照らすと、沖縄戦で国家権力の体現者であった軍の行為を批判的に記述する自由は尊重されないといけない」と指摘。

 「文科省の検定は、単に事実認定を誤っただけではなく、本来最も尊重されないといけない言論表現の自由を侵して、特定の見方だけを強制して教科書に記述させている」と批判した。

「問題終わってない」
体験者、語り継ぐ決意

 渡嘉敷島で「集団自決」を体験した金城重明さん(79)は「ほっとした。良識ある判断が出て、大変喜ばしい」と評価。ただ、「軍が主体となった残虐行為を行ったという事実を、文部科学省がなるべく薄めようとしている流れは変わっていない」と厳しい見方を示した。二〇〇七年九月の県民大会前後から、市民の前などで自身の体験を訴えている。ニューヨーク・タイムズやフランスのドキュメンタリーなど、海外メディアの取材も積極的に受けた。「沖縄戦当時は十六歳だったが、来年には八十歳になる。もう年だが、要望があれば証言するのは、わたしの務め」と強調した。

 「悲惨な体験の継承は体験者の問題でもあるし、現場の教師、ひいては国民の課題。歴史の真実を把握することで、将来に光が見えてくる」と訴えた。

 一方、座間味島で「集団自決」を体験し、自身や他の体験者の証言集を出版している宮城恒彦さん(74)は「地裁判決が覆ることはないと思っていた。当然の判決だ」と喜んだ。その上で「日本軍の強制」を示す記述が削除された高校歴史教科書の検定問題について「今回の裁判を根拠に記述を削除した文科省は記述を元に戻すべきだ。県民も厚い壁を突き破るために再び動いてほしい」と訴えた。

 渡嘉敷島で体験した吉川嘉勝さん(70)も「予想通りの判決でほっとした。教科書の記述回復が重要であり、この問題は終わっていない。検定意見撤回と記述の回復に向けて県民大会実行委員会は委員長を決め、政府に要請行動を展開してほしい」と語った。

ホッとしている
知事

 仲井真弘多知事は三十一日、「集団自決」訴訟で、大阪高裁が一審に続き原告側の請求を棄却したことについて、「個人の名誉にかかる点が争点になっていたのでコメントしにくい」と述べつつ、「高裁の棄却という判断をそのまま受け止めたい。大江さんの本で、県民の気持ちはある程度そういうものだ、と判断していただいた点にはホッとしている」との認識を示した。


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