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産経 元守備隊長の請求棄却 沖縄集団自決訴訟

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pipopipo555jp

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元守備隊長の請求棄却 沖縄集団自決訴訟 (1/4ページ)

2008.3.28 11:14

 先の大戦末期の沖縄戦で、住民に集団自決を命じたとする誤った記述で名誉を傷つけられたとして、旧日本軍の元戦隊長と遺族が、ノーベル賞作家の大江健三郎氏(73)と岩波書店(東京)に、大江氏の著書『沖縄ノート』などの出版差し止めや損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、大阪地裁であった。深見敏正裁判長は「書籍に記載された内容の自決命令はただちに真実と断定できない」としながらも「(命令の)事実については合理的資料や根拠がある」と認定。名誉棄損の成立を認めず、原告側の請求をすべて棄却した。原告側は控訴する方針。

 戦後、定説のように流布された「隊長(軍)命令説」の真実性が最大の争点。判決は、真実性について明確には認めなかったが、大江氏らが命令説を真実と信じた相当の理由があったとして、名誉棄損を否定する「真実相当性」を棄却の根拠とした。

 原告は元座間味島戦隊長で元少佐の梅沢裕さん(91)と、元渡嘉敷島戦隊長の故赤松嘉次・元大尉の弟、秀一さん(75)。対象となったのは『沖縄ノート』と、歴史学者の故家永三郎さんの『太平洋戦争』(岩波書店)の2冊。

 深見裁判長は、多くの体験者が手榴(しゆりゆう)弾は自決用に交付されたと語っている▽沖縄に配備された第32軍は防諜を重視し、渡嘉敷島では部隊を離れた防衛隊員の島民を処刑した▽自決のあったすべての場所に日本軍が駐屯し、駐屯しなかった場所では自決がなかった▽軍は両元隊長を頂点とする上意下達の組織だった-などとして軍や元隊長が自決にかかわったと認めた。

 大江氏は昭和45年に刊行された『沖縄ノート』で、研究者による戦史の文言を引用して両島の隊長命令説を記述。特に赤松元大尉については「集団自決を強制したと記憶される男」「戦争犯罪者」などと記した。


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2008.3.28 11:14

 隊長命令説をめぐっては、作家の曽野綾子さんが渡嘉敷島の現地取材を経て48年に出版した『ある神話の背景』で疑問を投げかけた。さらに、座間味島の生存者の女性が生前に「軍命令による自決なら遺族が年金を受け取れると説得され、偽証した」と吐露したことを、娘が平成12年に出版した本で明らかにした。

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 藤岡信勝・拓殖大教授の話 「全くの不当判決だ。大江氏は『沖縄ノート』で根拠なく隊長命令があったと明言し、なかったという住民らの証言に耳を傾けようとしなかった。さらに自決するなと言わなかった元隊長の不作為を《命令》だったと、裁判のための理屈を並べた。この論理が法廷で通用するはずがない。大江氏ほどの文学者が《命令》という日本語をねじ曲げていることにほかならない。最近は座間味島の元隊長が、自決をするなと止め、自決のために忠魂碑前に集まった住民らを解散させたとする証言も出てきた。いまだ命令があったとする主張を続けるのは許し難い。それだけに全く想定できない判決で残念だ」


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 沖縄戦の集団自決をめぐる訴訟で、大阪地裁が28日言い渡した判決の要旨は次の通り。



【1】 『沖縄ノート』は、座間味島及び渡嘉敷島の守備隊長をそれぞれ原告梅沢及び赤松大尉であると明示していないが、引用された文献、新聞報道等でその同定は可能であり、本件各書籍の各記載は、原告梅沢及び赤松大尉が残忍な集団自決を命じた者であるとしているから、原告梅沢及び赤松大尉の社会的評価を低下させる。

【2】 『太平洋戦争』は、太平洋戦争を評価、研究する歴史研究書であり、『沖縄ノート』は、日本人とは何かを見つめ、戦後民主主義を問い直した書籍であって、原告梅沢及び赤松大尉に関する本件各記述を掲載した本件各書籍は公共の利害に関する事実に係わり、もっぱら公益を図る目的で出版されたものと認められる。

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【3】 原告らは、梅沢命令及び赤松命令説は集団自決について援護法の適用を受けるためのねつ造であると主張するが、複数の誤記があると認められるものの、戦時下の住民の動き、非戦闘員の動きに重点を置いた戦記として資料価値を有する『鉄の暴風』、米軍の『慶良間列島作戦報告書』が援護法の適用が意識される以前から存在しており、ねつ造に関する主張には疑問があり、原告らの主張に沿う照屋昇雄の発言はその経歴等に照らし、また宮村幸延の『証言』と題する書面も同人が戦時中在村していなかったことや作成経緯に照らして採用できず、『母の遺したもの』によってもねつ造を認めることはできない。

【4】 座間味島及び渡嘉敷島ではいずれも集団自決に手榴弾が利用されたが、多くの体験者が日本軍の兵士から米軍に捕まりそうになった際の自決用に手榴弾が交付されたと語っていること、沖縄に配備された第三二軍が防諜に意を用いており、渡嘉敷島では防衛隊員が身重の妻等の安否を気遣い数回部隊を離れたために敵に通謀するおそれがあるとして処刑されたほか、米軍に庇護された2少年、投降勧告に来た伊江島の男女6名が同様に処刑されたこと、米軍の『慶良間列島作戦報告書』の記載も日本軍が住民が捕虜になり日本軍の情報が漏れることを懸念したことを窺わせること、第一、三戦隊の装備からして手榴弾は極めて貴重な武器であり、慶良間列島が沖縄本島などと連絡が遮断され、食糧や武器の補給が困難であったこと、沖縄で集団自決が発生したすべての場所に日本軍が駐屯しており、日本軍が駐屯しなかった渡嘉敷村の前島では集団自決が発生しなかったことなどの事実を踏まえると、集団自決については日本軍が深く関わったものと認められ、それぞれの島では原告梅沢及び赤松大尉を頂点とする上意下達の組織であったことからすると、それぞれの島における集団自決に原告梅沢及び赤松大尉が関与したことは十分に推認できるけれども、自決命令の伝達経路等が判然としないため、本件各書籍に記載されたとおりの自決命令それ自体まで認定することには躊躇を禁じ得ない。


元守備隊長の請求棄却 沖縄集団自決訴訟 (4/4ページ)

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 原告梅沢及び赤松大尉が集団自決に関与したものと推認できることに加え、平成17年度までの教科書検定の対応、集団自決に関する学説の状況、判示した諸文献の存在とそれらに対する信用性についての認定及び判断、家永三郎及び被告大江の取材状況等を踏まえると、原告梅沢及び赤松大尉が本件各書籍記載の内容の自決命令を発したことを直ちに真実であると断定できないとしても、その事実については合理的資料若しくは根拠があると評価できるから、本件各書籍の各発行時において、家永三郎及び被告らが本件各記述が真実であると信じるについても相当の理由があったものと認めるのが相当であり、それは本訴口頭弁論終結時においても変わりはない。

 したがって、被告らによる原告梅沢及び赤松大尉に対する名誉毀損は成立せず、それを前提とする損害賠償はもとより本件各書籍の差し止め請求も理由がない。

【5】 『沖縄ノート』には赤松大尉に対するかなり強い表現が用いられているが、『沖縄ノート』の主題等に照らして、被告大江が赤松大尉に対する個人攻撃をしたなど意見ないし論評の域を逸脱したものとは認められない。
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