15年戦争資料 @wiki

ニ 南京大虐殺論争の結末

最終更新:

pipopipo555jp

- view
メンバー限定 登録/ログイン

南京大虐殺の真相

二 南京大虐殺論争の結末

教科書裁判における論争と深くかかわりをもちながらも、べつなかたちで南京大虐殺をめぐる論争が展開されてきた。それは、一九七一年に『朝日新聞』に連載された本多勝一氏のルポ『中国の旅』(のちに朝日文庫として収録)をきっかけにしてはじめられたもので、同氏や洞富雄氏が明らかにした
南京大虐殺の事実を、「まぼろしだ」、「虚構だ」として否定しようとした人びととのあいだで行なわれた。

しかし、いまでは鈴木明、田中正明、山本七平、渡部昇一氏らの「まぼろし説」、「虚構説」は完全に論破され、破綻している。かわってあらたな南京大虐殺否定論として登場してきたのが、『南京事
144

件』(中公新書)を書いた秦郁彦氏と板倉由明氏(南京事件研究家を自称)らの「虐殺少数説」である。それは、南京大虐殺を数の問題にすりかえ、被虐殺者の数はせいぜい一、二万人から四万人であり、中国のいう三〇万人の大虐殺は虚構であるというものである。

南京大虐殺をめぐるこれらの論争の経過ならびにその背景については、私自身すでに論じたことがあるし(拙稿「南京大虐殺はなかったのか」、歴史教育者協議会編『一〇〇問一〇〇答 日本の歴史』河出書房新社、同「南京事件研究をめぐる状況と問題」、『歴史学研究』第五七一号)、本稿で引用・紹介した参考文献のなかで他の人も論じているので、ここで屋上屋を架すことは避けたい。

南京大虐殺が、もはや否定できない歴史事実と認められた以上、いったいそれはどれぐらいの規模と内容をもったものであったのか、その全貌を明らかにする研究作業が今後求められることになる。

そこで、本稿では、南京大虐殺事件の実像に迫るためにその前提作業として、全体像のデッサンをこころみることにしたい。


目安箱バナー