『黄昏抜歯』と『わたくし率 イン 歯ー、または世界』


歯  投稿者:津原泰水  投稿日:2010年 9月18日(土)15時31分19秒 	  通報 編集済 

 せんのレスポンスに記すかどうか迷った件を、やっぱり書いときましょうか。
 拙著を、そしてたぶん川上作品をも精読なさっているayanarinさん、唐突に『砂の器』と『人間の証明』に言及なさったのは、『綺譚集』のうちの「歯」をテーマにした作品との絡みですね? ええ、その着想は間違いなく僕が治療経験から得たものであり、当時意識しえた先人の作物といったら映画『白日夢』(リメイクがあったの!?)の一場面くらいでしょうか。原作とは無関係に近いと思っています。
 すでに読者や批評家から賛辞をたまわっていた着想であり、のちにそのヴァリエテが、着想面において絶賛されているのを見たときは、もちろん驚き、呆れました。ウェブでも簡単に検索できますね。じつに「未熟」な人々です。
 しかしそんな「未熟」さを叩こうなんて気は、さらさらありません。そういう憤りには、自分自身、もう倦んでおり、曲がった根性を叩き直せない「状況の哀しさ」を問題にしている、とは最初から書いてきました。
 折原みと(漫画家)に比べりゃ、良心的ですよ。読者がどう感じられるかは別ですけど。

【追記5】おーい、知ったかぶりを重ねると追記が増えるぞ。べつに責めちゃいないんだから、無視すればいいじゃないか。
 僕が『イン歯ー』(って、俺はタイトルもなにも出していないのに……いやモロか)を読んだのは、読者からの指摘によってであり、ごく数日前ですよ。だって、そ、の、頃、不、意、に、献、呈、が、途、絶、え、た、か、ら。あとは、ほかの読者に比較してもらえばいいって話でしょ? どっちもそれなりに売れている本だから、比較しやすいと思うし。
 で、この話題は、1)客観的に見て執拗であり、2)明らかに2ちゃんねらーであり、3)自分の投稿は試金石であると公言している、ayanarinさんに対して津原が呈示し、その出方をうかがっていたというものでしかない。
「特定の歯に自分の消したい過去を託した女性が、その健康な歯を抜いてもらう話」を僕は2001年に書きました。おやおや。でも、それだけの話。

【追記7】確認しましたら、「黄昏抜歯」(雑誌掲載時は「かわたれ抜歯」)を僕が書き始めたのは2001年八月。完成は翌年の二月頭で、小説現代の同年三月号に掲載。ま、それだけ編輯者とやり取りを重ねた作品ってことです。担当は今は亡き名編輯者・岡圭介氏。
「彼は誰」という原義に重きをおいて「かわたれ抜歯」としていましたが、「かわたれ時」の間違った解釈を堂々と語る人がテレビやウェブ上に増えていたこと、そういう地口(に見えるもの)が今は理解されにくいであろうという編輯者の意見などをふまえ、『綺譚集』収録時に「黄昏抜歯」と改題しました。


件かく語りき  投稿者:津原泰水  投稿日:2010年 9月20日(月)15時26分55秒 	  通報 

「歯」の件が露見したのは偶然ですよ。君たちが騷ぎだした後だ。
 君たちの執拗さに僕の読者がキレなければ、僕は一生気付かなかった。気付いていたとて、ayanarinさんというトリックスターの存在がなければ、ここでは言及しなかった。そして川上さんのリンクがなければ、ここを読んでいる人なんて、せいぜい数十人に過ぎなかった。
 皮肉な話だね。
 でも安心したまえ。法的には盗作ではないし、担当者は頑として「似ていない」と云い張るよ。




97:やれやれ、僕は名を失った:2010/09/20(月) 21:00:45
尾崎問題に関して、真相は第三者の証言がない限り藪の中だけど、
イン歯と黄昏奥歯に関しての類似点に弁解の余地はない。
しかも黄昏奥歯のほうが前に発表されており、川上未映子は複数の津原著作を読んでいるとブログに書いている。
川上さんは時系列が全てのひとなのだから、以前に書かれていたものと発想、構造が似ていれば真似したと言われても反論できないでしょう。





344:やれやれ、僕は名を失った:2010/09/21(火) 22:59:09
もはや時系列だけの問題じゃない。
イン歯と黄昏抜歯の類似点は、客観的に
  • 奥歯に意識が宿っている
  • 意識は主に恋愛に関するものである
  • 抜く必要のない奥歯をあえて抜くことで恋愛に決着をはかろうとする
が挙げられる。
しかもイン歯において、なぜ脳じゃなくて歯なのかについての説明は一切ないが、
黄昏では、痛みや歯の音から過去を思い出して、という流れがある。
黄昏はイン歯より前に書かれており、川上は津原作品を読んで評価していた、
これだけの事実があって、全く知らなかったでは通らない。


746:やれやれ、僕は名を失った:2010/09/19(日) 21:37:57
津原泰水の黄昏奥歯を読んでみた。
わたくし率は奥歯に自我がある妄想で、黄昏は奥歯に思い出がある幻想。
そしてどちらも恋愛感情がからんでおり、奥歯を抜くことでそこから脱しようとする。
書き方は違うが、以上の構造は似ている。
わたくし率において、奥歯に自我があるというのは単なる妄想の域を出ず、
全く根拠が説明されていないが、
黄昏においては、歯痛から過去が繙かれる形になっており、一応の根拠がある。
パクリかどうか確かめようはないけれど、津原作品を読んでいたのだから、
全く関係がないというのは無理があるかと。


890:やれやれ、僕は名を失った:2010/09/24(金) 17:15:01
黄昏抜歯読んだ。既に指摘されているけど、以下類似点
  • イン歯では奥歯に自我があるという設定で、黄昏は奥歯に記憶があるという設定
  • イン歯では奥歯を見せろと片思いの人間に迫り、
 黄昏では奥歯の音や痛みから、歯を鳴らしていた女性(片思いの相手の恋人)を、さらに彼女を死なせたことを思い出す
 つまり両者とも恋愛がらみ
  • どちらの主人公も、片思い(の思い出)から決別するため、抜く必要のない奥歯を抜くよう歯医者に頼む
一番目だけなら、可能性が低いとはいえ偶然似ていたということはありえる。
でも、第二、第三まであるとなると、偶然では済まされない。
しかも川上さんは津原さんの著作を読んで、ベタ褒めしてるのだし。
最終更新:2010年10月17日 01:34