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判決要旨(プレス用に裁判所が配布)

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沖縄集団自決裁判大阪地裁判決

判決要旨(プレス用に裁判所が配布)



主文


1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。


判決要旨


1 「沖縄ノート」は座間味島と渡嘉敷島の元守備隊長を原告梅澤及び赤松大尉だと明示していないが、引用された文献、新聞報道などで同定は可能であり、本件各書籍の各記載は、原告梅澤及び赤松大尉が残忍な集団自決を命じた者だとしているから原告梅澤及び赤松大尉の社会的評価を低下させる。
判決本文参照第4・2 争点1(特定性ないし同定可能性の有無)について ,第4・3 争点2(名誉毀損性の有無)について

2 「太平洋戦争」は、太平洋戦争を評価、研究する歴史研究書で、「沖縄ノート」は日本人とは何かを見つめ、戦後民主主義を問い直した書籍であって、原告梅澤及び赤松大尉に関する本件各記述を掲載した本件各書籍は、公共の利害に関する事実に係り、もっぱら公益を図る目的で出版されたと認められる。
判決本文参照第4・4 争点3(目的の公益性の有無)について

3 原告らは、梅澤命令説及び赤松命令説は集団自決について援護法の適用を受けるためのねつ造だと主張するが、複数の誤記があるものの、戦時下の住民の動き、非戦闘員の動きに重点を置く戦記として資料価値を有する「鉄の暴風」、米軍の「慶良間列島作戦報告書」が援護法の適用が意識される以前から存在し、ねつ造の主張には疑問があり、原告らの主張に沿う照屋昇雄の発言は、その経歴等に照らし、また宮村幸延の「証言」と題する書面も、同人が戦時中在村していなかったことや作成経緯に照らして採用できず、「母の遺したもの」によってもねつ造を認めることはできない。
判決本文参照第4・5(3) 援護法の適用問題について

4 座間味島及び渡嘉敷島ではいずれも集団自決に手榴弾が使われたが、多くの体験者が、日本軍の兵士から米軍に捕まりそうになった際の自決用に交付されたと語っていること、沖縄に配備された第32軍が防諜に意を用いており、渡嘉敷島では防衛隊員が身重の妻等の安否を気遣い数回部隊を離れたために敵に通牒するおそれがあるとして処刑されたほか、米軍に庇護された2少年、投降勧告に来た伊江島の男女6名が同様に処刑されたこと、米軍の「慶良間列島作戦報告書」の記載にも日本軍が、住民が捕虜になり、日本軍の情報が漏れることを懸念したことを窺わせること、第1、第3戦隊の装備から手榴弾は極めて貴重な武器であり、慶良間列島が沖縄本島などと連絡が遮断され、食糧や武器の補給が困難だったこと、沖縄で集団自決が発生したすべての場所に日本軍が駐屯しており、日本軍が駐屯していなかった前島では集団自決が発生しなかったことなどの事実を踏まえると、集団自決については日本軍が深くかかわったと認められ、島で原告梅澤及び赤松大尉を頂点とする上意下達の組織であったことからすると、それぞれの島における集団自決に原告梅澤及び赤松大尉が関与したことは十分に推認できるけれども、自決命令の伝達経路などが判然としないため、本件各書籍に記載された通りの自決命令それ自体まで認定することには躊躇を禁じ得ない。

 原告梅澤及び赤松大尉が集団自決に関与したものと推認できることに加え、2005年度までの教科書検定の対応、集団自決に関する学説の状況、判示した諸文献の存在とそれらに対する信用性についての認定及び判断、家永三郎及び被告大江の取材状況等を踏まえると、原告梅澤及び赤松大尉が本件各書籍記載の内容の自決命令を発したことを直ちに真実であると断定できないとしても、その事実については合理的資料もしくは根拠があると評価できるから、本件各書籍発行時に、家永三郎及び被告らが本件各記述が真実であるとと信じるについて相当の理由があったものと認めるのが相当であり、それは本訴口頭弁論終結時においても径庭(けいてい)はない。

 したがって被告らによる原告梅澤及び赤松大尉への名誉棄損は成立せず、それを前提とする損害賠償はもとより本件各書籍の出版等の差し止め請求も理由がない。


5 「沖縄ノート」は赤松大尉へのかなり強い表現が用いられているが、「沖縄ノート」の主題等に照らして、被告大江が赤松大尉に対する個人攻撃をしたなど意見ないし論評の域を逸脱したとは認められない。
判決本文参照第4・6 争点6(公正な評論性の有無)について


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