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九 目をつむっては真実を知ることはできない

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中国女性にとっての日中十五年戦争

九 目をつむっては真実を知ることはできない

最後に最近の私の東洋史概説を聴いた学生の感想文を二つ紹介して本稿の結びに代えたい。ともに日中十五年戦争における日本の加害の歴史を正視することを訴えている。
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◇我々日本人は、日中戦争における加害者意識よりも東京空襲や広島・長崎への原爆投下などによる被害者意識のほうが強い。その理由は日本の歴史教育にもよるが、戦闘に参加した人々が人としての道理にもとづく反省をしていないことが大きい。上官の命令だからとか、当時の情勢だからしかたなかったとか、天皇、国のためだったなどと責任を転嫁せずに、事実を事実として認めありのままに伝えることが重要である。日本は侵略戦争をしたというのに、軍人には恩給を支給しているが、日本が被害を加えた国の人々には何も補償していない。この点で他国よりも自国を優先する姿勢があらわれていないか。我々日本人が日中戦争で犯した罪を直視し、それを積極的に公表していくことが必要である。事実は隠すことはできないのだから。(Y.J)

◇日本人は日中の間におきた悲しい現実に無関心である。日本人が大陸でしてきたことを考えると中国・韓国・東南アジアの人々から憎まれても当然であると考える。日本では自分のしてきた歴史的過ちを目をつむってしまうことがよくある。しかし目をつむってしまっては何も真実を知ることも、傷ついた人の心を知ることも、人の痛みを知ることもできないのである。私は講義を受けてすべてのことに無知であった自分に怒りを覚えた。また多くの映像が語っている、また映し出している事柄を恐ろしく思った。人間はいつでも加害者になることができる。私にもあのような残虐な行為をしている日本人の血が流れていると思うと恐ろしさを感じた。しかし、いつも人間があのようではないことを知らなければならない。戦争という狂気が人々をそうさせてしまったのである。
日本が中国や他のアジアの人々に残した傷は深く消えることはないかも知れない。だが、彼ら
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は新しい関係を私たちと築こうとしている。私たちが彼らにできる謝罪は、賠償の問題だけでなく、自分の国が犯した過ちに目をつむることなく、知らなければならない歴史を知り、二度と不幸な侵洛戦争をおこさないようにすることである。私たちが彼らの傷の痛みを少しでも理解したとき、彼らも本当に心を開いてくれるのではないだろうか。もっと反省の心を一人ひとりがもち、戦争の歴史を理解すべきだと思う。(M・M)

※本稿の五-八は拙稿「中国の女性にとっての日中十五年戦争」(『季刊中国』二六号、一九九一年秋季号)の一部を加筆訂正したものである。
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