理由(リレー作品) by 151さん




奈緒子の腰を掴む手に力を込め、思いきり腰を引き、打ち付けた。
「はうぅっ!」
奈緒子が痙攣し、部屋にパァンと、肉のぶつかり合う激しい音が響く。
「やっ…やぁっ…」
よほど恥ずかしいのか、奈緒子の躰は小刻みに震えていた。
もう一度、腰を引き…
「んっ…んんーっ!!」
打ち付ける。
「あああぁっ!!」
再び奈緒子の絶叫をかき消すほどの打ち付け音がこだまする。
次第に突く速さを速めていくと、打ち付け音はパンパンパンッとリズミカルな音に変わり、
それに合わせて奈緒子の喘ぎも一際感極まったものになった。
「…っ!!くっ…うっあっ!!」
ペニスを膣壁で擦りあげられる快感に、俺も思わず声を漏らす。
かき混ぜられた愛液は泡立ち、四方に飛び散る。

限界はそう遠くない。
俺は奈緒子の腰にある手を、片方はクリトリスに、片方は乳房へと移動させる。
奈緒子の喘ぎ声を近くで聞きたいという理由も兼ねて、若干前屈みになる。
汗で背中や首筋に貼りついた、奈緒子の美しい髪の毛が、何とも艶めかしかった。
「あうっ!!ああぁんっ!!はんっ、はっ…ふあっ!!」
狂ったように喘ぐ奈緒子。
もっと乱れさせたい。まだ足りない。
クリトリスをこね回し、乳首をつまみ上げる。
瞬間、膣が痙攣し、ジュッと愛液が噴き出す。



実は奈緒子はもう何回か達しているのかもしれない。
そう思わざるを得ないほどの愛液の量。
奈緒子の太股を伝うこともなく、ボタボタとシーツに落ちていく。
顔や体が火傷したように熱いが、結合部の熱はその比ではなかった。
奈緒子に負けじと、俺も狂ったように腰を振る。
奈緒子も俺の動きに応えるように腰を上下させていた。

ふと、奈緒子がなにか訴えていることに気付く。
「あぁっ……だ、…さんっ……こっ…?はあぁんっ!」
このままでは喘ぎでうまく喋れないらしい。
射精しないよう丹田に力を込めながら、動きを緩める。
「はぁ、はぁ、…you?…何か、言ったか?」
俺の汗が奈緒子の背中にポタポタと落ちる。
行為に夢中で気が付かなかったが、奈緒子はいつの間にか快感以外の理由で涙を流していた。
嗚咽まじりに奈緒子が叫んだ。
「…ふっ、うっ…上田さんっ…どこ…?!…ふぅっ…私、怖っ…上田さんっ!」
それは奈緒子からの恐怖の訴えだった。
慌てて、奈緒子の躰を回転させ、向き合う形にする。
奈緒子の顔は涙と汗でグシャグシャだった。
「you、ここだ!俺はここにいるぞ!!」
目の前の奈緒子に、必死に自分の存在を訴える。
おそらく奈緒子は、あまりに激しく後ろから犯され、快感のあまり自分のおかれた状況が分からなくなった
のだろう。
誰に犯されているのかも分からなくなり、咄嗟に助けを求めたのが俺だった、と。



欲情のあまり自分を見失い、そして奈緒子までも錯乱させてしまった自分を心の中で強く叱咤する。
…くそっ!最低だな、俺は。


やっと自分の状況を思い出したのか、奈緒子の呼吸が落ち着いてくる。
「はぁ…ごめんなさい…私…混乱して…」
こんな時まで奈緒子は自分を責める。
せめてもの償いに、奈緒子の汗と涙を手で拭いながら、俺は首を横に振った。
「君は悪くない、俺が……っ!!」
俺の言葉を奈緒子の唇が遮った。
初めての奈緒子からの口づけ。
奈緒子が唇を離し、恥ずかしそうな表情で、ゆっくりした口調で、俺に言った。
「上田さん、好き…です」
やっと、本当にやっと、奈緒子が自分の気持ちを口にした。
言われなくとも分かってはいたが、やはりはっきりと奈緒子の口からそれを聞くと、
思わず感動で泣きそうになってしまった。
そんな俺を可笑しそうに見る奈緒子。
「んっ…上田さん、動いて…いいですよ」
まだ繋がっていたため、限界が近いペニスの動きが奈緒子にも伝わっていたらしい。
結合部から相手の感度を感じ取っていたのはどうやら俺だけではなかったようだ。
奈緒子にも俺が感じていることはどこまでもお見通しだったというわけか。

…やはり、こいつには敵わないな。
一人苦笑し、最後の突き上げを開始した。



「んっ、あんっ…あぁっ!!」
もう二度と奈緒子に俺の存在を忘れさせたりなどしない。
そんな思いを込め、奈緒子をきつく抱きしめる。
「うえださっ…あぁんっ!うえださんっ!!」
何度も俺の名を呼ぶ奈緒子が愛しくて抱きしめる力が強くなる。
グチュグチュと厭らしく音を立てながら秘部を突き上げる。
奈緒子も先程より積極的に腰を押しつけてくる。
一秒でも長く、奈緒子とこうしていたいという思いだけで射精を抑えてきたが、
もうとうにその限界を越えていた。
まだ達していないのが自分でも不思議なくらいだ。
だが、もう少し、できれば、奈緒子と一緒に…。
パンパンッと激しく腰を打ちつけ合い、お互いを貪る。
「あぁあんっ!!もっ…だめっ…はうっ、わ、たし…!!」
思いが通じたのか、奈緒子も絶頂が近いらしい。
「奈緒子、一緒に……っ!!」
名前を呼んだ瞬間、奈緒子の膣が格段に締まりを強める。
──グチャッ、ヌチュッ、クプッ
お互いの腰回りに飛び散った奈緒子の愛液が、潤滑剤となり俺達の高まりを助長する。
「あっ!あっ!上田、さっ…も、私…イッちゃ…!!!」
奈緒子から限界の申し出が上がり、いよいよ最後だと俺はピストンを強める。



「ああぁんっ!うえ、ださんっ!…すきっ!だい、すきぃっ!!……んあんっ!!」
「あぁ、はぁ、はぁ…俺も、好きだ…っ、奈緒子っ!」
奈緒子が俺の首に両手を回し、お互い熱で視界が定かでないまま、感覚だけで相手の唇を貪る。
汗や唾液で口の周りをお互いベトベトにさせながら、それでも俺達は限界まで口づけ合った。
今まで素直になれず、伝えられなかった思いも、理性の飛んだ今ならいくらだって口に出来る。伝えられる。
「っ!奈緒、子っ!奈緒子っ!」
「はあんっ!だめっ、もぉっ…イっちゃ、わた…し、だめっ、イくっ…!!あぁああんっ!!」
奈緒子が絶叫し、四肢を痙攣させ、膣がもの凄い勢いで伸縮を繰り返す。
結合部からパァンッ!というけたたましい肉のぶつかる音が発せられる。
急いで抜こうとする俺のペニスに、奈緒子の膣は逃がすまいと吸い付いてくる。
それでもなんとか俺は腰を引き、膣内に射精するのだけは避けようとした。
途端、奈緒子の足が、どう考えてもわざと、俺の腰を押さえつけた。
「っっ!!奈緒、子っ…うっ、あぁっ!!」
──ドクンッ!!
射精の瀬戸際だったペニスが、まだ伸縮を繰り返す膣内で保つ筈もなく、大量の精液が奈緒子の膣内に
注がれる。
「っく!……あっ!」
長い、長い射精が続き、俺は奈緒子の上に倒れ込まないよう、体勢を維持するだけで精一杯だった。



射精が終わり、それでもまだ少し勢いを残すペニスを膣から抜き取る。
同時に、ゴポッと音を立てて、奈緒子の膣から、俺の精液と奈緒子の愛液の混ざった液体が溢れ出る。
その卑猥な光景を、俺は朦朧とした意識のまま見つめた。
ゴポゴポと溢れ続けるそれに、先程の全てを放出しきるような射精が思い出される。
俺は奈緒子が苦しくないようにゆっくりと体を倒した。
二人の荒い息づかいだけが部屋にこだまする。


初めに言葉を発したのは俺だった。
「はぁ、はぁ…you、どうして?」
疲れ切った体を奮い立たせ、奈緒子の顔をのぞき込む。
「何の…ことですか?」
奈緒子もまだ、先の快感を色濃く残した表情で俺を見た。
「何って…どうして中で出させたんだ」
俺は奈緒子の先程の行動が理解できなかった。
奈緒子は顔を赤らめ、自嘲のような笑みを浮かべる。
「自分でも分からないんです。安全日でも中で…その、出すのは危険だって分かってはいたんですけど、
なんか上田さんの切なそうな顔見てたら、まだ離れたくない…って思って、気が付いたら…」
抱き合っている時、俺が奈緒子のことを愛しく思ったように、奈緒子も俺のことを…。
そう思うと奈緒子への気持ちが堰をきったように溢れ、俺は奈緒子をきつく抱きしめた。
「ちょっ…上田さん、痛いですよっ!」
奈緒子が照れたように笑う。



もっと早く抱き合えば良かった。
今までの奈緒子との関係があまりに心地よくて、それを失うのが怖くて、ずっと好きだと思っていたのに、
自分の気持ちをはっきりと伝えきれずにいた。
だが、事実奈緒子を抱いた今、奈緒子への想いが今までとは比べものにならないほど膨れ上がってるのを
強く実感する。

「…これからはもっと素直にならないとな」
「え?何か言いました?」
「いや、何でもない」
俺は宝物に触れる想いで、奈緒子にそっと口づけた。



「それは、そうとお互い体中ベタベタだな」
俺はいつも通りの明るい口調で奈緒子に話しかけた。
奈緒子がさっきまでの行為を思い出したのか赤面する。
「う…そうですね」
「どうだ?一緒にシャワーでも…」
「結構です」
俺の言葉を奈緒子は冷たく遮った。
一人、シーツで躰を隠したままベッドから降りる。
「ふっ、何を今更恥ずかしがってんだか…」
呆れたように吹きだし、奈緒子をからかう。
「う、うるさい!先にシャワー使うぞ」
俺をあしらい、風呂にいこうとする奈緒子。



…おもしろくないな。
ふと、机の上にあったあるものが俺の目に留まった。
「おおう?そうか、その手があったか……ちょっと待て、you」
奈緒子がうんざりとした表情で振り返る。
「何ですか?一緒にシャワーなら嫌ですよ」
「まぁ、いいから。youの横にある机に黄色の封筒があるだろう?」
奈緒子が机に目を遣り、封筒を手にする。
「これですか?」
「中を見てみろ」
ほくそ笑みながら、奈緒子の一挙一動を見守る。
奈緒子は中に入っていた紙切れに書かれた文字を読み上げた。
「なになに?…麻布十番高級焼肉店焼肉食い放題券?!?これ前にも見たことあるぞ…
ん?期限期日…今日まで?!?!」
奈緒子がゴクリと喉をならす。
「こ、これが何か?」
「また知人から手に入れてね。昨日まですっかり忘れていたんだ。でな、その券は二名限定なんだよ。
多くの友人に尋ねてみたんだが、残念なことに今日都合のつく奴がいなくて…」
奈緒子は顔をしかめて俺を見る。
「嘘つけ!友達いないだろ!」
「うるさい!いいから聞け!まあ、とにかくだ。しょうがないからその券のことは諦めようと
思っていたんだよ。とまぁ、それだけの話だ。……あぁ、引き留めて悪かったな。シャワーだろ?
行って来いよ」
奈緒子から券を取り上げようと手を伸ばすが、奈緒子は素早く俺の手から逃げる。
「……しかたないから、行ってあげてもいいですよ?」
…かかったな。
俺は心の中でにやけながら、表面では至って普通の振りをする。
「行くって?どこにだよ」
「だから、その、焼肉ですよ!タダ券無駄にするなんてもったいないだろ!」



奈緒子の言葉を聞き、俺は大げさにため息を吐いてみせる。
「you、それが人にものを頼む態度か?」
「…う、…お願いします。連れてってください」
奈緒子が頭を下げたあと俺を見る。
俺は計画の成功にほくそ笑みながら、奈緒子に言った。
「いいぞ。ただし、こっちにも条件がある」








「ふーっ!!」
俺は、風呂で火照った体を一杯の牛乳で冷ましていた。
冷蔵庫に牛乳を戻し、時計を見ると既に午後1時を廻っていた。
「まずい!もう『哲、この部屋』の始まる時間じゃないか!」
髪を拭いていたタオルをソファーに投げ、俺は寝室に戻りテレビをつけた。
ブラウン管の中では、ちょうど渡辺哲氏が番組の初めの挨拶を始めるところだった。
「はぁー、何とか間に合ったか」
安堵し、ベッドに腰を下ろす。
そこには疲れ切った奈緒子が眠っていた。



その横顔をみながらひとりごちる。
「疲れただろうな。結局、しゃぶしゃぶと骨付きカルビをつけることを条件に、風呂場でもう一回…」
奈緒子の寝顔を見て、先程の行為とその時の奈緒子の様子を思い出し、自然とにやける。

「あぁ、そうだ。番組の途中だったな」
にやけ顔を引き締め、意識をテレビに戻す。
何事もなく番組は進み、俺は日課である快適な一時を終えた。

ここでやっと、俺はある違和感を覚えた。何か、変だ。
横で奈緒子が寝ているのに快適にテレビ視聴ができるなどありえない。
何だ?何がたりない?

答えが解らないまま奈緒子を見る。
奈緒子はスヤスヤと寝息もたてずに眠りこけていた。

寝息もたてず…?
そうか!寝言だ。
いつもの奈緒子なら『お侍さ~ん』だの『お代官さま~』だの、とにかく眠っていてもやたらうるさい。
それが、今日に限ってなぜ?……もしや。


「こいつ、SEXの後だと疲れて熟睡するのか?………そうか、ふっ、ふっふっふっ」
俺は声をあげて笑い出した。

もう、こいつの寝言に苦しむことはなさそうだ。

最終更新:2006年09月07日 09:51