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第4・3 争点2(名誉毀損性の有無)について

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pipopipo555jp

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沖縄集団自決裁判大阪地裁判決
事実及び理由
第4 当裁判所の判断

第4・3 争点2(名誉毀損性の有無)について



(1)(「太平洋戦争」の記述)*

本件書籍(1)の発行年月日,発行部数及び本件記述(1)は,第2・2(3)アのとおりである。

本件記述(1)には,
「座間味島の梅沢隊長は,老人・こどもは村の忠魂碑の前で自決せよと命令し」
たなどとの記述があり,本件記述(1)は,原告梅澤が部隊の食糧を確保するために本来,保護してしかるぺき老幼者に対して無慈悲に自決することを命じた冷徹な人物であるとの印象を与えるものであって,原告梅澤の客観的な社会的評価を低下させる記述であることは明らかである。

(2)(「沖縄ノート」の記述)*

ア(書籍の概略と記述)*

本件書籍(2)の発行年月日,発行部数及ぴ沖縄ノートの各記述は,第2・2(3)イのとおりである。

イ(隊長が命令を発したという記述)*

第2・2(3)イのとおり,沖縄ノートの69頁では,座間味島と渡嘉敷島でのそれぞれの集団自決を併せて慶良間列島の集団自決と包括的に捉えた上で,その原因が日本軍の命令によるものであるとして,集団自決命令の主体を特定人としないような記述がなされているものの,その記述の直後で,慶良間列島の集団自決を指して「この事件」とした上で,
「この事件の責任者」
が沖縄に対するあがないをしておらず,このような責任者の態度について
「この個人の行動の全体は,いま本土の日本人が綜合的な規模でそのまま反復している」
との記述がなされているから,慶良間列島の集団自決について,自決命令を発した人物が存在するような記述の仕方となつている。

また,第2・2(3)イのとおり,沖縄ノートの各記述においては,
「渡嘉敷島で沖縄住民に集団自決を強制したと記憶される男」
「『命令された』集団自殺を引き起こす結果をまねいたことがはっきりしている守備隊長」,
「慶良間の集団自決の責任者」
などとの表現が使用され,それ以外の部分でも,渡嘉敷島の集団自決の責任者が,渡嘉敷島の旧守備隊長である旨の記述が繰り返されているから,渡嘉敷島の守備隊長が渡嘉敷島の住民に対し自決命令を発したと読める記述となっていることが認められる。

ウ(社会的評価を低下させる記載)*

沖縄ノートの各記述における座間味島及び渡嘉敷島の守備隊長が,他の諸文献等と併せて考えると,それぞれ原告梅澤及ぴ赤松大尉であると特定ないし同定し得ることは,前2において判示したとおりである。

本件記述(2)は,座間味島及ぴ渡嘉敷島を含む慶良間列島での集団自決が日本軍の命令によるものであるとし,慶良間列鳥での集団自決の責任者の存在を示唆しているから,沖縄ノートの各記述の他の記載と併せて読めぱ,座間味島及ぴ渡嘉敷島の守備隊の長である原告梅澤及ぴ赤松大尉が集団自決の責任者であることを窺わせるものである。したがって,本件記述(2)は,集団自決という平時ではあり得ない残虐な行為を命じたものとして,原告梅澤及ぴ赤松大尉の客観的な社会的評価を低下させるものと認められる。

本件記述(3)ないし本件記述(5)は,
「渡嘉敷島で沖縄住民に集団自決を強制したと記憶される男」
「『命令された』集団自殺をひきおこす結果をまねいたことのはっきりしている守備隊長」
「慶良間の集団自決の責任者」
などと記載し,赤松大尉が渡嘉敷島での集団自決を強制したことを前提とする記述になっており,集団自決という残忍な行為を強制したものとして,赤松大尉の客観的な社会的評価を低下させる記載であることは明らかである。


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