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【読売】社説:「集団自決判決 検定の立場は維持すべきだ

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「集団自決判決 検定の立場は維持すべきだ

(11月1日付・読売社説)

 結論は1審判決と変わりはない。しかし、受け止め方によっては、沖縄戦の集団自決をめぐる歴史教科書の記述に、新たな混乱をもたらしかねない判決である。

 集団自決を命じたと虚偽の記述をされ名誉を傷つけられたとし、旧日本軍の守備隊長だった元少佐らが、作家の大江健三郎氏と岩波書店に出版差し止めと損害賠償を求めた控訴審で、大阪高裁は1審判決を支持し、原告の控訴を棄却する判決を言い渡した。

 裁判では、隊長命令説が長い間定説となっていた渡嘉敷島と座間味島の集団自決について、軍命令の有無が争われた。

 控訴審判決は、集団自決に日本軍が深く関(かか)わっていることは否定できず、「これを総体としての日本軍の強制ないし命令と評価する見解もあり得る」とした。1審判決にはなかった見解である。

 集団自決の背景に軍の「関与」があったこと自体を否定する議論は、これまでもなかった。

 昨年春の教科書検定では、沖縄の集団自決に日本軍の「関与」はあったが、「強制」「命令」は明らかでないとする検定意見が付けられた。「関与」と「強制」「命令」を混同した議論など、決してあってはならないことだ。

 一方で判決は、隊長が集団自決を命令したという事実の有無については、断定することはできないとした。

 渡嘉敷島の集団自決の隊長命令説をめぐっては、生存者を取材した作家の曽野綾子氏が1973年に出した著書によって、その根拠が大きく揺らいだ。

 座間味島の守備隊長に、自決用の弾薬をもらいに行って断られたという証言を盛り込んだ本は2000年に刊行されている。

 判決は、新資料が出現して、従来の主張の真実性が揺らいだ場合でも、「社会的な許容の限度を超えると判断される」などの要件を満たさなければ、直ちに書籍の出版を継続することが違法になると解するのは妥当でないとした。

 公共の利害に深く関わる事柄については、論者が萎縮(いしゅく)することなく、批判と再批判を繰り返していくことが、民主主義社会の存続の基盤だとも指摘した。

 「言論の自由」を守るということでは、その通りだ。

 しかし、控訴審判決でも日本軍が集団自決を命令したと断定されなかった以上、「軍の強制」といった記述は認めないとする教科書検定意見の立場は、今後も維持されるべきだろう。

(2008年11月1日01時37分 読売新聞)


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