第2・2(4) (その出版目的)*
ア(「太平洋戦争」)*
「太平洋戦争」が歴史研究書であり,本件記述(1)が公共の利害に関するものであることは当事者間に争いはなく,それがもっばら公益を図る目的によるものであることについては、それが公益を図る目的も併せもってなされたものであるとの限度で当事者間に争いはない。
イ(「沖縄ノート」)*
沖縄ノートは,被告大江が,沖縄が本土のために犠牲にされ続けてきたことを指摘し,その沖縄について「核つき返還」などが議論されていた昭和45年の時点において,沖縄の民衆の怒りが自分たち日本人に向けられていることを述べ,「日本人とはなにか,このような日本人ではないところの日本人へと自分をかえることはできないか」との自問を繰り返し,日本人とは何かを見つめ,戦後民主主義を問い直したものである。
沖縄ノートの各記述は,沖縄戦における集団自決の問題を本土日本人の問題としてとらえ返そうとしたものであり,沖縄ノートの各記述は公共の利害に関する事実に係るものである。