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毎日 集団自決訴訟:軍の関与…法廷内に支援とため息入り混じる

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集団自決訴訟:軍の関与…法廷内に支援とため息入り混じる




原告敗訴の判決に喜ぶ大江健三郎氏の支援者ら=大阪市北区で2008年3月28日午前10時5分、貝塚太一撮影



 「集団自決には旧日本軍が深くかかわった」。ノーベル賞作家・大江健三郎さん(73)の「沖縄ノート」の記述などを巡り、旧日本軍の元戦隊長らが出版差し止めなどを求めていた訴訟。28日、大阪地裁の深見敏正裁判長が、原告敗訴の主文を読み上げ、軍の関与に触れると、傍聴者で満席の202号大法廷は「よし」という声とため息が入り交じった。【川辺康広、田中龍士、藤田剛】

 廷内で判決を聞いた大江さんは、紅潮した表情でやや視線を上げて聴き入った。原告で元座間味島戦隊長だった梅沢裕さん(91)と、渡嘉敷島の戦隊長だった赤松嘉次さん(故人)の弟秀一さん(75)は眉間(みけん)にしわを寄せ硬い表情のまま。安堵(あんど)した様子の大江さんと対照的に、閉廷後もしばらく席を立てなかった。

 判決後、弁護団とともに大阪市北区で会見した大江さんは「私は原告らの個人名を挙げて罪人扱いしたことはない。当時の皇民教育を背景に起きたことと考えているからだ。判決は私の『沖縄ノート』をよく読み込んでくれた」と満足そうに語った。

 歴史認識を巡る論争にも発展した同訴訟。大江さんは「裁判の背景には政治的な大きな動きがあった。その一つが03年の有事法制の立法化だった」と指摘。「戦争をできるようにする制度を、倫理的に拒むため、これからも沖縄ノートで書いたことを主張し続けたい」と語った。原告に対しては「私の著書を読んでいただければ、個人をひぼうするために書いたものではないと分かってもらえると思っている」と話した。

 この日は自ら望んで大阪地裁に来たという大江さん。「裁判に来た意味があった」とわずかに表情を緩めた。集団自決への軍の関与を認定した判決の意義については「教育現場で安心して教えることができることが大きな収穫」と話した。

 一方、原告側代理人の徳永信一弁護士は判決後の会見で、「不当な判決だ。ただちに控訴する。軍の関与が推認できるということをもって、隊長命令があったという表現の正当性を認めたのは論理の飛躍」と口を震わせた。

 原告の梅沢さんと赤松さんの2人は「非常に落胆している」との理由で会見に姿を見せなかった。弁護団によると、2人は「本当ですか」と驚き、梅沢さんは「控訴審でも闘う」と支援者と握手をして、決意を固くしていた。赤松さんは「亡くなった兄が自決命令を発していないと裁判所も分かってくれたんですよね。でもどうして敗訴なんですか」と悔しがっていたという。

毎日新聞 2008年3月28日 11時34分(最終更新 3月28日 12時43分)
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