第3・4(2)エ(オ) 自決命令の命令者・伝達者・受領者が不在であること
赤松大尉は,自決命令を出したことを明確に否定している(甲B2),また,恩納河原に避難中に住民に伝えられたとされる自決命令は,誰を通じて,住民の誰に伝えられたのか,全く不明である。命令者も受領者も伝達者も分からない命令はあり得ない。
赤松大尉から自決命令が出されるとすれぱ,副官であった知念証人を通じてであるはずであるが,前記のとおり,知念証人は自決命令が出た事実を否定する(乙9・773頁上段)。知念証人は,地下壕内の将校会議についても否定している。
仮に自決命令が出たとすれば,その命令が村に伝達される経過が必要である。伝達役として考えられるのは,兵事主任,防衛隊長,駐在巡査であるが,古波蔵村長によれぱ,渡嘉敷村において,軍から命令が村に伝達される場合の伝達者は,安里巡査であった(甲B18)。安里巡査は赤松大尉から自決命令が出たことを認めておらず(甲B16),安里巡査が自決命令を伝達していないことは明らかである。
さらに,古波蔵村長,富山兵事主任,防衛隊長の屋比久孟祥のうち,誰が自決命令を受領したのか明らかにした資料はない。