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読売 大江さん「主張読み取ってくれた」元少佐側は「控訴審ある」

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大江さん「主張読み取ってくれた」元少佐側は「控訴審ある」



 沖縄戦の集団自決を巡る名誉棄損訴訟で28日、旧日本軍が深くかかわったと認め、原告の訴えを退けた大阪地裁判決。

 被告のノーベル賞作家で『沖縄ノート』著者の大江健三郎さん(73)は「私の主張をよく読み取ってくれた」と静かに受け止め、自決を命じたと記述されたとして名誉回復を求めていた元少佐・梅沢裕さん(91)ら原告は落胆し、記者会見に姿を見せなかった。

 この日は渡嘉敷島で島民が集団自決してから63年となる「慰霊の日」。沖縄県民らも、重い歴史をかみしめ、判決を受け止めた。

 傍聴席が埋まった大阪地裁202号大法廷。午前10時、深見敏正裁判長が「原告の請求を棄却する」と主文を言い渡すと、被告席の大江さんは表情を変えることなく前方を見つめた。

 「沖縄で集団自決が発生したすべての場所に日本軍が駐屯していた」「集団自決には軍が深くかかわったと認められる」……。

 中空を眺めるようにしながら、判決要旨の朗読に耳を傾け、閉廷後、裁判長に向かって深く一礼した。

 一方で、原告席の梅沢さんと赤松秀一さん(75)は厳しい表情を見せた。少し身を乗り出すようにして朗読を聞き、納得できないのか、閉廷後も梅沢さんはしばらく席に座り続けた。

 大江さんは判決後、約30分間、記者会見し、笑顔を交えて所感を述べた。主な一問一答は次の通り。

 ――判決への感想は

 「裁判長が沖縄ノートを正確に読んでくださったこと、それが最も強い感銘だった。教科書では『軍の関与』と記述されることになったが、教師はその恐ろしい意味を子どもたちに教えることができる」

 ――この裁判の意義をどう考えるか

 「裁判が起こされた背景には、政治的な大きな動きがあった。日本人が戦争で犠牲になるということを精神的、倫理的、道徳的にどう認識するのか、ということが問われていた」

 ――原告への思いは

 「もう一度沖縄ノートを読んでもらえれば個人的なひぼう中傷でないことがわかっていただけると思う」

          ◇

 原告側弁護団の徳永信一弁護士らは、原告らの悔しさを代弁した。

 ――判決後の、梅沢さん、赤松さんの様子は

 「『本当ですか』と落胆した表情を浮かべていた。赤松さんは『兄が命令を出していないということは裁判所も分かってくれたんですよね。でも、なぜ、負けたんですか』と、悔しそうだった。梅沢さんは『残念な判決だ。控訴審でも闘うから』と言い、支援者と握手をかわしていた」

 ――判決の内容をどう受け止めるか

 「『躊躇(ちゅうちょ)を覚える』との表現ではあるが、隊長命令を認めなかったことは評価できるが、長期間が経過しているから(裁判所の認定には限界がある)といった部分も含め、『裁判所は逃げたな』という印象だ」

(2008年3月28日15時37分 読売新聞)
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